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■第47話 「7つの子」 2012年6月19日

巣立ちの直前まで排泄物を巣の外に捨てに行きます この前の日曜日のこと、私どもは「7つの子」の巣立ちに立ち会うことができました。「7つの子」と言っても、カラスのことではありません。シジュウカラの7羽のヒナです。ヒナの巣立ちには、いつものことながらヒヤヒヤさせられます。さて今回も、無事巣立つことが出来るでしょうか・・・。

どうやら我が家の巣箱に入居するカラ類は、巣箱の大家(私ども)のことを思ってか、日曜日に巣立つと決めてくれているのでしょう、と思いたくなるほど、巣立ちは6月の日曜日であることが多いのです。私どもも出張から帰って巣立ちを見守ることができるので、嬉しい限りです。

すでに先週の日曜日に、自宅南の巣箱のヒガラが巣立ったことは、第41話「巣立つ日」で書きました。

目の前で巣立ちを見るのはハラハラします 前日の土曜日まで悪天候でしたが、ヒナの大声も、親鳥が巣を出るときにくわえて捨てに行くヒナの排泄物の白いカプセルも、だいぶ大きくなっていましたので、日曜日に晴れれば巣立つだろうと予測はできました。日曜日は朝から小雨の降る天気でしたが、幸い午後からは晴れて温度も一気にあがるという予報でした。

巣箱は自宅のキッチンからよく見えるため、日曜日は朝7時ごろからカメラをスタンバイして待っておりました。しかしお昼を過ぎても熱心に給餌する親の様子に、まだ巣立ちはないのかと思い、私どもは出かける用意をしておりました。

すると突然、巣箱の中から「カタカタ」という羽ばたきの音が聞こえ、丸い巣穴からヒナの嘴が覗きました。いよいよ巣立ちかとカメラを身構えたら、巣穴からは顔ではなく真っ白い腹が見えてきました。

かわいいヒナは、丸い巣穴から頭を出さずに腹から出ようとしているのでしょうか。思わず笑ってしまいました。巣穴の28ミリの直径では最近のヒナには小さいのでしょうか。ようやく、黄色い嘴をへの字に結んだヒナの顔が巣穴から登場しました。きりりと前を見つめ、何度か頭を引っ込めたり出したり、しばらく迷って、丸々とした腹をねじりながら「ポン!」と飛び出して目の前のカエデの細枝に留まってじっとしています。こうして午後1時から巣立ちは始まりました。

最初に出たヒナです 1羽が出た後は2羽目、3羽目、4羽目と続いて飛び出します。その間に親は二手に分かれて、すでに巣立ったヒナの面倒を見る係と、巣箱に残るヒナを世話する係を分担します。

ヒナが「ワニャワニャ!」とか「メメメ!」などとそれぞれ騒いでよちよちと枝を移動する中、近くをカラスが鳴いて飛び交います。

巣立ち直後のヒナは、カラスなどの犠牲になりやすい時期で、親もヒナの世話とカラスへの警戒で気が抜けません。カラスだって山にかわいい子を抱えているかもしれませんが、だからといってシジュウカラのヒナに手を出させるわけにはいきません。

元気の良いヒナたちはこわいもの知らずで、すぐに好奇心いっぱいに近くの木に飛んで冒険してしまいます。
「ペッカッチ!キチキチキチ!(スタッフM訳:あぶない、静かにしなさい!)」と親がヒナたちに注意します。カラスが飛び交うのをパートナーも心配し、家の外に出て見守っています。

やがてカラスも去り、巣立ち第一団のヒナたちは親に連れられて、近くの森に行ってしまいました。しばらく静寂が訪れ、巣箱の中もヒナがいる気配が感じられないほど静かになります。しかし、親が来たかすかな気配を察して巣箱から「ワニャワニャ!」と聞こえてきます。親も虫をくわえて入り、ヒナの排泄の白い袋をくちばしにくわえて出てきます。

のんびりしたヒナに親もやきもき 満員の巣箱の中で兄弟に踏みつけられていたのが、広くなって気持ちが良くなったのか、残るヒナはなかなか出てこようとしません。しかし、親がしばらく姿を見せないことに不安になったヒナが巣箱から出ようと、顔ではなく白い腹を巣穴から出そうともぞもぞと体をひねっています。

