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■第85話 「秋雨の週末」 2012年9月23日
昨晩から冷たい雨が降り続いています。外気温も一日中15度未満のため、家の中も20度以下で、肌寒く感じます。 室温が低いと飽和水蒸気量が減りますので湿度も高くなりがちで、70パーセントを超えてしまいました。
こういう日は、いよいよ薪ストーブの出番です。
夏の間はたまに湿気飛ばしに火を入れる程度でしたが、本格的に焚くのは5月以来4ヶ月ぶりです。
薪を焚く、といっても厳冬期のように昼夜切れ目なく焚くのではなく、数本を燃やしてしまえば、あとは熾火の余熱だけです。薪ストーブを燃焼させると家の余分な湿気もなくなります。22、3度ぐらいに温まれば湿度も60%台になって快適になります。
そろそろ信州リンゴが食卓を飾る季節になりました。この時期は「つがる」が店先にたくさん並びます。おいしく食べた後の皮は捨てずに、暖かな石のストーブトップを利用して乾かします。皮をぱりぱりに乾かして薪の火にくべると、焼きリンゴのような甘い香りが立ちのぼります。ささやかな香りのデザートです。
甘い香りといえば、ソフィアート・ガーデンのカツラの木も黄葉しはじめ、綿菓子のような甘く香ばしい香りを漂わせています。コマユミやニシキギ、ナナカマドの葉がちらほらと紅葉しています。しかし、紅葉の先駆けはなんといってもツタウルシでしょう。太陽の光を求めてカラマツの幹をよじ登っていったツタウルシは、高い場所で鮮やかな赤に紅葉し、秋の気配をまっさきに教えてくれます。秋風が草を枯らすようになり、最低気温が8度を下回ると、樹木の「紅葉のスイッチ」が入ると言われます。
本格的な紅葉の時期は10月の終わり頃ですが、ガーデンのような雑木林の紅葉は早くからはじまります。コマユミやツリバナ、クワやヤマボウシ、ミズキなどの中低木の葉が早々と色づき、次に紅葉の中核となるカエデ、そしてコナラやミズナラ、クリ、ブナなどの鮮やかで深みのある高木が美しく山を彩り錦秋のクライマックスを飾ります。フィナーレはカラマツの黄金の葉がサラサラと音をたてて降り、静かな余韻を残しながら秋の終わりを告げます。そうしてガーデンの高木はモミの緑を残して葉をすべて落とし、冬の青空を背景に繊細な枝のシルエットを見せるようになります。
一年中でもっともあでやかな晴れの舞台を終えた木の葉が大地に落ちると、こんどは元気の良い木の葉のような小鳥たちが賑やかにやってきてガーデンの木を飾ります。
こうして秋から冬、そして初夏までは、ソフィアート・ガーデンは一年中で最もいきいきとした楽しい野鳥たちの季節を迎えます。野鳥によろこばれることを目指す庭にとっての 「ハイシーズン」の到来です。
これまで不作の年がなかったヤマボウシの実が、今年は全く実りません。甘いヤマボウシの実が大好きなヒヨドリやメジロ、オナガなどの野鳥たちが何度も庭に来てはチェックしますが、おいしいものを庭に用意できずに申し訳ない気がします。スズメバチやアシナガバチも好物のヤマボウシのあたりを飛び回り、少ない実りを探しています。
いつもは野鳥や虫、私、そしてサルと、三つ巴になってヤマボウシの実取り合戦が繰り広げられる9月ですが、今年は寂しい限りです。もっとも、サルどもの悪さに悩まされることがないのは安心ではありますが。
先週末、玄関でモッコウバラの剪定をしていると、周りをハチがよく飛びます。ふと上を見あげると高い軒裏にアシナガバチの巣が二つありました。アシナガバチの巣はいわゆる「ハニカム構造」がよく見える開放形です。雑食性のスズメバチに壊されてしまうことも多いため、小さいまま終わることも多いのですが、今週見たらやはり二つとも攻撃されてしまったようで、完成を見ることなくハチや子供たちはいなくなっていました。ハチの国家においても、国防はたいへんなようです。
庭のエゴノキは花が満開でした
ので、実成りも良く、茶色く熟した実がたくさんぶら下がっています。
ヤマガラはエゴの実が大好物で、それこそ目の色を変えて喜びます。エゴの実は、エゴの語源でもある「えぐい」サポニンを含むため、人間も含め他の動物にとっては有毒です。
ヤマガラがエゴの実を喜ぶ姿はほんとうに微笑ましく、この姿を間近に見たくて、私どもは居間の大きな窓の前にエゴノキを植えました。毎年この季節は、ヤマガラが小首をかしげてエゴの実を見つめては、実にぶらさがりながら上手に嘴でひねり取る姿が、期待通りに目の前で見られます。
ヤマガラは「貯食」という将来に備えた行為をします。木の根元や樹肌などに実を隠しておき、食べ物の乏しい冬に備えます。コガラも貯食をすると言われますが、それ以外のカラ類はそうした行為は見られません。カケスはヤマガラ同様に頭が良く、ドングリなどを貯食しますし、リスもドングリやクリなどの木の実を木の洞などに蓄えます。そろそろクリも実りはじめ、道路には早くも緑色のイガがたくさん落ちています。
雨の降る週末は外出するのもおっくうなので、室内で音楽を聞きながら来週一週間分のパンを焼き上げます。バッハの管弦楽組曲とヴィヴァルディのフルート・ソナタで構成されたCDです。フルートの名手でありベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の首席フルート奏者でもあったオーレル・ニコレの演奏が特にすばらしいです。
この曲を聴いていると、初夏の森の中にいる錯覚を覚えます。バッハやヴィヴァルディは、森と鳥の響きそのものを音楽にしたのではないか、そしてオーレル・ニコレはフルート奏者ではなく美声を誇る鳥なのではないか。そんな気さえします。何度聞いても、曲のもつ世界の美しさと奏者の完璧な音色は、とても人のなせる技とは思えません。
初夏の頃、小鳥たちは愛を育む相手を求めて心を込めて求愛のさえずりを奏でます。その時期は、野鳥のさえずりの震えるような美声がガーデンと周囲の森に延々とこだましますが、まさにその時に聴く音階や響きとそっくりな名演です。
そんなことを書いているうちにストーブの火は静かな熾火になり、室温は23度、湿度も60パーセントほどになりました。そろそろ熾火で秋の味覚、焼き芋でも焼いてみましょうか・・・。
ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
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