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■第32話 「一流の庭師」 2012年5月23日
花や木の実は、何のためにあるのでしょうか。
もちろん、その植物の種の繁栄のためにあるに決まっているじゃないか、と思われることでしょう。
では、もう少し踏み込んで、植物の声に耳を傾けてみましょう。 山桜の実は小さいサクランボが上向きにつきます。
これは、鳥に食べてもらうために、見つけやすく食べやすいように、という理由が隠されていると、植物に詳しい人から聞いたことがあります。
本当でしょうか?
ちなみに、ヤマボウシの実も、同じように上向きについていますが、私どもの自宅のヤマボウシの実は巨大なため、重くて下向きにぶら下がることも多いです。
しかし、やはり木は、実を鳥に食べてもらいたいと思っている、という感じはします。
ちなみに、自宅のヤマボウシは樹高、樹冠ともに5.6メートルはあります。大きな実が毎年、たぶん千個単位でつくと思います。
その際に、かならずサルどもが来襲し、そしてスズメバチをはじめとする蜂軍団、ヒヨドリやオナガなどの中型の鳥、そしてメジロなどが絶えず訪れ、一番おいしくて熟した実から食べていきます。私ももちろん、長い収穫ばさみを手に、ヤマボウシの実、獲得競争に参戦します。
蜂やヒヨドリは、どうも一口だけかじって終わりのようで、私がせっかく収穫しても立派な実にはかじり跡がついていることが多く、がっかりして土に戻してしまいます。
とにかく欲がないというか、蜂や鳥はそのような食べ方をします。しかし、こうした欲の少ない食べ方は、当の植物にとっては大事なことなのでしょう。
イチイの実も、赤い実をたくさんつけます。私はつまんで外側の甘いゼリー状の部分を食べて、中の黒い種子は有毒ですのでポイッと捨てますが、今度はヤマガラやシジュウカラはその黒い種子を食べます。
私がつまみ食いをしなくても、外側の赤い部分には目もくれず、中の黒い種子しか食べません。
ヒヨドリなどは丸呑みですが、黒い種子は排泄に含まれて土に戻り、イチイの実生の発芽につながります。自然は良く出来ています。
樹木のうち、そうして鳥の消化器官を経て土に戻らないと発芽しないものもあります。イチイは実を、私やヤマガラに食べてほしいのではなく、ヒヨドリなどの発芽を助ける鳥に食べてほしいのでしょう。
ヤマガラはエゴノキやハクウンボクの実が大好きです。冬に私どもが提供するヒマワリの種は言うに及ばず、かなり好物である落花生よりも、このエゴノキやハクウンボクが好きで、秋の実りの季節になると、これらの木に来ては、それこそ目の色を変えて枝や実にぶら下がり、サーカスのようにキャッチして食べます。
これらの実には、エゴの名の由来でもある「えぐい」エゴサポニン(名前通りシャボンのように泡立つようです)という有毒の成分があり、人間はもちろん、他の多くの動物や鳥(例外としてカケス、キジバトなどはエゴの実を食べるそうですが)も食べられないものです。しかし、ヤマガラは、地面に埋めて貯食したり成熟を待つなどして、上手に毒を抜き、それはおいしそうに食べます。
そのさいヤマガラは、だいたい石垣や木の根元にエゴノキやハクウンボクの実を埋め貯食に励みますが、頭の良いヤマガラでもたまに忘れて、あちらこちらからこうした埋められた実による芽生えを見ることが出来ます。こうして出来たエゴノキの天然林もあるそうです。
離山通りなどを散歩すると、閑静な別荘地の浅間石の間から見覚えのあるハクウンボクの実生苗の葉がよく顔を出しており、何メートルにも育っている場合もありますが、たいていは管理の人が掃除の時に切ってしまうようです。
それでも毎年、あちこちで出てくるのを見ると、あのヤマガラがうれしそうにこの実をくわえて、一所懸命に地面に植えている様子が目に浮かび、私どもはつい微笑んでしまいます。
ソフィアート・ガーデンにもあちらこちらからこうしたヤマガラが植えたハクウンボクやエゴノキが出てきています。 また、リスやカケスはどんぐりを貯食して、同様に実生のコナラやミズナラの林を作っていきます。
鳥や小動物だけではなく、昆虫も植物にとっては大事なパートナーです。花は、花粉や蜜をほしい蜂や蠅、その他の虫に来てもらえるように、色や形、香りで受粉のための誘惑に勤めます。マルハナバチは忙しく、一時すら休むことなく花から花へ飛び回ります。写真撮影を試みた人は、その忙しい動きに驚き困ってしまうことでしょう。
また、ガーデンにはニワトコがたくさん自生しています。小鳥の止まり木のようないい形と太さで、小鳥を健康にする木とも言われます。
ニワトコは今、花盛りです。この花は私にとっては淡い香りですが、ある種の虫(ヒメアカハナカミキリ?など)にはたまらない魅力があるようで、同種の虫のたまり場になっております。きっとニワトコの誘惑は、もっぱらその虫に効くようです。
ちなみにニワトコは接骨木とも呼ばれ、人間の外科的な打撲などに湿布すると効くようですので、人間にとっても有用木です。
ソフィアート・ガーデンにはたくさんの種類のスミレが咲きますが、そのスミレの種は蟻が運ぶことで知られております。蟻たちは働き者ですので、早春は庭中がスミレの花のブーケで彩られます。他にも、種の繁栄のためには欠かせない役割を担う虫を大事にしている植物も多いと思います。
人間は植物を枯らしたり、あまり上手に育てられないこともありますが、植物のパートナーとして選ばれ、その実を託された生きものたちは実に有用な庭師です。つまり植物が喜ぶことを知っており、上手に植えて育てるエキスパートであります。私も、こうした生きものを見習って、少しでも上手に、植物に喜んでもらえるような庭の手入れをしたいと思っております。
『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第32話 「一流の庭師」
有限会社ソフィアート
スタッフM( 竺原 みき )
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