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■第113話 「雪の足跡」 2013年2月2日

明日2月3日は節分です。豆を撒いて鬼を追い払い、翌日の立春を迎えます。暦の上では春の到来です。

先日スタックしました 春と言えば桜です。学校の教科書では「桜は4月」と教わりましたが、沖縄ではこの季節に緋寒桜が開花を迎え、北部の山間部から咲きはじめ徐々に南下します。スタッフMの実家にも緋寒桜があり、2月には明るい桃色の花が庭先を飾りました。

これから春に向けて、桜はもちろん、梅、桃、杏などの開花の便りを耳にするようになります。冬を耐え忍ぶ人にとって、春は待ち遠しいものでしょう。冬を楽しむ私も、毎日、雪の白と大地の黒というモノトーンの中で過ごしていると、そろそろ春の花の色や木々の新緑も見てみたい気持ちに駆られます。

軽井沢の桜の開花は3ヶ月先の5月はじめ頃です。標高1000メートルの高原の桜は、優しい薄紅色のオオヤマザクラです。コブシの白い花と一緒に咲く年もあり、淡い紅白の花霞が山を一面に覆う様子は春の夢のようです。その前に、ガーデンでは馥郁たる香りを乗せて白梅が咲きます。この香りには学生時代の思い出があります。

春はいずこ? 東京で学生生活を送っていた頃、2月に静かな大学の構内を歩いていると、どこからともなく薫る上品な香りに、思わずあたりを見回しました。

香りの主は、キャンパスに何本かあった白梅と紅梅です。私の出身地では梅の木を見かけたことがなく、初めての梅花の香りは、春を待つ2月を象徴する記憶として強く印象に残りました。

2月は冬という白い画用紙を目の前にしながら、春を描こうと想像力が膨らみます。 早春の予感に満ちた一筆は、透明水彩画のような、ごく淡い色と香りで描くと似合いそうです。

とはいっても、ソフィアート・ガーデンを見渡しても、どこにも春は見つかりません。それどころか昨年の節分は、最低気温が年間で最も低い、氷点下18.6度でした。軽井沢は4月までこんな調子で、我が物顔の冬が長々と居座り続けます。目の前には氷と雪の世界が広がる中、ニュースで「暦の上では春」「桜の開花前線」などの言葉を耳にするたび、現実ではなく物語の世界にいるように感じます。

ウリボウの足跡? そんな冬の楽しみは、自分で見つけることにしましょう。白い庭を歩き回りながら目を懲らすと、面白いことに気がつきます。ガーデンの雪には、私どもがいない間のお客様の訪問が、ちゃんと記録されているのです。ではさっそく、観察してみましょう。まず、これは誰の足跡でしょうか。

真っ直ぐにガーデンを横切る深い足跡は、体重が比較的重めの生きものであることを示しています。よく見ると蹄があるので、イノシシであることがわかります。雪の中で子供のイノシシが、単身で歩いているのを何度か見かけましたが、そのウリボウの足跡かもしれません。

他にもいろいろな足跡があります。綱渡りをするかのような直線を描く足跡はキツネです。深い雪に足をとられてヨタヨタと右に左に歩く足跡はタヌキでしょうか。ガーデンの近くの小道には、散歩で訪れた犬や人の足跡も残されています。靴跡の大きさや歩幅で男性か女性かもだいたい分かります。

大小さまざま 雪を爪楊枝でひっかいたような、ちいさな足跡は、ソフィアート・ガーデンの主役である小鳥たちが残したものです。鳥の歩き方には、ホッピング(両足をそろえて跳ねる)と、ウォーキング(交互に足を出す)があります。

コガラやシジュウカラ、ヤマガラといったカラ類たちがぴょん、ぴょんとホッピングしたり、時には羽を雪に打ち付けて羽ばたいた繊細な軌跡も残っています。

もう少し大きな鳥、たとえばキジやキジバトはウォーキングをしますが、ツグミの仲間は、ホッピングとウォーキングのどちらでも歩くように見えます。「だるまさんがころんだ」のように、何歩か歩いてピタリと立ち止まるのも、ツグミの特徴です。

冬にガーデンの近くの川辺で遊ぶセグロセキレイやキセキレイは、ちょこまかとしたウォーキング派で、ときおり立ち止まっては尾羽を上下に振ります。ガーデン脇の小道を私どもの車がゆっくりのろのろと通ると、セキレイたちは、ちらりと横目で車を眺めつつ道の真ん中に居続けます。この道は、私ども以外の車はほとんど通らないため、安心できる場所なのでしょう。

とても小さいテンかイタチ? 私どもが仕方なくじっと車を止めて待つ様子を見て、「この、大きなのろい動物は、こわいものではない」とくつろいでいます。しびれを切らした助手席の私が車を降りて、道を占有するセキレイたちに「すみませんが、少しの間だけ道をあけてもらえませんか」とお願いすることになります。

青く晴れ渡った空の下で、しばらく雪の足跡ばかり探してガーデンを歩きまわっていると、まばゆい雪の反射で雪目になりかねませんし、日焼けもしそうです。庭のお客様の足跡観察はそろそろ終わりにします。

小屋に戻ろうとすると、人なつこいコガラが、私の近くにある木の枝にとまって、黒い瞳でじっとこちらを見つめていました。目が合うと「ビービー」と鳴き、おいしいお土産を催促します。しかし、つい油断して、落花生のかけらをポケットに入れていなかったため、プレゼントが何もありません。

「ごめんね、いま、何も持っていないの」と申し訳ない顔で両手を広げて見せると、私のひろげた手の平にふわりと乗って、手の平を小さなかわいい嘴で軽くつついて、ちょっと不満そうな顔で飛び去りました。毎日せっせと訪れてくれる羽の生えたお客様たちに、うっかりしておもてなしを忘れてしまうとは、全く面目ないことです。

ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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