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■第51話 「桑の味わい」 2012年6月25日

実生数年で4メートル以上に生長 ソフィアート・ガーデンには100種500本以上の木があります。自生する木もあれば、植木屋さんから購入したり、別の場所から移植した木もあります。自生する木は、もともと当地の気候に合った樹種であるため元気が良いのですが、ある意味、それが困った点でもあります。

特にヤマグワ(山桑)は、自宅の庭にもガーデンにも、次から次へと実生で生えてきます。成長が早く、気がついたときにはかなりの大きさに育っているため、適度に選抜して残すか移植するかします。

桑の実が成る近くの地面(駐車場)には毎年たくさんの実生苗が芽吹いてきますので、それらはどんどん抜いてしまいます。しかし、門柱や垣根の木柵沿いにも密かに生えてきており、これらは他の生け垣の木に紛れて気がつかず、すくすくと生育してしまいます。

こうした生け垣や門柱などの場所は、ヒヨドリなどの、ヤマグワの木の実が好きな鳥がちょこんと止まる場所です。彼らは天然の庭師であり、上手な実生苗の作り手でもあります。

食べた実は彼らの消化器官を通って発芽しやすい状態で地面に落ちます。鳥のプレゼント(鳥散布と言います)、という形で、さまざまな実生苗をプレゼントしてくれますが、鳥からもらうことが最も多い木がヤマグワと言えます。他には、イチイ、マユミ、ヤマボウシ、ツルマサキなどでしょう。

クワの若葉はイチジクの葉のような形です 実生苗は、鳥散布以外にも、種が風に運ばれる(風散布と言います)ものも多く、そうしたものにケヤキ、モミジなどがあります。

ヤマグワは、葉の形に個体差が多く、葉は互生で縁に不整鋸歯があります。クワはカイコの食べ物として有名ですが、養蚕には中国大陸原産の「マグワ(真桑)」が使われます。日本の自生種であるヤマグワは少し葉が硬いため、養蚕には補助的に使われるようです。

軽井沢で見かけるクワは、もっぱらヤマグワです。私の場合は、庭に勝手に毎年生えてくるクワは、その葉をお茶にしてしまいます。クワの葉茶は、日本各地の田舎の道の駅などで販売されていますし、野草茶の原料としては味が良く薬効が高いため昔から有名です。

私も自分で作って飲んでみて、そのおいしさに驚きました。全くクセがなく、ほうじ茶に似た飲みやすさで香りと甘みがあり、カフェインもないのでいつでも飲めますし、緑茶よりも好きな味です。他の野草とブレンドしてもおいしい茶葉になります。

実生のヤマグワはどんどん生育しますので邪魔になってきた枝ごと切り取り、剪定したついでに剪定枝についている葉をむしってお茶の葉として収穫します。きれいな柔らかい葉だけを使い、少しでも黒ずみや虫食いがあるものは使いません。

この木も4年ほどで大きくなりました クワの実は甘くておいしいのですが、あまりにも小さくて今ひとつ収穫意欲が湧きません。透明なビニール傘をクワの実収穫用に使い、木の枝に持ち手を吊り下げ、木を揺すって傘の中に実を落とし収穫したりもしましたが、そのうち飽きてしまいました。軽井沢に出るツキノワグマは、このヤマグワの実が大好きで、あの大きな体でヤマグワの木に登り夢中になって食べているそうです。これから桑の実が熟してくる季節は、頭の上に食事中の熊がいないかを、一応、気にしています。

実は熊や鳥に食べてもらって結構ですが、葉は若干を茶葉に利用したいので、私はクワの木を大事にしています。特に年数の若いクワの木の葉は大きくて柔らかく、良いお茶の葉になります。またそのような葉は、イチジクの葉に似た不思議な形をしています。一方、成木のクワの葉は小ぶりの広卵形で、少し固い感じがします。

しばらく流水につけてよく洗い、自然乾燥させてカラカラに乾かします。
ここで茶葉を蒸したり、乾煎りしたりする作り方もあるようですが、私は自然乾燥だけにしてあえて熱を加えず、クワの葉の栄養と風味をそのまま活かす作り方をしています。私どもの桑茶、特にガーデンのヤマグワの桑茶は土も空気も水も森の中で清浄ですので、安心しておいしく飲めると思っています。

棗の天と底と蓋の合わせ目が竹の節をイメージさせる 桑は木材としても有名です。高級和家具に「指物(さしもの)」という言い方がありますが、日本では家具を釘などを使用せずホゾや継ぎ手を組み合わせて、精緻この上ないものをつくる文化があります。

茶箪笥や茶道具など、美しい木目を活かした狂いのない手工芸の材としても、桑が使われます。この場合は江戸指物の最高の材として御蔵島の島桑が有名ですが、気候風土の厳しさで成長が遅いため木目が詰まり、艶と堅さ、狂いのなさなどをあわせもつ第一級の材になるとか。またこのような島桑を扱える技をもつ人は数少ないとも言われています。

私どもも桑の材は大好きですが、島桑の指物のような高級品は工芸品の展示会場などでじっくり鑑賞し、目の肥やしとして楽しみます。所有し、使うことで桑の材の味わいを楽しむとすれば、山桑の茶筒や菓子皿などの「挽物(ひきもの)」と呼ばれる工芸品です。私どもは、材としての木も好きで、日本全国の挽物の名産地でさまざまな品を鑑賞してきました。そして、パートナーの出身地である鳥取県に帰省する折に、昔から挽物がさかんな山奥の場所で少しずつ買い求めています。

毎年たくさん実をつけます 私どもがいつも買う山陰地方の販売所は、一般には知られていない素朴な田舎の場所のため、信じられない安い価格で売ってくれますが、精緻な技と美的感覚に優れた茶道具などを作っています。しかし安いとは言え、私どもにとっては贅沢品ですので、一個ずつ、何年もかけて集めて大切に使っています。

桑は、材として黄色味がかっており木目も品良く、日本人の肌色になじむ艶のある材ですので好かれるのでしょう。育つのが早いのは小さな実生苗の間であり、それ以降は幹が太らないので、材として利用できるまでにはたいへんな年月を要することでしょう。

ガーデンに隣接する道端に、洞(ウロ)のある古いヤマグワの木があります。直径が20センチメートルほどの、見栄えのしない、痛みの多い古木ですが、根元の洞にはいつもヒガラなどの小鳥が営巣することが多い木です。

古くても、毎年いつも実をたわわにつけて、がんばっています。小鳥や動物たちに愛される、愛嬌のあるこの桑の古木を私どもはとても気に入っております。私どもの管理外である道路の木とは言え、できる限りいつまでも残って欲しいと願っています。


ソフィアート ・ ガーデン物語
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