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■第81話 「自然の脅威」 2012年9月14日

ピンクや黄色が風に揺れる 9月も半ばとなり、穏やかで気持ちの良い秋の初めの軽井沢は何をするにも快適です。もし当地を旅行で訪れる人から、いつが良いかを尋ねられたとすれば、私なら夏のハイシーズンよりも今の時期を勧めるでしょう。

しかし、9月は自然の脅威を経験することもありました。2004年の浅間山噴火と2007年の台風です。今回は、この二つの自然災害について書いてみたいと思います。まずは浅間山の噴火についてです。

今から8年前、2004年9月1日の夜8時頃、浅間山の爆発的噴火が起こりました。 静かな夜に突然、今まで聞いたこともない大きな爆発音がして、家のすべての窓ガラスがバリバリと音をたてて震えました。窓は寒冷地仕様の二重ガラス(空気層をはさんだ二枚のガラス)で、普通より防音性能も高く、強度も強いのですが、それでも爆発の風圧と音で砕け散るのではないか、というほどの衝撃でした。

その直前には、自宅の庭をツキノワグマが歩いていたのを目撃しました。 熊の騒動の時と同様、この噴火の時もパートナーは出張中でした。予備知識もない状態で、突然の爆発にはかなり愕きました。近所でガス爆発があったのか?あるいは大規模な衝突事故があったのか?

火山灰は、なかなか落ちません 軽井沢町には、地区ごとに設置された大きなスピーカーから、防災行政無線のアナウンスがありますが、このときは特になにもありませんでした。
何が起こったのかとっさに分からず、様子を確認するために家の外に出たところ、近隣の人が「浅間の噴火があったとテレビで報道している」と言い、なるほどと納得しました。当地では電波が届かずケーブルでしか視聴できませんし、もともとテレビを見る習慣もないことから、軽井沢に移ってからはテレビのない生活を送っていました。

今回の噴火は、1983年4月以来21年ぶりの「中程度の爆発的噴火」とのことで、軽井沢町には噴石の落下や土石流などはありませんでした。ただし、2週間後に火山灰が風に運ばれて家や道路、樹木などを覆い、後片付けに苦労しました。風下(かざしも)に当たる側では、降灰による農作物の被害は大変深刻であったと記憶しております。

火山灰はガラス質を含んだものですので、洗い流して落とそうとすると車や窓ガラス、屋根はこまかい傷がつきます。自然を相手に文句は言えません。こういう場所に住んでいることの代償だと思って受け止めます。

次に2007年9月の台風9号についてです。
北西に浅間山、東に妙義山などの群馬県境の山々を有する軽井沢は、日本本土のほぼ真ん中あたりにあります。台風を発達させる要因となる水温の高い海上から離れており、また台風の勢力を削ぐ大きな山並が続くところに位置するためか、台風の被害が少ない場所です。とはいっても、台風の進路によっては軽井沢でも大きな被害が発生することもあります。

その時は、日本本土を南から縦断するルートで台風が直撃し、大きな被害を各地で残しました。軽井沢でも9月6日の日降水量は9月として統計開始以来の第1位となる286ミリを観測し、また最大瞬間風速が9月として観測開始以来の第1位である27.7m/sを記録しました。倒木による人身への被害も発生し、家の損傷や浸水被害も多数あり、電線網が切れて停電が何日も続き日常生活に支障をきたす地域もありました。

ソフィアート・ガーデンへ向う小道も倒木で塞がれてしまい、車に積んであった剪定用の鋸で処理しなければ通れませんでした。幸い、私どもの自宅は古くから人が多く住む地域のため、一晩だけ停電しましたが、翌日には復旧し、倒木や浸水による被害はありませんでした。

軽井沢は火山灰で土壌が形成されており、その分、概して水はけは良いのですが、地盤が軟弱であることが多く、また、尾瀬のような湿地帯もあります。自然だけでなく人為的な要因で、たとえば道路や敷地を舗装した結果、周囲の水まで低いところに一気に集まり、台風が去った後もしばらく川や湖のようになってしまったところもあります。こうした危ない土地は、一見、別荘地としてきれいに舗装され区画が整備されているので、平穏時には見た目からは判断できないかもしれません。災害時になって初めて、安全に住むことができない土地であると気がつくことになります。

いつ見ても不思議な形です 私どもは、台風直後の軽井沢および周辺の状況を車で回り、つぶさに観察しました。その結果、この程度の風でも被害が甚大になる原因はさまざまにあることがわかりました。

