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■第55話 「温泉力」 2012年7月6日 番外編(その10)

シダの種類は勉強中です 日本列島を連なる火山の脈は、温泉の脈とも言えるでしょう。地中深くで温められ、こんこんと湧き出る温泉は、火山列島ならではの楽しみです。 軽井沢からは、車で1時間ほどで群馬県の「草津温泉」に行くことができます。

草津温泉は、「ちょいなちょいな」の草津節とともに日本に住む温泉好きの人なら誰でも知っているであろう有名な温泉です。草津白根山を源として湧き出ると言われ、強烈な硫黄臭と強酸性(pHは2前後)が特長の、パワフルで癒やし効果の高い泉質です。私どもは、もっぱら草津の町民がよく利用する公共の温泉施設を利用しています。泉質も施設も良く、なにより草津温泉を毎日使う町民の利用が多いため、気楽で落ち着いた雰囲気で過ごせる点が気に入っています。

草津温泉は温泉力が別格で、少しの体調の悪さならすぐに治ります。軽井沢に来てからというもの、この8年以上、私は風邪を引いたことがありません。パートナーも、出張先の宿泊施設のエアコンが効きすぎて乾燥で喉を痛めそうになったことはありますが、家に戻ればすぐ治ってしまいました。これは、普段、軽井沢で四季を通してエアコンのない生活をしていることと、定期的に草津温泉で心身を癒やしていることが大きいと思っています。湯船に浸かって心身ともにリラックスすれば、少しの疲れや病気は吹き飛んでしまいます。

ウサギの耳のようにフワフワ もちろん草津でも、趣味の樹木観察は欠かせません。草津は、その途中の北軽井沢(嬬恋)にある「浅間高原しゃくなげ園」に代表されるように、アズマシャクナゲの名産地であります。また北軽井沢はレンゲツツジなどの各種ツツジが美しい土地でもあります。

草津温泉の周囲にはリョウブ(令法)とネジキ(捩木)がアカマツ(赤松)とともにたくさん自生しています。ネジキは赤い若枝と新芽が特徴です。草津温泉は強酸性ですので、このあたりで育つ木々は酸性に強いのでしょうか。もっとも日本の土壌の多くは弱酸性ですので、日本自生の山野草や樹木の多くは弱酸性の土地を好んで育ちます。

草津をもう少し行くと、標高1800メートルの万座温泉があります。ここは硫黄成分の含有量が日本一だそうで、強烈な硫黄臭に好みが分かれるところでしょう。パートナーは硫黄の濃さが好きなようですが、私にはきつすぎて合いません。硫黄で具合が悪くなってしまいます。やはり草津の程々さ(とはいっても強い硫黄臭がしますが)が、私の場合は体質に合っています。

葉と花の配色が優しげで明るい園芸種です 軽井沢に住む以前は、全国を旅する中で見つけた各地の温泉に入るのも楽しみでした。北海道は、どこまでも広がる大地と深い森という雄大な大自然が、沖縄で生まれ育った私にとっては新鮮でした。2005年に世界遺産となり、現在は厳しい立入規制がとられているカムイワッカの滝の温泉にも、20年近く前は遠慮なく入ることが出来ました。速いスピードで流れ落ちる、ぬるい湯の川の岩場を、滑らないように縄草履でひたすら上っていき、天然自然の温泉の滝壺に浸かる、というワイルドな秘湯でした。当時は人もほとんどいませんでしたので、熊に会わないかとそれだけがこわかったのですが、いまとなっては楽しい思い出です。

いろいろな温泉に入った中でも、私どもは、特に宮城蔵王のとある温泉を気に入っていました。

そこは日本秘湯を守る会の会員で、テレビもカラオケもない団体客をとらない湯治宿でした。山歩きを楽しみとする人びとが密かに愛する良質で静かな温泉であり、また農閑期の老人方が家族に見送られて、年に一度の楽しみとして長期間の湯治を楽しむ素朴な湯治場でした。そうしたご老人が箱にいっぱいの野菜や食料を積み込み、友達同士で楽しそうに自炊場で料理するのに混じって、30代の私どもも休暇を利用して自炊しながら長期滞在し、ひたすら温泉と読書、散歩という静かな湯治を何度か過ごしました。

