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 ソフィアート・ガーデン物語
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■第62話 「香りと響きの妙薬」 2012年7月17日

スイスイと通れます 晴れて白い雲がまぶしい夏の日差しでも、ソフィアート・ガーデンの中は木漏れ日が射す程度で、直射日光で地面が暑くなることはありません。そのためか、日差しの強い日ほど、かんかん照りの場所とガーデンとの温度差は際立ちます。

陽の高い時間に、ガーデンの小屋に向かう途中でバイパス沿いの店舗に買い物に立ち寄りました。国道は例によって数珠繋ぎですが、一本裏の道はほとんど車の姿もなく快適に走れます。

軽井沢では車の冷房は使わず窓を開けて走るのですが、真夏の日差しもあり車中は暑く感じます。車の温度計が30度を指しているのに気がつき、驚きました。真夏でも30度を超えることはめずらしいのです。出張先での暑さと冷房、外食で、私は最近少し体調を崩していましたので、この暑さで再び具合が悪くなってしまいました。

オカトラノオは群生します 用事を素早く済ませたものの、車に戻ると苦しさでそのまま動けなくなってしまいました。

ガーデンまでパートナーが車を走らせましたが、国道18号で31度だった気温が、ガーデンにつながる小道を抜けていくうちに、5分もたたないうちに8度も下がり、23度になってしまったようで、車の温度計が壊れたのではないかとパートナーが笑いながら話していました。

私は返事もできないほど苦しかったので、小屋のすぐ横に車を止め、車の窓を開け放って涼しい風を通しながら、そのまま車中で横になって休んでいました。先ほどまでの強い日差しと暑さは姿を消し、強烈な陽の光は、無数の木の葉で濾過された木漏れ日となってガーデンを覆っています。

車で休んでいると、ミヤマホオジロのやさしい声が耳に響きます。最後の語尾が「〜?」と問いかけるかのようなやさしい囀りです。私の耳には、「どうしたの? どこか具合が悪いの?」とやさしく問いかける声に聞こえます。その声に混じって、静かだったウグイスが次々と鳴き始めます。車の中で横になっていると、普段はあまり眺めることの少ない大空に、自然と目は向かいました。

空が真っ青 大きなニレの木のてっぺんでは葉が風によそぎ、翻ってせわしなくチラチラと光ります。
万華鏡のきらめきを見せる木の葉の動きとは対照的に、青空に浮かぶ白い雲は、あたかも時が止まったかのようにじっと動きません。空を眺めているうちに、だんだん気分も良くなり、呼吸が楽になってきました。

先ほどまでは、全く起き上がることさえできなかったのが、あまりにも目の前の木漏れ日が美しいので、どうしても車から降りて眺めたくなりました。いつの間にか、先ほどまでの具合の悪さを忘れて、立ち上がって普通に歩けるようになっていました。

ガーデンにたくさんあるヤマアジサイはどれも今が最盛期で、特に美方八重(ミカタヤエ)というアジサイは、空の青を映したかのような空色です。写真に撮りたくなってカメラを片手にガーデンの中を歩くうちに、ふと、辺りに漂う良い香りに気づきました。何の花の香りだろう、と、周りの草花の香りを身を屈めて嗅いでみても、その香りの源ではありません。

パートナーの育てるヤマアジサイ その香りは、モミやヒノキなどの針葉樹の落ち着いた香りとは異なり、ユリやバラの花にも似て華やかで、レモンバームを思い起こさせる清涼感もあります。桃の実のようなフルーティーな甘さも少し混じります。ガーデンにはウバユリやヤマユリ、野ばら、自生の香草、プラムの木もありますので、それらの香りが土や苔やキノコ、木や草や花などと風で調合されて漂うのかもしれません。

ガーデンに漂う香りは、季節という自然の調香師がそのときの気分で生み出しては消えていきます。時たま風に乗ってくるその香りは、香水の名作を創りだす優れた調香師がブレンドした、幾種類ものエッセンスから生まれる香りの芸術と比べても、決してひけをとらないものです。今日の香りの調合を「ソフィアート・ガーデン真夏の風」と名づけ、私は傑作の拍手を贈りたいと思います。

このアブはスズメバチの衣装?で身を守る こうしてガーデンを深呼吸しながら一回りするうちに、すっかり体調が良くなっているのには我ながら驚きました。歩けなかった私がニコニコ笑いながら元気に小屋に入ってきたのでパートナーも驚いていました。リラックスして深呼吸することと、心からの感動が、体調の悪さもすぐに癒してしまうようです。

リラックスできる場所というのは人によって異なるでしょう。まだガーデンのない頃ですが、仕事の関係で何人かの営業担当の方が弊社にいらっしゃった際に、皆がゆったりとくつろいで楽しく打ち合わせしましたが、若い営業担当の方は都会で生まれ育ったためか密閉空間でBGMなどがないと落ち着かないらしく、窓を開け放し鳥の声の響く静かなオフィス環境に少し戸惑っている様子でした。

すでに実を結び来年に向う 海の潮騒の響きと磯の香りで落ち着く人もいれば、川辺のせせらぎと水しぶきでリラックスする人もいるでしょう。畑のような日当たり抜群の環境が落ち着く人もいます。知り合いの、賑やかな夜の街が好きな不動産業の社長は、都会のネオンサインを見ると落ち着く、と笑っていました。心体のバランスを整えてくれる環境は、人によってそれぞれ違うようです。

私はガーデン以外では、大きな本屋(上質の古書を扱う手入れの行き届いた古本屋も含め)にいるとリラックスして、それこそ一日中でも楽しめます。本を眺めるだけでなく、書籍の紙自体の匂いが好きなのです。

天井の高いレンガや石づくりのビアホールの賑わいも好きですし、家電量販店のような人工的な素材や騒音に溢れた空間も、実は妙に落ち着きます。

パートナーはクラシック音楽鑑賞を昔から趣味としており、東京在住の折には演奏会に頻繁に行っていました。本人が言うにはコンサート会場の空気が好きで落ち着くとのこと。また、美術館や大学などの図書館もリラックスする空間だと言っています。

心の深くに入り込む「香り」と「響き」という見えない存在。その場に居るだけで自然にリラックスし、思わず深呼吸したくなる土地や空間は、その人自身にとってかけがえのないものと言えます。私にとってソフィアート・ガーデンは、香りと響きで文字通りの癒やしを瞬時に与えてくれる妙薬です。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第62話 「香りと響きの妙薬」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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