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■第111話 「冬の群れ」 2013年1月19日

圧雪で車の腹を摺ってしまいます 大寒の頃は、寒さに磨きがかかります。軽井沢の最低気温も氷点下13度以下の日が続き、一日の平均気温は氷点下7.7度まで下がっています。もっとも、この時期は仕事で首都圏を行き来することが多く、都会の乾いた寒風に思わずマフラーとコートの襟を引き寄せてしまいます。

深夜、軽井沢に車で帰る道中は、冬の真ん中にいることを最も実感するときでもあります。雪明りを受けて、けわしい妙義の岩山がほの白く夜空の闇に浮かぶのを横目に、くねくねとした峠道に細心の注意を払いながら帰路をたどります。

道路が濡れたように真っ黒に見えるところは、ブラックアイスバーンと呼ばれる凍結路面です。日中の雪解け水が乾かないまま凍っているため特に滑りやすく、道路というよりスケートリンクだと思った方がよさそうです。私どもの車はもちろんスタッドレスタイヤですが、それでもスリップの恐ろしさを知っている身として過信はできません。

プレゼントはパートナーの役割 スキーシーズンには、滑走のスリルを公道で味わうような無謀運転をしている車をよく見かけますし、実際に事故を起こしている車も目にします。冬の峠道を甘く見ると、とても恐ろしい結果が待ち受けています。

安全運転は運転者にまかせて、助手席の私は車から夜空を見上げることにしましょう。頭上には闇と光で描かれた星の川が静かに横たわり、美しいオリオンが仁王立ちする壮大な世界が目にとびこんできます。漆黒のスクリーンは、太古から天空の世界を映してきましたが、この時期の澄んだ夜空こそ、最も鑑賞にふさわしい屋外劇場です。外で過ごすにはあまりにも寒いのですが。

出張の間、留守にしていたソフィアート・ガーデンを訪れると、どこかで誰かが、すぐに私どもの姿を見つけ、遠くから集団で小鳥たちが飛んできます。口々に「待っていたよ!」「はやく、はやく!」「ずいぶん留守が長かったね!」とでも言うかのようにかわいい鳴き声で歓迎してくれ、ガーデンの木々はにぎやかになります。留守を詫びながらいつもの籠をかけてヒマワリの種を乗せると、強い個体から順番に、皆が序列を守って一粒づつプレゼントを受け取り、近くの枝に持ち運んでおいしそうに食べています。

氷柱は日々太く長く成長中・・・ カラ類は冬の間、日中は混群を形成してテリトリーを周遊します。混群のメンバーは、シジュウカラやゴジュウカラ、ヒガラ、コガラ、ヤマガラなどですが、そこにコゲラやエナガなどもたまに混じります。ガーデンのまわりの雑木林で何か小さな変化があれば、群れの誰かがすばやく察知し、気づきは時をおかず波紋のように混群全体に伝わります。

小鳥たちには、敏感なセンサーを常に働かせて生きています。一羽だけのときも、ほんの少し何かが動いただけですぐに気づくほど繊細ですが、さらに集団になると、見えないものを見る超能力のようになります。目に見えないほど遠くで何かが起こっても、群れのセンサーはすぐに把握して混群を動かします。

自然界の無常の中で生きる彼らは、一つのことにこだわりすぎることはありません。人の給餌は当てにならないことを知っていますのである程度プレゼントを受け取り終えたら、ヒマワリの種をたくさん残したまま次のテリトリーへ素早く集団移動します。一カ所で満足してしまうより、集団としていくつもの糧探しのルートをもっているほうが全体の命をつなぐためには有効なのでしょう。

厳冬期の食料が乏しい時期だからこそ集団でいることで微細な変化を見逃さず、強欲にむさぼるのではなく、たまたま恩恵があっても過信せず、慢心、強欲も抑え、ほどほどで満足して全体を活かす、という生き方は、冬の厳しさを生き抜いていくための合理性といえるかもしれません。

ひるがえってヒトはどうでしょうか。チームプレイにおいて、その精神を「ワンフォアオール、オールフォアワン」ということばで表現することがあります。チームで戦い勝つために、組織の強さのために、こうした精神論は意味づけられますが、私は小鳥たちの生き方からその意味を探ってみたいと思います。

都心も雪が積もっていました 冬の混群は単なる集団ではありますが、結果としてはある目的によって集まったチームのように機能し、遺憾なき強さを発揮しています。混群は危機的な状況を「生き抜く」ために結成されたテンポラリーなチームであり、本能のなせる偉大なしくみといえるのではないでしょうか。

カラ類の混群チームは、全体のために誰かが犠牲になるというものではありません。小鳥たちは個々でも優れた存在ですが、各々が生き延びようとする力が群れになることによって、さらに全体の生きる力を高めます。個々が研ぎ澄まされた危機意識を保ち、いかなるときも楽観性を失わず、したたかでしなやかなチームを結成して命懸けの難局を乗り越えて冬を生き抜きます。普段、それぞれが自分のあたまで考え最適な解を出す鍛錬を怠らず、自分の生存のために何が優先するかを瞬発力で判断しています。

私どもは組織という側面から企業活動を考え、関わることが多いのですが、馴れ合いや人任せの判断、目的のあいまいな行動の多い組織はやはり弱体化しがちです。また、組織のために、という大義名分で我を忘れることもありがちです。しかし優れた組織は、チームである以前に、一人一人が自主性を保ち、生き残るためにしたたかな個であるからこそ、組織も柔軟で全体も強く勝ち残っているように思えます。

大気も大地も凍る大寒に、それぞれの経験と智恵、体力に応じてチーム力を遺憾なく発揮する冬の小鳥たちの混群は、ソフィアート・ガーデンが誇る最も強いチームなのです。

ソフィアート ・ ガーデン物語
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4


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メモ(本文とは直接の関係はありません)
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