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■第77話 「熊に遇う」 2012年9月1日

クマはクリなどの木の実が大好き 9月に入り、これから、さまざまな木の実も収穫時期を迎えます。食欲の秋に向けて、樹木は、茂った葉を晩夏の陽光に向って広げ、果実へ滋養をたっぷりと貯蔵していきます。あとひと月もすれば、一年の役割を終えた葉は、澄んだ空によく似合う錦秋の彩りに染まります。

先日、今年初めて実りを迎えた庭のスモモが、朝見ると跡形もなく消え失せていました。そういえば前の日の夜遅く、妙な獣の声が庭に響いていました。何者かが、全部食べてしまったのでしょうか・・・。

ブルーベリーは、わずかですが収穫できました。ヤマボウシは、例年、9月の中頃に大きな実を大量につけますが、今年はめずらしく花が少なかったので収穫は休みにしましょう。

場所と育て方によっては、軽井沢でもおいしいブルーベリーが育ちます。先日、追分にある大学教授の別荘を訪問し、軽井沢で育てたおいしいブルーベリーの実、自家栽培のプラムやブルーベリーで作ったジャムを頂きました。自家栽培のブルーベリーやスモモでジャムを作ってみたいとは思いつつも、私どもの場合はどうやら、実は育てるより買った方が確実で安上がりです。

8月下旬のハギ、オミナエシ、ミズヒキ、タマアジサイ 9月は、高原の避暑地として賑やかだった町が少しずつ静けさを取り戻します。もっとも別荘の住人たちは、残暑を避けて9月末頃まで軽井沢で過ごす人も多いようです。

10月に入ると再び秋の行楽シーズンで賑わいを見せますが、夏から秋への移行期であるこれからの時期は、道路も店も異常な混雑はなくなり、落ち着いた日常生活を過ごすことができます。

しかし、心穏やかに過ごしていても、9月は私にとって、思い出すと少しばかりヒヤッとする、忘れられないことがあった月でもあります。今回のソフィアート・ガーデン物語は、その話について触れてみたいと思います。


2004年8月の終わり、いまから8年前のことです。自宅の庭には感知式の外灯が何カ所かあり、夜間は真っ暗な中で何かが通れば、外灯が自動点灯します。

パートナーはその時、出張中で不在でした。夜、灯りを消した居間の窓から、ふと庭の外灯が明るい光を放っているのが見えました。ふだん庭の感知灯がつくときは、ネコやキツネを見かけることが多いので、またその類いだろうと思いながら、庭に面した大きな窓のカーテンを何気なく開けました。すると、目の前を大きな黒い生きものが横切りました。

予想に反して大きな影でしたので、一瞬頭の中が白くなりましたが、すぐに「クマだ!」と気づきました。幸い家の中は真っ暗でしたので、庭のクマの側からは、ガラス越しのほんの1メートルほどにいる私は見えなかったと思います。首の下には白い三日月の首輪のような毛があり、それ以外は真っ黒です。ツキノワグマをこの目で見たのは生まれて初めてで、しばし、艶やかなクマの毛並みの美しさに見とれてしまいました。

子連れのクマに注意 しかし、目の前を左右に往き来する大きなツキノワグマの姿は野生そのものです。人間の住む世界の理屈は通りません。写真を撮ろうと一瞬だけ思いましたが、真っ暗ですので、赤外線カメラでなければ無理ですし、万が一フラッシュでも光ってクマが気づいて興奮してしまったら、窓ガラスで隔てられているとはいえ危険です。思い直して目で見るに留めました。

とりあえず、どう対応しようかと相談のために、パートナーの携帯電話に連絡したところ、出張先での会食中だったようで、用件を言う前に
「お客さんと食事中なので、あとでね」と、すぐに切られてしまいました。

仕方がないので、警察に問い合わせると、ピッキオへの連絡を勧められました。ピッキオとは軽井沢の星野リゾートが運営するNPO法人で、軽井沢の野生動物に関わる活動を行っており、軽井沢町のツキノワグマの追跡調査やクマが出た場合の対応などを行っている団体です。

そこでピッキオに連絡したところ、夜中にもかかわらず、クマの観察チームの担当者がすぐにかけつけてくれました。ベアドックというクマ対応ができるように特別に訓練された犬といっしょに、アンテナをかざしながら、庭や周囲の畑を見回ってくれました。すでにクマは去り、近くにはいない様子でした。

クマだって人間に遇いたくありません! 一度ピッキオによって捕獲されたクマは、発信器のついた首輪を装着され、唐辛子のスプレーなどで嫌な刺激を与えて、人間に関わらないように学習させた上で山に放つということで、こうして発信器がつけられたクマは24時間体制で居場所を監視しているとのことです。

今回のクマは首輪がないため、人家に出ることには慣れていないであろうということでした。後日、このクマは近くの別荘地に出没して捕獲され、危険であることからやむなく殺されてしまったという話を誰かから聞かされました。 ピッキオによればこのクマは、体長150センチの大きな成獣であったとのことです。

小雨の降る中、ピッキオのスタッフには、外灯もない真っ暗な周囲の見回りで対応をしてもらったため、私も安心して就寝することができました。もっとも、すべて対応を終えた後で、パートナーからは「さっきの電話はなんだったの?」と、明るく楽しそうな声で電話がありましたが・・・。

翌朝は朝5時から庭に出て掃除をしながら、近所の人がクマに出くわして怪我などしないように、散歩する人に昨晩の話をして注意喚起しました。すると、「ああ、クマは近頃よく見るねえ」というのんびりした反応が帰ってきました。

近所では、自家菜園の畑をもっている家がコンポストを置いており、ときにはおかずの残りを畑に直に捨てている家もありました。栄養価の高い食べ物が手軽に手に入るため、クマ(だけでなくサル、イノシシ、他の野生動物)は畑周辺に引き寄せられてしまいます。また畑やコンポストだけでなく、別荘地ではゴミ置き場に無造作に捨てられたものがクマの誘致につながり、人家にクマが出没する原因になっています。私どもは、軽井沢という野生動物の生息地に住む以上、それらを誘致しない(そして接触を防ぐ)心がけが必要であると思います。

山の中では人間が注意するしかない ピッキオでは、こうしたクマの誘致につながる行為をやめるよう地域の啓蒙活動をしたり、別荘地のゴミ集積所では鍵のかかるゴミ箱設置を呼びかけたりもしているようです。

また最近では、軽井沢町のメール配信サービスもあり、クマやサルの出没情報を配信しています。こうしたサービスを利用すれば事前に注意することも多少は可能になります。しかし、それでも軽井沢は、日常的にクマの出没する地域であることには変わりありませんので、誘致を防ぐ手立てと遇わないための注意が必要です。

はじめて庭を散歩するクマを目撃してから何年か後、私は、首輪のあるクマが隣家との間を歩いているのを、またもや室内から見ましたので、二度も間近でクマを見たことになります。三度目がないようにしたいものですが、クマの活動期はいつ会ってもおかしくない環境に居る以上は、自分自身のセンサーを常に働かせつつ生活しております。

ソフィアート ・ ガーデン物語
 有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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メモ(本文とは直接の関係はありません)
ソフィアート・ガーデン物語を読んでいただき、ありがとうございます。
9月以降、当面は週2、3回のペースで掲載します。

 
 
 
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