湿地で地盤が弱いところや根元がコンクリートに固められた場所では十分な根を張れなかったのでしょうか、大木が不釣り合いの小さな根鉢ごと倒れていました。日当たりや風通しの悪さから病気で弱った木が途中から折れているのも見ました。

手入れの行き届いた大きな別荘の庭は、高木でも倒れていないところも多く、一方で普段から少々荒れた感じのする場所は倒木被害も大きい様子でした。台風による倒木は、地盤の善し悪しや木の健康、まわりの環境といった複合的な要因で発生し、決して高木や古木は倒れやすい、ということではありません。また台風よりも雪で倒れる木をよく見かけます。

この台風では倒木被害のインパクトが強く、適正な伐採や剪定を心がけなければという意識が高まりました。しかし、利権?も絡んだのか、それに便乗して「高木はとにかく危険だから伐採、剪定すべし」、「木を切れ」といった不適正な伐採や剪定に誘導する動きも見えました。その結果、切らなくても良い木が伐採され、気の毒な姿に剪定された木を見かけることが多くなりました。モミなどの常緑が間違った剪定により枯らされ、美しい景観が見苦しい姿に変貌する、といったことが町の至るところで見られました。

低く方形に近い寄せ棟は風に強い 私が生まれ育った沖縄は、大きな台風が毎年何度も通過します。台風の規模は、本土で体験する規模を遙かに上回りますが、台風対策が徹底しており、鉄筋コンクリートの住まいが多く、水路も台風の豪雨に対応して作られているため、被害はそれほど目立ちません。

もし沖縄と同規模の台風が同頻度で軽井沢を通過するなら、冗談ではなく町が壊滅し、人が住むことができないのではないかと思います。

毎年、大きな台風に見舞われる地域と軽井沢とでは、台風への備えの意識は異なって当然でしょう。台風の頻度がそう多くない軽井沢の現状では、過去の事例から被害に会うことの多い地域が分かっているのですから、必要な対策をとればよいことです。災害を過剰に恐れて不必要な伐採や剪定を煽るのは、防災としては意味がない上に、景観と資産価値を損ね、傾斜地などで緩い地盤を崩す恐れもありますし、急な伐採で風の道が変わり周囲の土地へ悪影響を及ぼしかねません。

それよりもむしろ、軽井沢は火山の知識と噴火の備えが必要です。
天災は忘れた頃にやってくるもの、と言われます。災害の発生当初は人々の防災意識も高いのですが、しばらくすると忘れてしまいます。人間の時間軸と大自然の時間軸の違いは大きく、何十年、何百年、といった単位で規則正しく活動している大自然の営みは、人間にとっては「忘れた頃に」と表現されてしまいます。

牙岩(ギッパイワ)は浅間のビューポイントのひとつ 私どもは2004年の噴火のあと、無知であったことを大いに反省して、さまざまな資料を調べ、浅間山の知識を身につけるべく勉強会や実習などに参加して意識を高め、常々注意するようになりました。天災に備えるためには、専門家の力を借りることが有効です。防災の対策というのは、起こりうる災害の内容と、レベルの把握と頻度、タイミングなどを正しく把握した上で行わなければ効果がありません。

2004年の噴火後は、すぐにインターネットや書籍などで情報収集をしました。さまざまな書籍や、浅間山の火山活動に詳しい、群馬大学の早川由紀夫教授のウエブサイトなどを参考に浅間山をはじめとする火山について調べました。

軽井沢町でも、専門家の指導を仰いで防災マップを作って配布しておりますし、浅間山の過去の噴火被害を軽井沢や御代田町の図書館などで調べると、浅間の噴火のことを記した「浅間大焼け」や郷土史家による記録など、数は少ないのですが貴重な資料もあります。

なにしろ私たちは変動帯に生きているのですから、日常を過剰に恐れる必要はないでしょう。人任せにしないで自分と大切な人の命は自分で守る、そのために絶えず真実を知るために学び、備え、時には諦めることも必要でしょう。まずは心穏やかに秋の日を過ごしたいと思います。

ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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メモ(本文とは直接の関係はありません)
ソフィアート・ガーデン物語を読んでいただき、ありがとうございます。
8月以降は週2回のペースで掲載しております。

なお、本文中に軽井沢は9月の今の時期がお勧めと書きましたが、あくまで平日の話です。土日、特に連休は時間や場所によっては夏のハイシーズン並に車道が大渋滞することがあります。
 
 
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