そうしているうちに、親の声が遠くから聞こえてきた勢いで5羽目のヒナが、そして6羽目のヒナも巣立ちました。まだ巣箱の中で「カタカタ」と蹴る音がして、もう一羽、7番目のヒナがいることが私どもには分かりましたが、親が遠くから何度も「ピーツピーツ!」と呼んでも、巣箱の中のヒナは返事をしません。
親は、とうとう第2陣の巣立ちヒナたちをつれて森へ行ってしまいました。

7番目の末っ子のヒナは、巣立った6羽たちと親鳥から、ひとり取り残されてしまいました。30分ほど経っても親は一向に戻る気配がありません。遠くではカラスが複数で騒ぐ声がします。よちよちと冒険するヒナたちを6羽も連れたシジュウカラの親は、巣箱に残るヒナのことに構っている暇はないのでしょう。もしかしたら、残っていることに親が気がついていないのかもしれません。あるいはこのヒナは、何らかの事情で弱ってしまい巣立つことができないヒナなのでしょうか・・・。

顔つきはしっかりしています 私どもは出かける用事を先延ばしして、あれこれと心配しながらことの成り行きを見守っていました。すると、今頃になって、巣箱にたった一羽残るヒナが巣穴から顔を覗かせ、「メメメ!(お腹すいたよ!ちょうだい!)」と鳴きながら親を呼びます。しかし親ははるか遠くに行ってしまい、もはやヒナの声に応えてくれる身内は近くに誰もいません。

とうとう、ひとりぼっちのヒナは心細さのあまり、鳴きながら小さい身体で巣箱の外に飛び出してしまいました。

ヒナのいた巣箱のある東側は細い道路に面しており、ヒナが木から落ちれば、いつも暴走する軽トラなぞが通れば轢かれてしまいます。パートナーは東の道路に出て、ヒナが道路に落ちないよう見守ります。

ヒナは、さかんに上空を見上げて鳴いて親を探し、親だと勘違いしたのか、他の鳥の声が聞こえるところを目指して、数メートル離れたとなりの畑の木へ必死に羽ばたいて飛びました。まだよろよろと足下もおぼつかないのですが、親に会いたい一心なのでしょう。畑でしたら下に落ちても大丈夫ですが、上空にはカラスが飛び、ヒナの無防備な声だけがあたりに響きますので、見守っている私どもは気が気ではありません。

大きな声で親を呼びますが・・・ 親はどこへ行ったのでしょうか。もう、この小さい要領の悪いチビさんは忘れられてしまったのでしょうか。あたりを蝶々が優雅にふわふわと飛びますが、ヒナには自分で虫を取ることはまだできません。小さな足で細枝に必死でしがみつき、大きな声で力尽きるまで鳴き続けるので精一杯です。そして、30分ほど鳴き続けて、つかれて黙り込んでしまいました。

私どもは出かけるのを引き延ばしにしてきましたが、もうタイムリミットです。後ろ髪を引かれる思いで玄関を出た、まさにそのときです。青く晴れ渡った空に、待ちに待ったシジュウカラの親が、2羽そろって「ピーツピーツピーツ!(かわいい子よ、迎えに来ましたよ!)」と大きな声で7番目のヒナを迎えに来たではありませんか!私の目には、シジュウカラ親の姿はまるで後光が差すように光り輝いて見えました。

鳴き疲れて静かだったヒナは、その声を聞いたとたん元気を取り戻し「メメメ!(ここだよ!お腹空いた!)」を繰り返します。隣の畑の木で、無事両親に合流した末っ子のチビさんを見て、私どもはホッと胸をなでおろして明るい気持ちで出かけることができたのでした。

1時間半ほど経って家に戻った時、親子のシジュウカラの賑やかな声が私どもの庭の至るところから聞こえてきました。きっとあの7つの子(もちろん末っ子のチビさんも一緒でしょう)が勢揃いして、賢く優しいシジュウカラの親から生きるための教育を受けているところだったのでしょう。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第47話 「7つの子」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


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