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■第15話 「渡り鳥」 2012年4月30日

人間界はゴールデンウイーク、黄金週間へ突入です。この時期の軽井沢は、それはもう、毎日の一分一秒を、しっかりと網膜に焼き付けておきたいほど美しく変わっていきます。

一輪だけ、そっぽ向いている花が・・・ 4月29日(今は「昭和の日」、かつては「みどりの日」であり元々は「天皇誕生日」)は、軽井沢町内では苗木の無料配布会があり、町役場のまわりは長蛇の列になります。そして、地元の住民たちだけでなく、別荘の住民たちも別荘開きを兼ねて、集まってきており、また町内外の植木屋さんたちがこぞって樹木苗や草花の苗を持ち寄り、安価で頒けてくれる出店が連なります。植物が好きな人々が目の色を輝かせて押し合いへし合い、たいへんな人出になります。

軽井沢町の町民の数は19,000人ほど(2012年現在)ですが、温かくなるこの時期、夏鳥の到来とシーズンを同じくして長期に滞在する人々で賑やかになり、夏の人口は10倍、ピークになるとそれを遙かに超えると言われています。そして秋の紅葉シーズンを迎える頃になると、軽井沢の滞在を楽しんできた人々が、夏の住まいを後にします。そしてゴールデンウイークは、夏とは違い短期間でいっきに人が集まるピークとなります。そういう意味では一年で最も賑やか(を超えて恐ろしいほどの車の大渋滞とスーパーなどの大混雑)になります。静かで落ち着いた、人間より野生動物の方が目立つ?冬から早春の閑散期に比べ、どこのレストランやカフェも、幸せそうな顔の、おしゃれをした人々が料理を前に歓談する姿が見られます。

ニラのような匂いにナツメグの香りと甘み 別荘の多い場所を車で通りかかると、夜などは多くの家が、庭やデッキで、明るい光を輝かせてバーベキューを楽しんだりしています。まだこの時期は夜は10度以下(時には2、3度)になることも多いので、涼しいを通り越して寒いぐらいのこともありますが、楽しむぞ!という気合いと充足感で(そしてお酒の力もあるのか)夜間の屋外の飲食も楽しそうで、見かけるこちらとしても楽しく嬉しい気持ちになります。もっとも私どもは「軟弱者」ですので、夜は怖くて寒い!とばかりに軽井沢の屋外で飲食を楽しむ習慣はありませんが。

この時期の軽井沢は、人間模様も幸せな活気を帯びて一気に花開きますが、ソフィアート・ガーデンの植物や野鳥たちもいっせいに賑やかになります。

そろそろ、オオルリが渡ってくる頃でしょうか。ウグイスやコマドリとともに日本三鳴鳥、とも呼ばれるこの鳥は、美声で知られており、その声がガーデンに隣接する広大な森の中にこだますると、ハッとします。優雅な放物線を描くようにだんだん下がる長いフレーズのさえずりは、周りの空気を神秘的なものに変えます。 顔はちょっと「わる顔」に見え、私が鳥なら「なんか意地悪そう・・・」と避けてしまう感じですが、遠くから見ると、鮮やかな青瑠璃色に真っ白い腹、少し大きめの体、完璧な声、いかにも「幸せの青い鳥」といった風情です。ちなみに、メスはオスとは全く別種に見えるほど地味でかわいらしい感じです。

こんにちは、今年も渡ってきましたよ!(2012年5月1日撮影) また、キビタキもこの時期に渡ってきます。

オオルリが「青の鳥」なら、キビタキは「黄の鳥」です。黄色と黒のコントラストが目立つ、ちいさくて丸っこい、たいへん敏捷な小鳥です。毎年同じ個体が同じ地点に渡ってくるのでしょうか、ソフィアート・ガーデンとその周辺を縄張りとするキビタキはたいへん気が強く、ガーデンの駐車場の開けた空間が大好きで、私どもが地面に打ってある木杭の先に留っているのをよく目にします。

ソフィアート・ガーデンの友だちとは違って、普通、渡り鳥たちは人間には近寄らないのですが、この「気の強いキビタキ」は違います。むしろ飛びかかってきます、というのは大げさですが。

少なくとも、 私Mのことをライバル視しているかのごとく、「ブッブッ!」と不機嫌な威嚇する声を出して真っ直ぐ矢のように飛んできて、近くで急旋回して飛び去ります。目がかなり怖いです。彼らに追いかけられる虫の気持ちが良く分かります。

冬は葉が赤い(色が少し残っています) その日私が、キビタキ色の鮮やかな黄色の服を着ていたのが気に入らなかったのか、ガーデンを我が物顔に散歩する私を侵入者と見なしたのか、ただ単に気が強いだけなのか。もしかしたら、その「気の強いキビタキ」一族は、実は代々私どもより以前からガーデンを自分の縄張りとしてきたのかもしれません・・・。

体の大きなパートナーには怒りませんので、小柄な私を、張り合うにはちょうど良い相手、と見なしたのか、いずれにしても番犬のように気の強い小鳥です。それでも私はキビタキが大好きで、ガーデンの小屋の窓からキビタキが見えると「ああ、うちの番犬が来た」と嬉しくなります。

ちなみにキビタキの声は、私が思うにはオオルリよりも美しいさえずりです。特にこの「気の強いキビタキ」が特別に美声なのか、ソフィアート・ガーデン前方の、東から南にかけてはるかに広がる低い藪の湿り気から発生する霧が、ちょうど温泉や風呂屋の湯気のように声を反射し、美しい残響と余韻を残します。

牛のように草ばかり食べてます あちらこちらでキビタキがさえずると、音の3D、と言うと例えがうまくありませんが、目に見える空間の奥行きと広がりとは別の、もう一つの見えない「音」の空間に包み込まれるような錯覚が起こります。

と書きながらも、私は心の中でキビタキの声を「トットリー、トットリー、トットリー(・・・以下繰り返し)」「ターコヤキー、ターコヤキー、ターコヤキー(・・・以下繰り返し)」と聞きなし、美しい声がこだまする中、ガーデンでキビタキのことを「鳥取」とか「たこ焼き」と呼んでいる風流心のないヒトです。だからキビタキに怒られるのだなあ、と一人で納得してしまう今日この頃です。


 『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第15話 「渡り鳥」 
有限会社ソフィアート スタッフM( 竺原 みき )

 
 
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