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■第12話 「神社の鳥」 2012年4月25日 番外編(その3)
今回のソフィアート・ガーデン物語は、番外編としてガーデンの外に出て神社を歩いてみましょう。
神社の鳥と言えば、どのような鳥を想像するでしょうか。
私の場合は、ヤマガラです。
私どもは旅行で日本各地に行きますが、鎮守の杜のような大木がある場所が大好きです。樹木観察が趣味ですので、そうしたポイントとして神社にもお参りすることがあります。
どのような植物がどのように育っているか、という自然植生を観察していると、私は一人でも何時間でも飽きることがありません。人の手が最小限にしか入っていない自然の植生から、その土地や植物の性質を謎解きするゲームは、正解がないだけに、自分で探求しつづける楽しみを知ってしまうとおもしろくて止められません。もちろん、そのようなところには、昆虫や野鳥がたくさんいて、毎回新たな発見があり楽しめます。藪蚊の多い季節はちょっと苦手ですが。
神社にはたいてい数百年単位で生きる巨木があり、圧倒する姿と底知れない力を示しており、眺めているだけで気持ち良くなります。その土地が、その長い年月の間、度重なる自然災害に脅かされないすばらしい土地であったことも、そうした巨木を通して伺い知ることができます。また、そのような杜には、針葉樹が多く、その実の大好きなヒガラの美しい声が響き渡ります。
そして、私どもが神社を訪れる際、必ずといっていいほど、かわいい声で歓迎してくれるのが、その杜にすむヤマガラです。
ヤマガラもヒガラとともに、針葉樹の森が大好き。比較的西日本の温暖な地域に多い留鳥(渡りをせず年間その場所で生きる鳥)で、大変頭が良く、人懐こい器用な鳥です。やはり昔の人々にとっても、ヤマガラは神社と親密な関係を感じるようで、その昔は、麻の実をご褒美として、ヤマガラにおみくじをひかせる芸を仕込んだ大道芸が有名ですが、現在は鳥獣保護法により野鳥を飼い鳥にすることは禁じられておりますので、今ではその芸当は記録写真でしか見ることはできません。
お賽銭をくちばしで受け取り、小さな小鳥サイズのミニチュア神社の扉を開け、おみくじをひき、封をやぶり、開いてみせるという一連の芸当を、たぶんゲーム感覚で楽しんでこなしているのであろうヤマガラの記録写真が書籍『ヤマガラの芸』に掲載されています。(小山 幸子『ヤマガラの芸―文化史と行動学の視点から』法政大学出版局、2006年)
私どもと仲良しの
ソフィアート・ガーデンのヤマガラ
も、同じように頭が良くいたずら好きで器用なため、さもありなん、という感じがいたします。
近いところの有名な神社では戸隠神社、榛名神社、諏訪大社、明治神宮、遠いところでは伊勢神宮や出雲大社など、いろいろな神社を樹木観察するとともにお参りしてきましたが、たいていヤマガラの声が聞こえてきて、私どもといっしょにお参りしてくれるようにしばらく近くで鳴いているので、ああ、この「場」が歓迎してくれているのだなあ、とうれしくなります。
神社の鳥については、こういう体験もしました。もう何年も前のことですが、奈良を旅した折、私は一人で春日大社の神苑、萬葉植物園で植物ウオッチングを楽しんでいました。社の近くで神妙にしておりましたら、一羽のカラスがどこからともなくトントン、と歩いてきて、なにやらこちらに話し掛けるかのごとく、私とすこし距離をあけて前を歩いています。カラスにしては行儀がよくかわいい感じで、何度もこちらを振り返り、まるでついてらっしゃい、と言う感じでしたので、あとを静かに歩いていきますと、うっそうとした杜から明るい開けた場所に出ました。
そこにはご神木として祀られた巨大な横たわる竜のような木(奈良市指定文化財のイチイガシの老巨樹『臥龍のイチイガシ』)がありましたが、その前までカラスは私を案内し、ふわりと飛んでその木のもっとも良い枝にとまってこちらをじっと見下ろします。
みんな、その木に拍手をうち祈りをささげております。さきほど案内してくれたカラスが、ご神木の枝ではやけに神々しく堂々としており、ご神木とともに人々の参拝を受けている気取った姿が、ちょっとおかしい気持ちと、なんだか不思議な気持ちとで、私もそのご神木(&カラス)に礼をいたした次第です。
そういえば、カラスは熊野神社の鳥として有名です。私どもの住む軽井沢の群馬県境にある峠の熊野皇大神社にお参りした際に、八咫烏(やたがらす)の由来を思い出しました。 ということで、こうしてカラスにも一度だけ案内をされましたが、ヤマガラはたいていどこの神社を初めとする樹木観察ポイントでも、「スィスィスィ」といういつもの機嫌のいいささやき声で合図して歓迎してくれるということで、私どもにとって神社の鳥といえば、やっぱりヤマガラです。
『 ソフィアート・ガーデン物語 』 第12話 「神社の鳥」
有限会社ソフィアート
スタッフM( 竺原 みき )
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