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■第86話 「小鳥の性格 2」 2012年9月25日

アブラチャンはレモンのような黄色に黄葉します 庭に来る野鳥たちを観察していると、鳥の性格にも個性というか多様性があることに気づかされます。

以前、 第40話「托卵」では、シジュウカラに托卵されて育ったのではないかと思われるヤマガラ「タク」の話を書きましたが、このタクは、ずっこけと言うか、憎めない性格のヤマガラでした。

当の本鳥は真剣で一所懸命に生きていますので、それを笑ったりするのは不遜なことだとはわかっていますが、何をしてもかわいくてうらやましい、と言えば小鳥たちに許してもらえるでしょうか。今回は、ちょっと三枚目の愛すべき性格をもつ、忘れられない小鳥について書いてみます。

シジュウカラやコガラ、ヒガラ、ヤマガラなどのカラ類は、餌の乏しくなる冬の間は混群を形成して、団体行動をしながら食餌を探します。自宅近くの小鳥たちは、私どもの庭をとても気に入ってくれているようで、冬の朝は皆が庭に集合してから、三々五々と周囲を回遊します。冬の間はフィーダー(餌台)にヒマワリの種を入れておりますので、カラ類はフィーダーに並んで一粒ずつ種を取り、すぐにその場を離れてお気に入りの枝に持ち帰って、両足で種を押さえて殻を外して上手に食べます。カラ類以外の、たとえばスズメやカワラヒワなどは、フィーダーに居座り食べ続けることも多く、カラ類とは対照的です。

ゴジュウカラはカラ類の中では強い鳥ですが愛嬌者 カラ類のなかでもシジュウカラは行動半径が比較的狭く、ヤマガラは広いと言われています。実際に、冬の間、ほとんど飼い鳥のように庭に居着くのはたいていシジュウカラです。

ヤマガラはよく遊びに来るのですが、けっこう遠いところまで遠征するのか姿を見ない日もあります。シジュウカラはいつも庭に居る割には、私どもに懐かず、すぐに「キチキチキチ」と警戒鳴きをして距離感があります。ヒマワリの種のプレゼントを提供している私どもに対して愛想のない性格です。 ヤマガラはあまり来ない割に、好奇心旺盛で人懐っこいため、ヤマガラの姿が見えると私はうれしくなります。

しかし、タクは「うれしい」を通り越して「ちょっと恥ずかしい」「かなりうるさい」と思うほど賑やかに登場します。庭に来たときや、何か機嫌が悪いとき(他の鳥が気に障るなど)道行く人がびっくりして振り向くほどの大声で「ビビビビ」と激しく鳴きます。タクはちょっとした有名鳥?で、タクを見知っている人からは「タクちゃんは元気ですか?」と尋ねられるほど、個性的でおもしろい小鳥でした。

何年も前のある日のこと、タクとシジュウカラの幼鳥たちが、庭に遊びに来ました。ちょうどこのぐらいの時期でした。秋になると、冬ほどではありませんが、私どもはフィーダーに少しだけヒマワリの種を出しておきます。
夏の間は森に入って姿を見せなかった小鳥たちが、ちょうどこの頃、思い出したように庭に遊びにきてくれるため、がっかりさせないように、という気持ちからです。

タクはもともと体の小さなほうでしたが、生まれて1年経っていましたので、今年生まれたばかりの幼鳥たちより大きめです。少し年長の余裕を見せたいのか、幼鳥たちにわざとアピールするように、「こうやって取るんだよ」とでも言いたげに庭のフィーダーからヒマワリの種を取ると、見せびらかすように食べます。じつは、私どものフィーダーはデッキの中においてあり、その周囲は格子戸を建ててあります。

人間のほうが檻に入っています この格子戸は、もともとサル害のひどさに思いあまって建築会社に頼んで特別に建具をつくってもらったものです。

夏の間、窓を開けようにも、格子がない窓ではサルが家に入り込む恐れがあります。サルは実際、デッキを汚したりフィーダーを壊してヒマワリの種を全部食い荒らしたりという状態でした。

そこで、サルは入れないけどヤマガラやシジュウカラなどの小鳥は自由に出入りできるように、というコンセプトで格子雨戸を作りました。サル除けの意味だけでなく、ツキノワグマなどの野生動物除けの意味もあります。夜にデッキの薪を取るのも暗くて恐いため格子があると安心ですし、ついでに人間の防犯にもなります。そして台風の時は暴風雨からガラス戸を守る雨戸にもなりますので、とても役に立っています。

