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■第56話 「杏色の週末」 2012年7月9日

信州大美は大きくて桃みたいです ホタルブクロが咲き出しました。そして、今年もとうとう杏の季節の到来です。私どもは、すでに6月末とこの週末の2回、長野県千曲市の更埴(こうしょく)まで生産農家へ買い出しに行き、あんずを合計20キログラム以上入手しました。

いつも一度に買いすぎて加工で大変な思いをするので、今年は2回分けて買い、少しずつ加工しようと計画しました。

とは言っても、やはり計画以上に量が多くなってしまうのは生産農家で買うためでしょうか。「それ、もう捨てるしかないので、あるだけ持っていってくれない?」というオマケもついてしまいます。そして、小粒だったり表面に黒点のできた品などのいわゆる規格外品が、ジャム加工用として信じられないほど安く大量に出ますので、つい買ってしまうのです。今年は杏の肌が美しく、たいへん良い杏が入手できました。

生産農家の多い更埴の森地区 6月末に最初に収穫される「平和」は、一般の流通では最も多く見られる品種で、実が柔らかくジャム加工に向いた品種とされ、少し酸味は強いですが熟すと生でもおいしく食べられます。

少し種の身離れは悪いのですが、固くて小さければシロップ漬けも良し、コンポートも色鮮やかに美しく仕上がります。いつでも安定した仕上がりが期待できる品種です。6月の末に行ったときには「平和」の出始めで、とりあえず12キロほど購入しました。

杏は、品種毎に最適の食べ方があります。何も加工せずにそのまま食べるのもおいしいのですが、 第6話「木の恵み 1」で書いたように、砂糖や熱で加工すると別物のように味も色も鮮やかに生まれ変わる、不思議な木の実です。

また最近は大型で甘い「ハーコット」のような生食向け品種が人気です。しかし、加工の「魔法」を知ってしまうと、生で食べるにはおいしいのですが加工には向かないハーコットは、まあそれなりの魅力しか感じないのではないでしょうか。

前半戦だけでこの数・・・ 平和の次には「昭和」という品種が収穫され、これも市場には出ますが、加工適性は平和と異なり、ジャムよりもシロップ漬けに向いた品種とされます。

もっとも、杏は品種を特定せずに「あんず」としてまとめて販売されることが多いので、特定の品種を確実に入手したい場合は農家か生産者の直売所でないと難しいと思います。

7月初旬には「信山丸」という万能品種が出ます。生産量が少なく、スーパーなどの一般の小売店ではほとんど見かけませんが、色も良く、バランスの良い味で生でもおいしく、どのような加工でも最高品質に仕上がります。杏の中でも特に種と実の身離れがよく、実も引き締まって小ぶりですので、シロップ漬けにはこれ以上の品種はありません。1年後でも鮮やかな杏色で、シロップの中で実が崩れず、適度な食感も残ります。

ほれぼれする杏色 私どもが2度目に生産農家に買いに行ったのは、この「信山丸」の購入が目的です。流通量が少ないので、生産農家でも予約をしないと手に入らないこともあります。農家が特別に選んでくれた大きくて立派な「信山丸」、そしてその親の「山形3号」という在来種など、9キログラム近くを買いました。

昨年までは、杏の加工と言えばジャム(コンフィチュール)とコンポートが中心でしたが、今年は大半をシロップ漬けにして、残りをジャムやその他に加工しています。

シロップ漬けは、杏の実を種ごと丸のまま(大きすぎる場合は半分に切って)砂糖と水で作った熱いシロップに漬けてつくりますが、おいしく食べられるまでに3ヶ月間ほどかかります。しかしその間、じっくりと杏の種から出る杏仁のエキスがシロップで抽出され、杏仁シロップの独特な香りと味わいが、他の加工法では味わえないおいしさです。色艶も鮮やかなまま、形も丸くきれいで崩れずに保存できます。

コンフィチュールやコンポートほど甘すぎないため、ほのかな酸味と杏仁エキスで薫り高い甘味がバランスよく、そのまま果物としてデザートやお茶請けに良し、ヨーグルトに杏仁シロップと混ぜて食べても良し、杏仁シロップを野菜のフレッシュジュースの甘みづけに使っても良し、と利用価値の高いものになります。

美しいシロップ漬けをつくるのは意外と難しい シロップ漬けなどは瓶に隙間なく詰め込むため、小ぶりで身が崩れない固い方が向いています。そうした実はシロップ漬けに加工しました。残りの大きい実は生のまま食べたり、朝夕に飲む野菜や果物のフレッシュジュースに混ぜたりします。杏は果物の中ではカロテンが最大級に多く、余分な塩分を体外に排出する際に有効なカリウムや、疲労回復に効果のあるリンゴ酸やクエン酸もあるので、加工だけでなくそのまま食べて高い栄養価を十分に体に取り込みたいものです。

たくさん買う場合は、少々未熟なぐらいのものを選んでおいた方が、一度に食べなくても痛まないので安心です。この梅雨の時期の気温では2,3日ですぐに追熟でき、美しい杏色が濃くなります。私どもはエアコンがないのですが、この時期の軽井沢は涼くて(朝は寒いぐらい)自宅やガーデンの室温は常に20度前後ですので、通気を良くして室内で1週間ほど放っておいても腐ることはありません。

忙しさにかまけているうちに、杏はどんどん甘く柔らかくなってしまいます。生で食べるのも飽きてきたら、一気にコンフィチュール(ジャム)に加工します。コンフィチュールは杏を最高においしくする代表的な加工法です。本物の杏ジャムのおいしさを知れば、いいかげんなものは食べられなくなります。

おいしいよ! こうして6月末から7月半ばまでの杏色の2週間が過ぎていきます。

大雨の中、ガーデンの外では小鳥の幼鳥たちが、元気に追いかけっこをしています。小鳥が大好きな私どもですが、そのかわいい姿を眺める暇もないほど、杏の時期の小屋の中はあわただしくなります。大量のシロップ漬けやジャムなどの加工を黙々と行ううちに、あっという間に夜中になってしまいます。

杏の加工は瓶の煮沸消毒から滅菌、脱気に至るまで、すべてパートナーの手によりますので、私は別の創作活動をしております。

6月末から7月半ばまでの毎週末は、ソフィアート・ガーデンの小屋(アトリエ)はところ狭しと瓶が並び、工房というより工場と化し、それぞれが創作活動に熱中してろくに口も聞かずに黙々と働いております。梅雨の中で杏の元気な色に力づけられて20キロ以上の杏軍団を黙々と加工し続け、整然と瓶に収まった姿に安堵する頃には、軽井沢の短い真夏の到来を告げる祇園祭の花火が、霧の夜空を飾ります。


ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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