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■第43話 「旬を食べる 2 −蕗(フキ)−」 2012年6月13日
フキ(蕗)は不思議な植物です。春、フキノトウのふっくらした蕾を見つけて、ねじって摘んで天ぷらなどで味わいますが、やがて小さなフキの子たちが辺りからひょろひょろと顔を出します。
そのうち、気が付くと、庭中に足の踏み場も無いほど茂り、フキのお化けがグランドカバーのようになります。踏まないように、一足ずつ足場を探して歩くのも不自由するほどです。
大きく育ったフキをナイフで収穫して、今年は合計400本になりました。スーパーなどで見かけるような小ぶりのヤマブキと違って、一本当たりがその何倍にもなる大きなフキです。
フキの調理はけっこう時間と根気が要るので、二回に分けて、200本ずつ収穫、加工を済ませていきました。収穫や仕分けなどの屋外作業用に、大きな台があるといいのですが、ちょうど小屋の横に止めてあった車のボンネットを使って仕分けしてしまいます。
茎と葉を分け、普段は茎だけを加工して葉はそこら辺に捨ててしまいますが、今年は葉も柔らかそうなものを選び、保存食にしました。フキの茎は穴の開いたものもありますが、多くは穴の無い、水の滴るような新鮮で太い緑のヤマブキです。根本が少し赤紫できれいです。
ソフィアート・ガーデンのフキは自生のヤマブキです。水分の多い場所にあるものは特別に大きく育ち、茎の長さは50センチ以上になります。直径も万年筆ほどの太さになります。秋田ブキのような2メートルのフキは、傘にもなるほど巨大だと聞きますが、そんなフキが林立する中で収穫する人は、まるで小人になったような錯覚を覚えることでしょう。
茎はガーデンの屋外水栓で、大きなビニール袋に入れて流水で水洗いします。二層式洗濯機があれば、それで洗えれば楽でしょう。30リットル容量のビニール袋に満載のフキと水を入れれば、総重量は30キロ以上になりますので、持ち上げることはできませんが、力いっぱい袋をゆすって、時間と水をたっぷり使ってきれいに洗います。葉も、同様にしてビニール袋でダイナミックに洗います。葉の方がアク(苦味)が強いので、しばらくビニール袋で流水につけておきます。
茎は切り分けて、一番大きな鍋でたっぷり湯を沸かし、湯がいて湯を捨て、水にさらすこと2回ほど。キャラブキにするので、あまり風味を逃さず柔らかくなり過ぎない程度に、アク抜きをします。そして、4センチほどの食べやすい大きさに切りそろえ、今度は日本酒と醤油、砂糖、若干の塩で、じっくり煮ます。分量としては、日本酒と醤油を一対一ほどで、沖縄の黒砂糖と塩を使い、アクセントにガーデンで取れた青山椒の塩漬けを加えて、2日間ほどかけて、火にかけたり余熱でじっくり味を染ませたりして仕上げます。
真っ黒なキャラブキにするために鉄鍋が良い、と書いてあるものを参考に、鉄卵(南部鉄の卵形のもの)を入れて煮た上で、最終仕上げは鉄の中華なべで煮締めます。
そのためか、真っ黒のキャラブキに仕上がります。鰹や昆布などのだしは一切使いませんが、煮ている間に、ある瞬間から、味に複雑なだし風味が加わるようになります。フキにそのような成分があるのでしょうか。お酒と化学変化を起こしているのでしょうか。毎回不思議な思いがします。
私は「千曲錦」という佐久のお酒を使っています。たまたま家に、もらい物の「千曲錦」の一升瓶があったので使ってみただけですが、おいしく仕上がり、それ以来キャラブキを煮るときは「千曲錦」と決めています。
今回はフキの葉を、キャラブキを仕上げた残りの醤油やお酒や砂糖の入った煮汁に、鰹と昆布とトウガラシを加えて佃煮にしました。
葉の佃煮は茎より苦味が残りますが、味噌汁の具にしたり、自家製のルバーブジャムと混ぜて照り焼きの調味料として使ったり、大人の味の総菜として何かと重宝します。これも一年分の保存食として小分けにして冷凍保存します。
フキは山に自生していますし、都会にもあります。多くの適湿な土地で自生可能な植物ですので、誰もが知っているありふれた植物で、フキノトウから始まりフキの煮物やキャラブキは素朴な田舎の味でしょう。
食べるのには面倒を乗り越えなければいけませんが、フキのおいしさには代えられません。この時期を逃すと来年まで手に入らないことを思えば、多少の苦労も引き受けましょう、という気にはなりますが・・・。
400本のフキを制覇し終えた感想としては、もうフキの顔は見たくない、というのが正直な気持ちです。
ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
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