>> ホーム
 >> 会社概要
 >> 事業内容
 >> ソフィアートの研修
 >> 代表者プロファイル
 ソフィアート・ガーデン物語
  >> 序 「案内係のMです」
  >> 第11話〜第20話へ
  >> 第21話「小鳥の性格」
  >> 第22話「小鳥の友情 2」
  >> 第23話「棘と蔓」
  >> 第24話「蜂の芸術」
  >> 第25話「街の木」
  >> 第26話「車中の音楽」
  >> 第27話「小鳥の感情」
  >> 第28話「招かざる客」
  >> 第29話「お茶の時間 3」
  >> 第30話「初夏の訪れ」
  >> 第31話〜第40話へ

 >> 連絡先
 >> Coffee Break


ソフィアート・ガーデン物語    >>前の物語へ >>次の物語へ

■第26話 「車中の音楽」 2012年5月15日 番外編(その5)

前回は、軽井沢から東京の往復の往路について書きました。今回は復路です。 東京で日帰りの用事を終え、車で帰宅するのはいつも深夜になります。夜の道路は危ないことも多いので、より細心の注意が必要です。

車のお供 日中は混むため避けることの多い首都高速も、夜はスムーズに走行できます。東京オリンピックにあわせた突貫工事で造ったと言われる首都高は、無理矢理な設計も多く、まるでソフィアート・ガーデンで曲芸飛行を繰り広げる小鳥たちのような無茶な運転も多いため、傍で見ていてヒヤヒヤさせられます。

しかし、都会の高層ビルのきらめく灯りと、自動車のテールランプが交差して、宇宙遊泳のような楽しい時間でもあります。

夜は樹木ウオッチングもできませんので、もっぱら車中では音楽を聴いて楽しみます。私どもはそれぞれが学生時代からクラシック音楽(私はもう少し幅広く、名曲だと思えれば演歌やポップスも聴きます)を楽しんできたので、共通する趣味でもあります。車で聴くCDはいつもパートナーが選んでおります。

上手な奏者でないと退屈・・・ 夜の首都高によく似合うのは、ヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」(サヴァリッシュ指揮、フィラデルフィア管弦楽団演奏の定評のある盤)など、スピード感のあるエスプリの効いた名演による現代音楽でしょうか。ちなみにヒンデミットの「前庭に最後のライラックが咲くとき」は、私は学生時代に歌ったことがあり、好きなメロディと雰囲気です。

ほかには「音のイルミネーション」を感じさせるようなペライアやツィメルマンのショパンも魅力的です。

夜の高速道路での眠気覚ましはなんと言ってもオルフの「カルミナ・ブラーナ」でしょう! 原始的な生命力が爆発する音楽と一緒になって、歌って騒けば、気分爽快です。

関越道を抜け、上信越道にさしかかると、道はますます暗くなり、車の数も少なくなります。軽井沢に近づいてくると、霧が立ちこめることも多く、特に夜の妙義山の切り立つ稜線が月明かりに浮かび上がるシルエットは、昼間とは違う荘厳さに満ちており、絵画的な風景の一つです。

ガーデンはいろんなキノコが顔を出しますが、食べません 昼間の都会の喧噪から抜け出して、そのような厳しい自然の懐に入り、暗い夜道を帰る時、霧の中に見え隠れする幻想的な妙義山にぴったりなのがブルックナーです。
ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番やペルリオーズの幻想交響曲も、このあたりの雰囲気に合いますが、やはり大自然と言えばブルックナーですね。

雪を頂く月夜の妙義山は、ブルックナーの交響曲が調和します。
息の長い雄大なフレージングと、深い森に永遠にこだまする鳥の声のような繰り返しの余韻、まさにブルックナーの交響曲が持つ独特の空気感と透明な精神性は、人を安易には寄せ付けない険しい修験者の山にふさわしい世界です。

そして、このところよく聴くのが交響曲第6番です。演奏会では取り上げられることの少ない、比較的小さな曲ですが(それでも60分です)、味わいのある曲です。 また、ブルックナーの交響曲第4番は、最初の楽章でシジュウカラの「ツツピー」というかわいいさえずりが、メロディの中に何度も現れます。

他にも、これは鳥の声に違いない、というメロディや遠い山並みを渡ってくる風の音、厳冬期の澄み切った大気に輝く満天の星、という大自然のもつ音を彷彿とさせ、「ハルモニア・ムンディ(天体の音楽)」とはこういう音楽を言うのではないかと思います。

この時期は山野草広場のクライマックスです 厳冬期の雪と氷の季節は、北欧のシベリウスの曲に共感を覚えます。 秋のドライブでは、ブラームスの2つのピアノ協奏曲や弦楽六重奏曲、そしてチェロ・ソナタが聴きたくなります。

季節は一変して、真夏のかんかん照りの真昼間にはイタリアものの出番です。血の気の多いストーリー展開とは裏腹に甘美なメロディが印象深いヴェリズモ・オペラのアリアや、ナポリタン・ソングは、まばゆい太陽にぴったりです。ディ・ステファノの明るい、輝きのある声にあわせて、適当なイタリア語で大声でいっしょに歌う私(スタッフM)にパートナーは苦笑しております。

車中での選曲ばかりを書きましたが、壮大な交響曲は一人で聴くにはちょっと重くて疲れます。パートナーが出張中に私一人で聴く時は、バックハウスのピアノやデュ・プレのチェロなどの器楽曲やコンチェルトなどの静かな小編成の曲が中心です。モーツァルトやバッハ、ハイドンも好きです。普段は海外のインターネットラジオなどで、インスツルメンツ中心の音楽配信で好みの曲をBGM代わりに聴いています。

スジグロシロチョウは15分ぐらいじっとしていました 再び、話を東京からの帰途に戻しましょう。ようやく碓氷峠を越え、軽井沢に入ると、この時期でも夜は気温が零度近くになることもあります。先日は5月だというのに氷点下になってしまいました。この差が厳しいと感じることもありますが、往路で先送りした時間を巻き戻し、また普段の季節感覚に戻るためには、このぐらいのギャップは仕方ありません。

頻繁に仕事で往復することも多い軽井沢−東京間は、わずか車で片道2時間の距離ですが、私どもにとっては風景や音楽、そして会話を楽しむひとときでもあり、全く疲れを感じることのない、いきいきとした大切な時間なのです。


 『ソフィアート・ガーデン物語』 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )


関連する物語
  >> 第26話「車中の音楽」  >> 第37話「生命の泉」  >> 第78話「小鳥や芸術」  >> 第90話「芸術の秋」 
 
 
Copyright (C) 2003-2012 Sophiart Inc. All Rights Reserved.