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■第96話 「沖縄の楽しみ」 2012年11月9日 番外編(その11)
今回のソフィアート・ガーデン物語は、私、
スタッフM
の故郷である沖縄について書いてみましょう。この時期は台風もなく天候も比較的安定しており、気温は終日20度前後で過ごしやすく、気持ちの良い毎日です。
私は那覇市で生まれ育ち、高校を卒業して東京の大学に進学するまで、那覇の自宅から徒歩で歩ける範囲で過ごしました。そのためか生活圏である那覇市以外のことはあまり知りませんでした。しかし結婚後にパートナーと一緒に帰省するようになってからは、レンタカーを利用して沖縄の各地をまわる楽しみも増えました。
沖縄県は、日本においてはめずらしく、人口が増加しており、どこの地域でも子供たちが友達と連れだって元気よく走り回っています。長寿県であるため年寄りも多く、元気な人もいれば、介助や介護を受けながら長生きしている人もいます。老人の多さと医療や社会的な体制を含めて、沖縄は日本における高齢者のあり方を知る先進(モデル)地域でもあると言えそうです。
老人医療や介護などの関連施設が多く、医療や介護に従事する人は、若い男女が中心となっており、求人も多く重要な職業です。病院や介護施設などでは、若い人を中心に女性だけでなく男性も現場でいきいきと働いています。観光地でもあるため観光産業に従事する人も多いのですが、医療や介護の需要は確実に高まる傾向にありますので、その担い手の人材を育てる教育機関もたくさんあります。
沖縄県は老人だけでなく若い人も子供も増えている、という点で社会としてはバランスの取れたあり方になっています。
高校は私が過ごした頃より増えて、学区制にしばられない新たな進学校がいくつか新設されました。小学校や中学校については調べていませんが、大学は県外からの受験者が増えているようです。子供の数が増えておりますので学校や高等教育機関が増えていくのは当然でしょうが、日本の中ではかなり特殊な、活性化した県ではないでしょうか。
沖縄には戦後のアメリカ統治による支配を受けた関係で広大な米軍基地があります。そのため民間の生活に利用できる土地は限られていますが、沖縄自動車道も開通し、短い区間ですがモノレールもできました。私の子供の頃は、自家用車(二輪含)以外の交通機関はバスやタクシーしかありませんでした。今はとても便利になったと思います。
那覇から名護に行くのは、子供の頃は一日がかりのイベントでしたが、今では沖縄自動車道を走れば1時間ほどで着いてしまいます。
最近では沖縄に帰省する際に、農産物直売所などでおいしい地物野菜や物産品をチェックするのが楽しみです。ファーマーズマーケットは沖縄県内の各地にあり、それぞれの地域の特徴があらわれておもしろいため、地元客だけでなく観光客にも人気です。漁港で発展した糸満の市場は、やはり魚介類が充実しています。
農業がさかんな名護では沖縄県産野菜をどっさり買って、スーツケースに入れて持ち帰ります。
これまでは、沖縄県ではありふれた食材でありながら県外ではあまりみかけない野菜として、いつも青パパイヤを買って帰りました。パパイヤを黄色く熟するまで待たずに青いものを野菜として煮物や炒め物(イリチー)などで料理します。心臓に良い食材といわれ、たとえて言えば蕪のような癖のない味で、干し大根のように味が絡みやすいため、パートナーの大好物でもあります。最近は大都市のスーパーや百貨店でも青パパイヤを見かけるようになり、なんと軽井沢でも、地場もの(小諸産)が少々高価ですが入手できるようになりました。
また以前、名護のファーマーズマーケットで、やんばるで自然農法により豆から育てて自家焙煎したコーヒー豆を購入したところ、たいへんおいしく価格も良心的でしたので、沖縄を訪れる度にたくさん購入して愛飲しておりました。今回はいつもの売り場に見当たらず、残念ですが諦めました。
さて、この秋に帰省した折には「ウコン」を買ってみました。沖縄では昔から市場などで「ウッチン」として売られています。ショウガのオレンジや黄色のもの、といった外見です。
子供の頃から興味はあったものの、食べたことはありませんでした。インド料理でよく使うターメリックと同種で、タクアンの色づけや布の染料にも使われます。深みのある黄金色(鬱金色)で、樹木のような独特の芳香があります。
買ったのは3種類のウコンで「秋ウコン」と「春ウコン」、そして「ウコン」とだけ表記されたものです。いずれも何百グラムも入って100円程度の値段です。
「秋ウコン」はオレンジ色で香りも柔らかく苦みも少ないのが特徴です。「春ウコン」は黄色みがあり香りは強く、強い苦みがあります。もう一つの「ウコン」は白っぽく、香りは少し弱めで仁丹に似たさわやかな清涼感があります。よく洗い、薄くスライスして乾燥させれば長期保存ができるとのことで、軽井沢に戻ってから薪ストーブの上で柔らかい熱で乾燥させてみました。
ウコンは種類によって薬効が全く違うと言われており、秋ウコンに特に多く含まれる「クルクミン」という成分は、肝臓に効果があることで知られています。そのほか抗炎症作用や抗腫瘍、解毒など、さまざまな効果が報告されています。 各種のウコンは高温多湿地域でないと生育しないため、日本では沖縄が主な産地となっています。
現在ではウコンの薬効を謳った商品が販売され人気を博しているようですが、地元ではむしろ効能よりも、おいしい食材として広く普及しています。「魚汁に入れると最高!」などと説明の札がありますので、魚料理に相性が良さそうです。もちろん、ターメリックですのでカレーにも合うでしょう。
ところで、今年の夏は大きな台風がありましたので、行く先々で常緑であるはずの街路樹の木の葉が茶色く傷んでいる状態でした。周りを海に囲まれている地形のため塩害がひどく、植物にはダメージが大きかったようです。常緑の美しいリュウキュマツも葉が赤く枯れ、かわいそうな姿でした。家を守る木として好まれる、小判のようなツヤ葉の美しいフクギは、葉の痛みは比較的少ないように見えました。皆、沖縄の自然の中で耐え抜いてきた地元の植物ですので、少々の塩害はやがて自然に回復すると思います。
しかし、建物は手を入れなければ回復しません。塩害に強い造りと、定期的なメンテナンスが必要です。沖縄は大きな台風が毎年通過しますので、住宅でも鉄筋コンクリートが普及していて、多少の台風にはビクともしない頑丈な家づくりです。
ちなみに建物の上には、各家庭用の水タンクが据え置かれています。これは、毎年のように水不足で断水しますので、そのための備えです。観光やビジネスで訪れる方には、沖縄は山が少なく水源や水瓶となる河川に乏しいため水事情が厳しい、ということを理解してもらい、日本の他の地域の感覚で「湯水の如く」使うのは控えていただきたいと願います。私は今でも、水を大切に使う習慣が根付いており、無意識のうちに水道水を細く絞って使い、ましてや使いもしないのに水を無駄に流し放しにすることができません。生まれ育っての習慣は生涯消えそうにありません。
母とも楽しい時間を過ごし、沖縄の各地をたずねて農産物や焼き物、ガラス工芸や織物、漆器などの工芸品を楽しみ、ゆったりとした沖縄時間を満喫することができました。
生まれ育った土地であり、遠くに離れていても行くたびに元気になる沖縄は、私にとっては平生心に戻る場であり、観光気分も味わえる心地よいリゾートでもあります。
ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
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