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■第25話 「街の木」 2012年5月14日 番外編(その4)

今回は少し遠出をしてガーデンの外に出かけてみましょう。軽井沢から碓氷峠を越え、上信越道、そして関越道を通って東京まで160キロの車の旅です。

輝く妙義山 標高1000メートルから車でくねくねと曲がる峠道を下っていくと、高原の穏やかな景色から一変して、群馬県側の妙義山など、雄大で荒々しい岩山の風景が広がります。安全運転はパートナーに任せて、私はもっぱら樹木観察です。

歩く早さとは違い、車窓からは流れるようなスピードでしか樹木は見られませんが、私はここ10年ほど樹木観察を趣味としておりますので、こういうときは一瞬で樹種や状態を見分ける「動体視力のトレーニング」として楽しんでおります。

軽井沢駅と横川駅は直線距離にして10キロ弱ですが、高低差は550メートル近くあります。横川周辺では杉の人工林が多くなります。杉林の黒々とした風景に、ところどころに雑木が混じって季節を感じさせてくれます。

軽井沢ではまだ芽吹きの状態のミズキが、麓では真っ白い花を満開に咲かせ、同時に藤や桐の紫色の花が黒っぽい杉林の樹冠に優雅に浮かび、ニセアカシアの白い花も藤のような房を垂らしています。この時期は車でほんの30分ほどで気温も数度から20度くらいまで上昇し、あたかも2ヶ月ほど季節を早送りするような気温と景色の変化に、いつもおもしろさを感じます。

上信越道や関越道など、高速道路の街路樹からも、季節の変化が感じられます。コブシやサザンカ、ムクゲやウバメカシ、そして大きなケヤキやアラカシなど、多くの樹木が高速道路のオアシスのように心を楽しませてくれます。

街路樹は、騒音を緩和したり排気ガスを浄化したりというだけではなく、きっと運転手の心を和ませ、疲れを和らげたりすることにも役立っているでしょう。とくに職業で長距離を運転する人々が、長時間過ごす道路で、季節を感じたりほっとするためには、街路樹はとても大事な役割を担っていると思います。

街路樹ウオッチは楽しい 一般道で大渋滞があったときにも、この樹木観察の趣味があれば昼間は結構楽しめます。川越街道はいつも渋滞していますが、その分、邸宅の庭木や街路樹をゆっくり観察して楽しめます。武蔵野の面影を残す地域では、奥深い造園の文化が根付いており、すばらしい景観の地域も若干ですが残っています。

昔ながらの手入れされた高生垣などの屋敷林は、道行く人に美しい街であることを伝えるだけでなく、家屋を台風や火災、地震災害などから守るために必須の財産であっ たことがわかります。私は、こうした住む人の人柄や知恵、そして手入れをする職人の技がつまった、古い家屋のよく手入れされた庭を車窓から眺めるのが大好きです。

一方、比較的新しい住宅地でも、おしゃれな家屋と調和するよう、大切に選ばれ、手入れされた美しいバラやコニファー類、季節の花で彩られたお庭も、見ているこちらも気 持ちがパッと明るくなり、楽しくて好きです。そして、小さなアパートの窓から、丁寧に愛情込めて育てた鉢植えが見えているのも、住人のやさしい人柄がにじみ出て、 心に残るすてきな風景の一つです。

窓辺や庭は、そこに住む人の心象風景が形になったものであり、その風景は外の世界へとつながっていきます。そして、その心象風景が発するメッセージは、隣近所、地域、市町村、 県や国へとゆるやかに広がっていきます。心の狭い人、広い人、おおらかな人、几帳面な人・・・。形は異なれど、庭や窓辺は、住まい手の心を如実に表す雄弁なメッ セージだと思って見ております。心の鏡とも言えるでしょう。

ケヤキは都会の風景にもマッチする そういう意味で、街路樹は街という生きものが持つ「気」を表しております。

たとえば東京都内の街路樹は見ていて飽きません。中高木と低木、下草の上手な使い分けや、落葉樹と常緑樹の混ぜ方、剪定の方法など、樹木のプロが上手に管理、手入れし ている地域もあれば、植えるべき樹種を間違えたために大きくなりすぎてしまい、手入れというより単なる伐採を繰り返す樹木虐待の風景を目にする地域など、実にさまざまです。

都心部は、景観にマッチする樹種を選び(イチョウやケヤキなど)ダイナミックな建築物と大きく育った樹木が調和して、世界的にもすばらしい景観だと思います。

ところが、場所によっては、排気ガスの多い暑い道路にヤマボウシを植えたり、乾燥したところに地下水位の高い場所を好むカツラを植えて枯れかけていたり、大木になるスズカケノキを電線の 多い場所に植えてひどい伐採をしたり、太くなって樹木に食い込んだガードレールや管理札など・・・。車窓から見る私には、街路樹の悲しげな姿が気の毒でなりません。

四季折々の自然の風景が大都会で味わえます そんな状態を(無関心も含めて)許してしまっている、地域の住人の心の中までも、「気の毒な木」から透けて見えるような気がしてしまいます。

街路樹が、人間の道具としてではなく、生きものとして育てられますように、一人でも多くの人が「木」の「気」に関心を持ってもらいたいと願っております。

私は東京駅周辺で用事がある場合は、その合間に頻繁に立ち寄るスポットがあります。皇居東御苑です。皇居は、都心でこれほど楽しめる樹木観察の場所はないというほど多様な植物が、一流の庭師によって管理されていますので、四季折々の学びや憩いの場として活用できます。

通りがかった管理の人に会釈すると、たまに寄って来て植物のこと を教えてくれたり、皇族の方に関連した植物の話をしてくれたりもします。もちろん野鳥も多く、武蔵野の雑木林を模した二の丸庭園あたりは、ヤマガラやシジュウカラ が小川で水浴びをしていたりなど、秘密(?)のカラ類観察スポットがいくつかあります。

大きなイチョウが鮮やかに色づく ほかにも、都内では明治神宮や日比谷公園も樹木観察のスポットです。また、ホテルでも椿山荘や高輪のプリンスホテルグループの庭園など無料で散策できるすばらし い庭園もたくさんあります。

日本橋三越の屋上にあるチェルシーガーデンは、バラや山野草が豊富で、私(スタッフM)のお気に入りのスポットです。休日に行くときは、おや つとお茶を持参して、都会の真ん中の屋上ガーデンでかわいいスズメたちとティータイムを過ごします。

東京在住の頃は、東京の街中で働き、遊ぶだけで、こんなに庭園や公園が楽しめるとは思いもしませんでした。東京を離れ、軽井沢でソフィアート・ガーデンを作っていく中で、街路樹や庭園観察の楽しさも、はじめて分かるようになりました。

街は、人の生活と文化がいきいきと活気づく場です。一本の街路樹が、多忙な街の人々に自然の恵みを思い出させ、心にうるおいとゆとりをもたらし、美意識を高める力となります。季節を彩る街の木は、街そのものの生命力の象徴のように思えます。私にとって街の木を観察することは、街の「気」を観察することでもあります。


 『ソフィアート・ガーデン物語』 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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