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■第68話 「夏の日曜日」 2012年7月29日
軽井沢といえども今年の猛暑は別格で、夜になっても暑いと感じる日が何日かあります。そういう日は窓を開けて寝ることもあります。夜は外気温が20度以下になり涼しいのはよいのですが、明け方は結構冷えて風邪をひきそうになってしまいます。この週末はとても暑く、今年初めて窓を開けて寝ました。そんな日の明け方は、外のいろいろな音がよく聞こえてきます。
早朝まだ空も薄暗い4時前、かすかに新聞配達の車の音が聞こえてきます。車を降りて家々に配達するときは、熊除けの鈴をつけて走っているのでしょう、「シャン、シャン、シャン」とクリスマスのサンタのトナカイを思わせるような鈴の音です。
そして、4時ごろからうっすらと空が明るくなり、その光に反応してヒグラシが「カナカナカナカナ・・・」と鳴き始めます。「日暮(ヒグラシ)」というだけあって、夕方に鳴くことがよく知られていますが、同じぐらいの光に包まれる夜明け前にも鳴いています。このセミの声が、林や森のあちこちから聞こえてくる様子は、涼しげで気分が良いものです。
ヒグラシのそよ風のような音に夢心地で耳を傾けていたら、4時半きっかりに、
ガビチョウ
が鳴き始めました。ここ2、3年の間に、すっかりこのあたりに定住してしまった外来種です。美声、といえなくはありませんが、元気が良すぎて困ります。まるで拡声器をつけたような大音量で、我が家の生垣を一周して回ります。
ひとしきり騒ぎ終えたあと、縄張りを宣言して満足したのかガビチョウはどこかへ行ってしまい、あたりを再び静寂が包みます。遠くで小川のサラサラサラというちいさな音がします。空がだんだんと明るくなり、小鳥たちが元気に朝を告げ始めると、軽井沢の夏の一日の始まりです。
ひんやりした風が気持ちの良い午前中は、何をするにも最高です。中断していた梅の土用干しも、ここ何日かの青天で仕上がり間近です。しかし、早朝は霧が出ていることが多いため、まぶしい日差しが期待できる時間までお預けです。こうして、3、4時間ほどのカンカン照りを待って、毎日少しずつ干して仕上げていきます。梅干の皮も薄く実もやわらかくなり、紫蘇を使わない漬け方ですが色も日焼けして赤くなってきました。
日曜日の朝は、前日の夜に仕込んだパンを焼き上げます。ホシノ天然酵母という酵母をつかっていますので、通常の涼しいときは一次発酵に12時間ほどかけます。しかし、真夏は25度以上に室温が上がりますので8時間ほどで発酵してしまいます。天然酵母は、人工イーストと違っておおらかで、何時間か長めに一次発酵させても大丈夫、テーゲー(沖縄独特の表現で、大概、だいたい、といったニュアンス)です。
食パンの型に入れ、2時間ほど成形発酵の後、八割方ふっくらと発酵したら焼き上げに入ります。300度までガスオーブンが暖まったら火をとめてパンを入れ、同時にオーブンの最下段に敷き詰めた小石に水をかけます。すると、「ジュワッ!」と音がしてオーブンに水蒸気が満ち、パンの表皮がフランスパンのようにパリッと仕上がります。 こうして15分間余熱だけで焼きます。すると、見る間に勢い良く生地が釜伸びし、はちきれそうなふっくらとしたパンの姿になります。
次にオーブンを150度にセットして15分間焼き、パンがほんのり狐色になったところを最後に220度まで温度を上げて5分焼いて仕上げます。香ばしい焼き色の山型パンの出来上がりです。オーブンから出すと、パンの表面がパリパリと音を立ててヒビ割れする音がします。これを、私はパンの拍手と呼んでいます。皮がパリッとおいしく焼けたパンは、拍手喝采を自分たちで表現するのです。
こうして今週のおいしいパン生活が保証されました。冷めて型から外したら、清潔な麻布に包んで一晩乾かし余分な水分を飛ばすと、パンはさらに香りと味が濃く、おいしくなります。ですので、土曜日の夜から作り始めて、日曜日の午前中に焼きあがったパンですが、食べるのは月曜日の朝からになります。毎週日曜日に焼くパンは1週間分の朝食用で、毎日のおやつ用には、パン焼き器で2日に1度は焼きます。
パンだけでなくお米のご飯も麺も好きです。外食をしないで家ですべてつくるためか、とくに週末は食事にかける時間が一日のほとんどのような気さえします。でも、小鳥たちを見ていても、一日虫を捕っては食べ、お腹いっぱいの時には木陰で眠そうにアクビをしているので、あまり私と変わらないような気がして嬉しくなります。
こんなことを書いていると、目の前の窓の外に賑やかな小鳥の集団がやってきました。きっと、
先日巣立ったシジュウカラの親子
でしょう。3,4羽の幼鳥と親鳥が賑やかで、一羽だけ離れてヤマガラもいます。
まるで
第40話「托卵(たくらん)」
を思い出させる組み合わせです。我が家の庭の木は、以前からある木も含め、すべて小鳥が大好きな木です。通常、夏場は里に小鳥たちが来なくなりますが、庭が成熟するとともに、こうして親子連れが毎日安心して訪れてくれるようになって、私どもも嬉しい限りです。
親鳥はけっこう大きな虫を捕り、嘴でくわえて虫の頭を枝に叩きつけて弱らせてから幼鳥に与えます。でも、自立を促すためでしょうか、幼鳥たちが親の周りに群がって「メメメ」と羽を震わせる中でも、すぐには与えず虫を見せびらかしています。そして、そのまま虫をくわえて飛んでいくと、ちいさなシジュウカラも急いで後を追います。大きな虫を見る間に捕獲してしまう親の狩りのうまさは、驚くばかりです。
そんなに捕ったら虫がいなくなるのでは、というほど、どんどん虫を捕らえます。虫にとって鳥は恐怖の対象でしょうが、こちらは、我が家の庭木の手入れを熱心にしてくれて、ありがとうと言いたくなります。
近隣が熱心に自分の敷地の手入れで草刈り機をブンブン鳴らす音が聞こえてきます。道路の車の音は全く聞こえませんが、そういうときはたいてい大混雑で道路が止まってゆっくり運転していることが多いようです。この週末はオリンピックもあるためか、意外に道は空いていましたが・・・。
昼を過ぎて暑さもピークを迎える頃には、自宅より涼しいソフィアート・ガーデンに移動します。
別荘の住人達も勢揃い、それぞれが思い思いの夏を楽しんでいます。犬の散歩の人々、テニスをする人々、仲間でわいわいとバーベキューの用意をする声、デッキでのんびりくつろいで読書する姿も見えます。子供たちは捕虫網を手に、なにやら興奮して林の中を走り回る姿が見えます。
何するでもなくのんびり過ごしていると、かすかに遠くで「ゴロゴロ・・・」という音がしています。暑い日に遠雷が聞こえてくると、やがて滝のような大雨が降り、すべてきれいさっぱり洗い流し、夜には涼しくなります。
または、夕立ではなく霧が出てくることも多く、カナカナカナ・・・とヒグラシが鳴く頃には、ひんやりとした宵の風ですっかり涼しくなります。こうしてゆっくりと、真夏の日曜日が過ぎていきます。
ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
メモ(本文とは直接の関係はありません)
ソフィアート・ガーデン物語を読んでいただき、ありがとうございます。
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