ということで、格子の中に入ってフィーダーからヒマワリの種を取ってくるというタクの技は、シジュウカラの幼鳥たちからは、驚きと尊敬のまなざしを集めました。タクは一躍ヒーローです。 しかし、すぐに幼鳥たちは真似しはじめ、さらにはタクより上手にヒマワリの種を取れるようになってしまい、タクが取るまえにフィーダーをカラにしてしまいますので、タクは再び機嫌が悪くなり「ビビイビビビ」と騒ぐことになりましたが。

かわいい姿がなんと言っても良い あるときは、枝でタクが何かを食べていると、上にいる鳥の糞が頭に落ちてきて、ちょっと情けない状態で「ビビビ」と騒いでしました・・・。 タクは、いつもそうやって、賑やかに騒いでは皆に食べ物のありかや取り方を教え、そしてドジで損な役回りを演じながらもいつも明るく元気です。やがてそんなタクも成鳥となり伴侶をみつけて、(少し)静かになったものの、ちょっと不機嫌になると、いつもの騒がしさが出てしまうのは以前書いたとおりです。

ところで、小鳥たちは、じつはとても律儀で約束を守る性格である、と思う出来事がありました。何年か前の秋の始まりの頃、ちょうど今頃の季節に、私は近所の泉の里別荘地を散歩していました。近くで、なんとなくこちらを意識しているヤマガラを見かけました。春までうちに遊びに来てくれたヤマガラかもしれないと思い、木の高いところにいるそのヤマガラに向って「元気だった?私のことを覚えている?秋になったらまた遊びに来てね。」と手を振って声を掛け、自宅の方向を指さしました。

しばらくして散歩から戻ってくると、夏の間は姿を見せなかったヤマガラが、ちゃんと庭に来ているではありませんか! 先ほど、散歩の時に声を掛けたヤマガラが、私の話を聞いてさっそく遊びに来てくれたとしか思えないタイミングでしたので、ヤマガラの来訪にはとても驚き、そしてこれほど律儀な小鳥たちをがっかりさせてはいけない、とさっそくヒマワリの種のプレゼントを用意したのを思い出します。

なかなか見かけない鳥です こうして一度遊びに来てくれたヤマガラは、その後も毎日訪れてくれるようになりますが、私どもが出張などで何日か不在にすると、その後は姿を見せなくなることが多いのです。 小鳥、とくにヤマガラは約束を守る、とても律儀な鳥だと思います。

遊びに来ることをお願いした側の私どもがいなくなってしまい、約束をやぶる側になるのは本当に心苦しいことです。
私どもの願いに真面目に応えてくれたヤマガラに申し訳ないことをしたと、そのたびに後悔しますが、仕事の出張は仕方の無いことではあります。

また、カラ類は感情表現も豊かで、びっくりすると人間のように口をあんぐりとあけて驚いた表情をすることもあります。冬になるとソフィアート・ガーデンのコガラたちは、私どもとすっかり仲良しになり、私どもの車が到着するのを出迎えるかのように飛んできて、車を降りるや否や、差し出した手に乗って落花生を次々と交代で受け取るようになります。その光景を、はじめてガーデンに飛んできたと思われるコガラが見て、あまりの驚きに、しばらく口をあけたままポカンとして私の手に乗るコガラたちを見ていたことがありました。

そのコガラに、「どうぞ、あなたも」と落花生のかけらを手にのせて差し出すと、だいぶ躊躇しながらも、おっかなびっくり手に乗りましたが、結局何も受け取らずに飛び去りました。そのときの驚いた顔があまりにおもしろくて忘れられません。

・・・これらすべては偶然の出来事かもしれません。私は、その出来事を縦糸にして、とりとめもない妄想を横糸に組み込みながら、こうしたソフィアート・ガーデン物語を織りなしているだけかもしれません。そうであったとしても、目の前の野鳥たちは現に全身で喜び、かんしゃくをおこしたり、驚いたりする姿を見せ、私どもの心を和ませてくれます。こちらが心をこめて向き合えば、こちらの願いを律儀に受け止めようとしてくれる素晴らしい生きものだと思います。


ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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