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■第95話 「虫の物語」 2012年11月4日

バラは虫の友・・・ 最低気温が-2.1度を記録しました。もうすぐ軽井沢の冬の到来です。秋になると、夏の間は開放していた床下と屋根裏の換気口を閉じて、冷たい空気が家に入り込まないようにします。家の衣替えのようなものです。

すると、床下で遊んでいた虫たちの出口がなくなり、また温かいこともあって家の中に入ってきます。一番多いのはカマドウマ(竈馬)です。軽井沢では多く生息しています。コオロギに似たジャンプ力のある虫ですが、人に危害を加えるものではありません 。

幸い、いわゆる不快害虫の代表の黒い虫は、軽井沢ではほとんどみかけませんし、毒のある虫が居ないので、その点は安心です。私は虫も小鳥や木と同じで観察するのが好きです。名前などをつけて呼ぶと、けっこうかわいらしく感じるものです。

他に、小さなクモやワラジムシ、テントウムシなどがいて家の中は賑やかです。ちなみに軽井沢などの寒い地域には、ダンゴムシではなくワラジムシがいます。どちらも木の葉を土に分解する大事な生きものですが、団子状に丸まらずに草鞋のようにひらべったい姿が特徴です。

秋に家に逃げ込んでくる虫たちは、寒いせいか動きものんびりしていますので、捕まえようと思えば簡単です。見たらすぐに捕まえられるように「虫キャッチャー」と私どもが呼ぶ道具を家のあちらこちらに置いています。

「虫キャッチャー」は、なんということもない、ただの透明なプラスチックのカップと、使用済みの葉書をセットにしたものです。プリンやゼリーなどを買って食べたときのプラスチック容器を洗って再利用しています。葉書は、かわいい絵柄のついたものを使えば、玄関においてあっても違和感がなく、ちょっとおしゃれです。

虫を見つけたら、そっとキャッチャーをかぶせ、葉書で蓋をして窓辺に持っていき、「がんばって生きてね!」といって外にポイと放ります。虫を殺生するためではなく、外に出すことが目的ですので、透明のカップだと中が見えて、補足する時に虫の体を間違って挟まないので便利です。

最後にカラマツの黄葉で締める しかし一日に何度も捕まえるのが面倒になるときは、見ても「ああ、いるねえ・・・」と放置します。さらにソフィアート・ガーデンの小屋では、家とは違って虫は一切お構いなしです。山の小屋ですので、好きに歩いてもらいます。家の中を冒険する虫たちは、やがて、はかない命を終えます。

クモは例外で、長生きをしているようです。家の中の虫を食べているのでしょうか。

以前車の中にいた小さなハナグモは、放っておいたら一ヶ月以上車の同じ場所に定住していました。ハナグモは花のおしべなどの近くでじっと待ち構えて、蜜を目当てに訪れた昆虫を補食して食べるクモです。 普通のクモと違って蜘蛛の巣は張らず、じっとおしべのふりをして待ち続けます。車の中に入り込んだ藪蚊などを食べて命を保っていたのでしょうか。

それにしても、何も飲まず食わずで長いこと生きていられるのですから、昆虫というのは驚くべき生命力の持ち主です。

蛾の仲間など、成虫は食べるための口を持たない生きものもいます。幼虫の時はひたすら葉を食べますが、羽化して優雅に羽ばたけるようになれば、残された役割は種の繁栄のみであり、長生きする必要はないので食べる必要もない、ということなのでしょう。個々の思惑を超えた「種としての生命」の一つの意味を示す、いさぎよい生き方でもあります。

ところで、この夏、ガーデンの小屋で少々困った出来事がありました。室内にアリの行列が出来てしまったのです。

これからは落ち葉掃除 天井近くの壁に、ガスの配管口を通って室内に浸入した黒アリが黙々と行進しています。ちょうど梅雨時にあんずのジャムを大量に作ろうという時期でしたので、このときばかりはアリに小屋を明け渡すわけにはいきません。

なお、自宅やソフィアート・ガーデンでは、小鳥の害にならないように殺虫剤や薬剤は使わないことを徹底しています。虫には毒ではなく、知恵で勝負します。

そこでアリの生態を観察しながら、いくつかの実験をしました。インターネットのあるサイトの記述から、アリが行列をつくるのは「におい」を頼りにしていることが推測されました。

その「におい」を消すために、試しにアリの道に塩を置いてみました。10分ほど混乱しましたが、また元の列に戻ってしまいました。次にラベンダーのエッセンシャルオイルを染みこませたコットンを同様に置きましたが、これも1時間ほどで効き目がなくなりました。むなしく、小屋中に良い香りが漂います。

アルコール噴霧も試しましたが、個々のアリには効果があるものの、行列をなくすには至りません。

最後に半信半疑で、とある情報を参考に「チョーク(白墨)」で外壁や進入路を囲むように太い線を引きました。するとアリたちはチョークを乗り越えることができず、大混乱に陥りました。中にはチョークの川をとびこえるべく、決死のジャンプで壁から落ちるものもいる始末です。なぜかチョークだけは、てきめんに効果がありました。石灰(アルカリ性)の成分が蟻酸(酸性)を中和するのでしょうか?

効果が確認できましたので、まずは外壁をぐるりとチョークの太線で囲み、入り口となる配管の隙間をテープで塞ぎました。これにより、新たなアリの浸入はなくなりましたが、すでに入ったアリの出口までなくなるため、室内には混乱したアリたちが大集団を形成し、手の届かない高さの天井際の壁で右往左往しています。

仕方がないので、背の高いパートナーが、さらに高い場所まで届く粘着テープの掃除用具を使って、アリ軍団を一網打尽に捕獲しました。こうして何日かの戦いを経て、梅雨時のアリ騒動は一件落着を迎えました。

さて、何を描いたのでしょう? ところで虫は、観察してみるとなかなかおもしろい生きものです。軽井沢に多いハサミムシは、ユリの花やバラの花など香りの良い、しっとりとした美しい花の中が大好きです。バラを手入れしていると、花の中でうっとりと夢見るような表情?で潜り込んでいるハサミムシを見つけることがあります。幸せそうな表情を見ると、花を追い出すのは忍びなく、ついそのままにしてしまいます。

まれに寝つけない日があれば、私は自分がハサミムシになったつもりで、薫り高いバラの花の中でじっとしていることを妄想します。ピンクの柔らかな花弁が、温かい太陽の日差しで透けてベールのように目の前を覆い、周りにはバラの芳香が漂い・・・、そんな想像をしながら深呼吸していると、いつの間にかぐっすり寝入ってしまいます。というわけで、眠れない日は羊を数えるより、花の中でうっとりするハサミムシを思い描くほうが私には良さそうです。

ハサミムシは母性?の強い虫で、自らは食べずに子供達の世話を焼き、最後は自分の体を子供に食べさせて養うとか。そんな話をどこかで読んでからは、ハサミムシが偉大にさえ思えるようになりました。

10月の中頃からは、雪虫( ユキムシ )と呼ばれる小さな白い虫が、ガーデンをフワフワと漂うのが見られます。この虫を見かけると雪も間近。今年はすでに10月24日に、浅間山が初冠雪を迎えています。

虫の話は尽きませんが、そろそろ終わりにしましょう。寒い冬が来れば、虫たちともしばしお別れです。

ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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メモ(本文とは直接の関係はありません)
次の第96話は11月9日(金)に掲載します。
 
 
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