>> ホーム
 >> 会社概要
 >> 事業内容
 >> ソフィアートの研修
 >> 代表者プロファイル
 >> 研修雑感・コラム
 ソフィアート・ガーデン物語
  >> 序 「案内係のMです」
  >> 第31話〜第40話へ
  >> 第41話「巣立つ日」
  >> 第42話「旬を食べる 1」
  >> 第43話「旬を食べる 2」
  >> 第44話「旬を食べる 3」
  >> 第45話「梅雨の晴れ間」
  >> 第46話「梅雨の恵み」
  >> 第47話「7つの子」
  >> 第48話「土の道」
  >> 第49話「お茶の時間 5」
  >> 第50話「花の色は」
  >> 第51話〜第60話へ

 >> 連絡先
 >> Coffee Break


ソフィアート・ガーデン物語    >>前の物語へ >>次の物語へ

■第44話 「旬を食べる 3 −ラッキョウ−」 2012年6月14日

緑が濃い夏色になりました 先週は、いよいよラッキョウが店頭に並びました。
嬉しいような苦しいような・・・。

私どもは、やはりパートナーの出身地でもあり、味も良い鳥取県産ラッキョウを買い求めます。こちらでは茎と根付きのラッキョウが一袋600グラム単位で販売されます。買った後は、すぐに面倒な下処理をすることが必要になります。

下処理によって重量が約8割に減りますので、下処理後の重量(=仕上がり重量)を約500g/一袋で計算して買い求めます。仕上がり重量で一人当たり1キロ〜1.5キロを作っておけば、1年間ラッキョウに困ることがありません。

下処理済みの鳥取県産ラッキョウは地元以外では一般に流通せず、東京都内の百貨店や高級スーパーなどでたまに見かけますが、かなり高額で販売されます。一方で産地の不明なものや外国で下処理されたものは安価でどこでも売られていますが、味と安心という観点から好みが分かれることでしょう。

このニレの向こうでホトトギスが延々と鳴きます 下処理はラッキョウの根と茎を切り落とし、汚れた皮を水につけてむき洗いし、つるつるの白いラッキョウ粒にする、という作業ですが、これが結構時間がかかります。黙々と作業しても、1キロ当たり1時間ほどはかかってしまいます。そしてこの作業は日々少しずつ、という訳にはいかず、一度に済ませてしまわなければなりません。 なぜなら、根と茎を落としたラッキョウは、すぐに次工程(塩漬けなど)に入らなければ、再び芽が伸びてきてしまうからです。

という訳で、ラッキョウの顔を見てしまった週末は、小屋の水場でホトトギスの「キョッキョッ、キョキョキョキョッ!」をBGMに窓の外の緑を眺めながら、ひたすら何時間かをラッキョウと向き合うことになります。

ところで、ソフィアート・ガーデンで、長時間ラッキョウ作業をしていて気がつきましたが、ホトトギスが鳴くと、まるで「面倒なヤツが来た」とでも言わんばかりに、他の鳥が押し黙ってしまいます。

この様子を耳にしていると、ホトトギスに「托卵」されるのを恐れる他の鳥が自分の巣の場所を知らせないために、ひたすら沈黙しているのではないかと思えてきます。あくまで想像でしかありませんが、そうした鳥たちの雰囲気が私の耳には伝わってきます。

一方、たまたまホトトギスに見つかったのか、ターゲットにされたであろうウグイスは、逆に「ケキョ、ケキョ、ケキョ、・・・・」と警戒音の谷渡りを、今まで聞いたことがないほど長時間にわたってホトトギスの鳴き声に対して発していました。他の鳥の声が沈黙している中、長時間、ホトトギスの「キョッキョッ、キョキョキョキョッ!」のソロとウグイスの谷渡りの対決(?)が続き、やがてそれも遠ざかっていくと、やれやれとばかりに他の野鳥たちが美しい声で鳴き始め、ガーデンの森は再び賑やかになります。

色白つやつやです こんな観察を楽しみながら、やっと下処理の終わった白いラッキョウ粒に塩をまぶして一晩置き、水洗いしたあと、本漬け(まず1キロ当たり水700CC、塩150gの塩水に10日間漬け込み乳酸発酵をさせ、その後塩抜きをしてから砂糖と酢に漬け込む)します。

ラッキョウはたいへん生命力が強く砂丘でも育つ、と鳥取県産砂丘ラッキョウのホームページに紹介されていますが、その能書きを見るまでもなく、かの強烈な臭いで、これは「タダモノ」ではない生きものだと分かります。いかにも生命力溢れる、パワーのある臭いです。したがって、私にとっては臭いの制圧がラッキョウ漬けの際に重要な課題となります。


あっという間に食べてしまいます 私は臭いの強いものが苦手ですので、いかにおいしくて健康に良い食べ物であっても、塩漬けの10日間、乳酸発酵時に出るあの強烈な臭いを我慢することはできない、と何年か前に書籍やネット情報をかなり真剣に調べました。

すると、ある一般の方のサイトで、漬ける際に蓋の内側にラップを一枚噛ませて蓋をすれば臭いが漏れない、という情報を得ました。

この情報は、さまざまな料理関係の書籍を調べても得られなかったものですが、私にとっては何よりも救いとなりました。あの、薄いラップ一枚がこれほどすばらしい効果があるとは夢にも思いませんでした。

このような塩漬けによる乳酸発酵をしたうえで本漬けをすれば、1年以上経っても、シャキシャキとした歯ごたえと甘みと新鮮な色を保ったおいしいラッキョウ漬けになります。

塩漬けを省略して一気に甘酢に漬け込む漬け方は、すぐに食べきるのなら良いかもしれませんが、一年間保存するうちに、歯ごたえと味が本漬けより劣ってくるように思えます。多少の苦労を伴ったとしても長期保存の仕上がりと味の差が格段に違いますので、私は断然「本漬け」派です。

蓋にラップは欠かせません ラッキョウを漬け終わった甘酢は、これも再利用価値が高く、ラッキョウの臭いと成分が溶け込んでいますので、さっぱりとしたサラダドレッシングとして生野菜にも使えます。

キャベツを千切りにして塩もみして絞り、ラッキョウ甘酢をかけるだけで、ザワークラウトのような一品になります。ザワークラウトも自作したことがありますが、作る際に塩とキャベツだけで乳酸発酵させる、という意味でラッキョウの本漬けに少し似ています。もちろんキュウリなどの即席漬けにも利用できます。

今、(私との)戦いを終えた白くてツルツルのラッキョウ軍団は、大きな瓶の中で行儀良く塩水に浮かんで眠っています。ラッキョウたちは幸せな夢の中で、乳酸発酵による甘みとうまみを増してくれていることでしょう。もうすぐ甘酢に漬け込めば終わり。

台所の暗い片隅で白く光るラッキョウ瓶を眺めながら、 「これから先の一年間、ラッキョウ生活の幸せは保証されたようなもの」 と密かに自己満足に浸るスタッフMです。


ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


関連する物語
  >> 第42話「旬を食べる 1」  >> 第43話「旬を食べる 2」  >> 第44話「旬を食べる 3」
  >> 第53話「野菜三昧」 
 
 
Copyright (C) 2003-2012 Sophiart Inc. All Rights Reserved.