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■第100話 「土地との出会い」 2012年11月26日

小鳥の好きな中低木を植えました ソフィアート・ガーデン物語も、第100話になりました。今回は物語の舞台となっている土地との出会いについて書いてみます。

この土地は静かな別荘地の中にあり、北西から北にかけては小高い丘で南東に向けてなだらかに下る地形で、東から南にかけては広く視界が開けて自然林が広がります。南の道沿いに東から南西に向ってきれいな小川が流れ、カモやオシドリなどの水鳥が遊びに来ます。

東から南に広がる雑木林は冬になると葉を落とし、木々の間からは遠く山並みが見えます。明るい雑木林に囲まれ、春になれば山野草が芽吹き、おいしい山菜が味わえます。野生動物が多く生息し、何より、たくさんの野鳥たちが四季を通じていきいきと活動しますので、小鳥が好きな私どもにとっては楽園のような土地です。

2003年3月の末に、私どもは初めて軽井沢をふらりと訪れ、早春の魅力に惹かれて毎週通うようになりました。ほどなく町中の便利なところに比較的小さな区画の土地を購入しました。2004年の春には自宅兼オフィスが完成し、軽井沢での生活がスタートしました。

もちろんスタッフMも同じスタイル 当時は仕事が忙しくて、家を空けることが多い毎日でしたが、その合間には庭に木を植え続け、1年間で100本のペースで植えました。低木が多いとはいえ3年後には300本以上になり、小さな庭ではこれ以上植えるスペースはありません。しかし、木を植えることでさまざまな野鳥が訪れる楽しみを知ってしまった私どもは、もっと木を植えたくて仕方がありません。

思う存分木を植えて庭づくりを楽しむために新たに広い土地を手に入れたい、という思いが日増しに強くなり、とうとう私どもは2006年春から本格的に土地を探し始めました。

軽井沢の不動産情報はくまなくチェックし、売買の動きがある土地はもちろんのこと、売買の動きはなくても、これはと思った土地も不動産会社を介して地権者に声を掛けたりしました。そうして2007年の早春に、ソフィアート・ガーデンの土地との出会いによって土地探しは完結しました。

その間に、私どもが検討した土地は優に3桁を超え、その中で契約まで考えた土地は5カ所程度です。最終的に今の土地に出会うまでに、何度か危うい「間違い」をしかけました。しかし、そういうときは必ず、なぜか不思議な妨害が入って私どもを目覚めさせてくれました。一方で、ソフィアート・ガーデンの土地は、行くたびに小鳥たちがかわいい姿と声で歓迎し、明るく穏やかな光が私どもを包み込みました。土地がまるで私どもを待っていたかのように、両手を広げて温かく受け入れてくれる印象を受けました。

ところで、先の見えない局面で、ある選択をしたときの心の状態は、選択の正しさや誤りを示すサインであるということに、今になって気づきました。心に光が差したように明るく、小鳥のように軽やかで、曇りのない穏やかな喜びを感じられる時は、選択が正しいということを教えてくれるサインであり、何か重ぐるしい感じがしたり、妨害や障害が重なるときは、これ以上前に進むなと忠告するサインだと思います。ふと現われる「兆し」に敏感になることは致命的な間違いを犯さないために大切なのでしょう。

おいしくて元気になる山の幸 土地を購入するときは土地の登記簿を調べるものですが、現在は登記簿が電子化されて直近の売買情報しか記載されていないことがあります。できれば大正時代ぐらいまではさかのぼって、誰が何の目的で購入し、どのように使われてきたかを調べたほうが良いでしょう。古くからの情報が記載された手書きの登記簿も法務局に頼めば謄本がとれます。

私どもは検討する際に、まず土地の登記簿を入手し、売買に関わった人や会社について調べました。そういうなかで、不動産業界のカラクリもいろいろと勉強になりました。たとえば、ある不動産会社に、ある土地を検討したいと告げた直後、その土地に不自然な売買が行われたことがあります。直感的におかしいと感じ、登記簿で売買のあった会社(軽井沢ではありません)の住所をもとに直接出向いて調べたところ、実体のない名義だけのトンネル会社であることがわかりました。他にも、重要事項説明が必要な土地の履歴を見えなくするロンダリングもありますので気をつけたいものです。そして何より、そういう行為をする会社とは関わらないことがトラブルを避けるためには肝要です。

やはり信頼できる相手を得るというのが、なにより大事なことだと思います。不信感のある相手とは、よい仕事はできません。そのためにも信頼できる相手と組むことが大前提です。そしてお互いが信頼を前提に本気で戦い尽くした後に、思わぬ形でベストな解決策が目の前にポッと現われる、という印象があります。

軽井沢に限らず土地売買は玉石混淆の世界で、真面目でまともな不動産会社が扱っている場合と、そうでない勢力が関わっている場合がありますので、評判を冷静に見ながら信頼の置ける人からの情報やインターネット情報等も駆使して総合的に評価することが必要です。

春のガーデンはパステルカラー 土地のことは近所の古老に訊け、などと言われますが、一般的に人は自分の不利になることはあまり言いたがらないものです。ましてや地域の絆が強い田舎では、土地の売買を妨げるような情報を一見さんに安易に教えるようなお人好しはいないと思った方がいいでしょう。

直接の利害関係者に尋ねるより、郷土史家などの書いた史料や古文書などを地域の図書館や資料館などで調べると何かのヒントになることもあります。しかし、こうした史料も語り部の立場を美化(正当化)する偏りがない保証はなく、鵜呑みにするのは危険です。特に軽井沢は定期的に大規模噴火が起こり、歴史資料が少ない傾向にあります。近隣の市町村のほうが、充実したものが残っている場合があります。

軽井沢では字(大字)は一般に使われていますが、小字名は普段は用いられることもないため、知られていません。一部の不動産関係の仕事をしている人が地道に調べたものがある程度ですし、自治体も公表していません。しかし小字名というのは、その土地の歴史や由来、性質を知るうえで欠かせない情報です。水が出る土地である、地下水位が高い軟弱地盤である、祠などが奉られていた土地である、そのほか住宅に適さない用途に使われていた土地など、土地の履歴を巡って確認しなければいけないことは山ほどあります。

不動産は縁のもの、という言い方があります。先祖代々守り続けた土地を相続することも多いでしょう。必要な資金と手続きが用意できれば、現代の日本では不動産売買は自由ですので、従来その地に縁もゆかりもない個人や法人が土地を買うこともできます。外国人が日本の土地を買うことも、今の日本では可能です。

アズマシャクナゲの蕾は濃いピンク 自由な売買ができる一方で、不動産を投資対象と見なして資産価値だけで判断する人も多くいます。軽井沢の土地柄として、土地への愛や責任感のかけらもなく、利ざや目当てで売買されることもよくあります。そういう人にはピンとこないかもしれませんが、私は、土地選びは結婚と似ているように思えます。

相手と幸せな未来を育む決意と責任の伴う愛が根底にあり、幸運な出会いがあってこそ、人と土地が良い関係で結ばれます。

晴れた日も嵐の日も、病気の時も健康なときも、生涯をともにするという真心からの決意があれば、その人にとって最善の土地との出会いがあると思います。

私どもは、心の中に描き続けた形を現実のものにしていく場として、ソフィアート・ガーデンという土地に出会うことができました。 そのことへの感謝の気持ちを、ガーデンを楽しそうに飛翔する小鳥たちとたくさんの樹木、そして、見えない生きものたちを支える大地に捧げたいと思います。

ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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