自炊場ではお年寄りから煮物を分けて頂いたりして、楽しく過ごしました。私が家で炊いて数日分をおにぎりにして小分けに用意してきた玄米を粥にしたり、野菜で煮物を作ったりしていると、おしゃれな料理と勘違いしたのか「若い人の作る料理はハイカラだねえ」とお年寄りに感心されるのがおもしろかった思い出があります。

しかし経営者が代替わりして、安く連泊しながら良質な温泉を十分に楽しめる自炊棟はなくなってしまいました。地域のご老人や昔からの温泉通の憩いの場がなくなり、かわりに若い女性客やカップル中心のシンプル和モダン風の部屋へと姿を変えました。どこにでもある画一的な温泉宿へと変貌したことに興ざめしてしまい、私どもも足が遠のいてそれっきり行っておりません。

温泉力のある希有なやわらかい泉質の温泉だっただけに、昔からその温泉を楽しみに、大事に利用してきたお年寄りやファンが遠のいてしまう結果となり、後味の悪さが印象として残っています。

勝手に広がるのでグランドカバーに良いです 軽井沢に来てからは、わざわざ遠くの温泉宿に泊まりに行く趣味もなくなり、少し疲れたかなというときには車で1時間の草津に入りに行く、という感じで温泉生活には至極満足しております。

そういえば軽井沢にもいくつか温泉はあります。軽井沢に住む直前ですが、大雪の中、早春の小瀬温泉に泊まったことがあります。ここは各部屋に源泉が引かれており、さらに鯉料理のすばらしさに驚嘆しました。

ところで、温泉以外にも冷泉があります。清らかな泉の湧き出る地域は聖域として守られ、大事にされてきました。

中国地方には「塩釜の冷泉」という、とても冷たくておいしい水の湧き出る冷泉があります。パートナーのふるさとへ帰省する時に、たまに寄って水を飲みますが、中国山地を代表する蒜山(ひるぜん)の谷間の森から豊かに湧き出る冷泉の冷たさに驚きます。水温は、一年を通じて11度位だそうです。環境庁の名水百選にも選ばれている、この冷泉は、どんな病気もこの水を飲めば癒え、どんな悪い人も良い心になるでしょう、と思いたくなるような清らかさです。

日本各地を旅すると、このように素晴らしい水の湧き出る場所がいくつかあります。そういう水に恵まれたところは酒造りがさかんであったり、豆腐などのおいしい地域であったりもします。豊かな水と清らかな空気は、それだけで心身が蘇ります。水と空気、そして四季の織りなす自然の美しさ、という世界でもっとも恵まれた喜びを、日本人の多くは、すこし足を伸ばせば身近に味わうことができます。

丸い葉と繊細な花 私どもの自宅の近くを通る中山道つながりで言えば、長野県の和田峠には黒曜水の湧き出る場所があります。私どもが車で関西方面へ行く際には時折立ち寄るスポットです。ここは黒曜石に磨かれたおいしい水がこんこんと湧き出る名所で、水を汲む人がいつも大勢集まります。

冷泉を飲み、温泉でくつろぐ、ということが日常的に気楽に味わえる日本人は、大地から至宝を授かっているようなものです。

温泉で心底くつろいでいる時は、心の中が空っぽになります。そして、空っぽの心に新しい喜びや力が湧いてくるとき、温泉の力による神聖な癒やしを感じることができます。

火山列島に 住まうことは、その恩恵である水と鉱物と地熱という偉大な力の恩恵に与ることができるとともに、同時に恵みだけでなく地震や噴火もある、ということを受けいれることでもあります。温泉力の源は、変動帯と言われる生きた大地の生命力です。ゆえに恵みと脅威が表裏一体となっています。温泉や冷泉という、大自然の懐から湧き出る泉で癒やされるのは「自然災害に負けぬよう、心身を養生し知恵を働かせて毎日を生きなさい」という深い大地の奥底から響く慈愛に満ちた声を無意識のうちに受け取るからなのかもしれません。


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