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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録−    >>前の記録へ >>次の記録へ

■2014年3月21日(金曜日)

概況:
最低気温は氷点下2℃前後、最高気温は10℃を超え雪どけが進んだ。大雪で折れ、押しつぶされた灌木や低木がようやく顔を出した。東京では3月18日に春一番が吹く。北日本は大雪や突風など大荒れの天候。軽井沢も穏やかに晴れていたかと思えば強い風や小雨、小雪などめまぐるしく天気が変わる。昨年の春分の頃のソフィアート・ガーデンはフキノトウやアサツキが出て、東の藪からウグイスの初鳴きが聞こえたが、今年の大地の芽吹きはもう少し先のようだ。

樹木:
ソフィアート・ガーデン100種500本の木を紹介していく。今回はエゴノキについて。 エゴノキはエゴノキ科エゴノキ属 。前回紹介したハクウンボクと並んで、ヤマガラがこの実を好む。ソフィアート・ガーデンには、ヤマガラに喜んでもらいたくて、何本ものエゴノキを植えた。自宅にも大きなエゴノキが居間の大きな窓の真正面にある。真っ白い花が下向きに満開になると、良い香りがしてミツバチが盛んに蜜を集めに来る。ミツバチが花を触って受粉が終了すると、ポトリと白い花が落ち、地面には白い星形の花の絨毯か敷かれる。やがてイヤリングのような丸い実が木にたくさんぶら下がり、それが熟すると煎ったコーヒー豆のような茶色い実が出てくる。ヤマガラは初秋(9月の終わり頃)に近づくと、エゴの実の熟する様子を待ちわびるように頻繁にチェックしに訪れる。賢い鳥として知られるヤマガラは「貯食(ちょしょく)」という習性をもっている。エゴの実が熟する頃合いを見計らって、空中で飛行しながら静止する、というホバリングをしながら上手に実を収穫する。収穫してその場で食べることも多いが、まるでおもしろいゲームに夢中になっているかのように貯食に励み、その姿は食べるより貯めることに喜びを見いだしているとしか思えない。「将来」という時間軸を持ち、現在の食欲より未来に向けて蓄えるということを優先している。人間も、これと似た性質があるかもしれない。ソフィアート・ガーデンには、実生のエゴノキがある。これは私どもが最初に仲良くなったヤマガラMくんが貯食のために植えた実から育ったエゴノキである。私どもはこのエゴノキをソフィアート・ガーデンのシンボルツリーとして大切にしている。芽生えてから10年近くたち、樹高も2メートルを超え、のびのびと育っている。このエゴノキが白い花をつけ、実を結ぶときが来れば、きっとソフィアート・ガーデンの未来のヤマガラたちが嬉々としてこの実を食べたり、貯食したりするであろう。そのときは、この白い花の下で、仲良しだったヤマガラのMくんを憶ってお祝いをしたいと思っている。 (参考: ソフィアート・ガーデン物語 第22話 「小鳥の友情 2」  )
実生のエゴノキはヤマガラの貯食行為の忘れ物である。しかし、寿命がわずか数年に届かないかもしれない小鳥の行為は、何十年後に再び、遠い未来小鳥たちへプレゼントとなって実を結ぶのである。

山野草、山菜、園芸種の草花:
ソフィアート・ガーデンの山野草や山菜を紹介していく。今回はアマドコロについて。アマドコロはユリ科あるいはクサスギカズラ科アマドコロ属の多年草。 アマドコロのフランス語の名前は " Sceau de Salomon (ソロモンの印璽(いんじ))" という。印璽とは指輪のことであるから、その意味は「ソロモンの指輪」となる。この指輪によってソロモン王は動物や植物、鉱物などの自然界と話ができる不思議な力を授けられたとされる。
ソフィアート・ガーデンの一角はアマドコロの適地なのか、大株が群生している。たぶん自生であろう。もしかしたらこれはアマドコロではなく、オオナルコユリかミヤマナルコユリかもしれないとも思う。そのうち判明すれば正確な品種名を記したい。
ユリのような葉を上に向けて広げ、その葉陰で宝石を隠すかのように、薄緑かがった壺型の白い小花を下向きにたくさん並んで咲かせる。大株は背が高く、葉や花の重みのためか茎が放物線上にしなっている。薄暗い森の中に群生すると不思議な姿が面白く、また力強い印象を受ける。花の後には丸い緑(のちに黒)のイヤリングのような実をつける。葉が枯れ、黒い実が付く頃は、しなっていた茎もやや上向きに頭をもたげる。
ガーデンの小屋には、このアマドコロ " Sceau de Salomon" を描いたJ.J.J.Rigal の銅版画が飾ってある。アマドコロの力によって私スタッフMも、鳥や虫や植物、そして石や大地と話ができたら・・・という願いを込めて。
(参考: ソフィアート・ガーデン物語  第39話 「お茶の時間 4」  ) 

野鳥:
ソフィアート・ガーデンには大勢の小鳥たちが集まるが、それを狙うタカを見かけることがある。先日もタカがゆったりと飛行して木に止まってじっとしていた。小鳥たちはその姿に気づいていないようであった。パートナーが写真を撮ろうと、小屋のデッキに出て望遠カメラを向けると、遙か彼方のタカは気づいて飛び去った。すると、その動きで小鳥たちはタカに気づき、一斉に警戒モード(キチキチ、などの警戒鳴きをする)で近くの灌木や常緑などの安全な場所にさっと避難した。
今回は結局タカは去り小鳥たちは安全ではあったが、もし隠れる場所がなければ猛禽類やカラスなどに襲われることもあるかもしれない。ガーデンの近くに木がほとんどない広い芝生の庭を持つお宅があるが、そこでは小鳥がカラスにさらわれたという話を聞いた。小鳥が隠れる灌木がなく見晴らしが良すぎるためであろうか。
ソフィアート・ガーデンや自宅の庭は、小鳥たちに安心して来てもらえる庭を目指しているため、小鳥たちが捕食者から狙われにくいような隠れ場所を意識的に作っている。具体的には小鳥が無防備になりやすい場所(水飲み場やフィーダーの近くなど)にシェルターとなる大小さまざまな灌木や常緑を植え、逆にそれらが小鳥たちを狙うキツネ、猫などが潜む場所にならないよう配置や高さに気を配っている。そうした工夫が功を奏したのか、小鳥たちはいつも、私どもの庭で安心して実に楽しそうに活動している。特に、台風や嵐など天気の急変時には、周囲の森から多くの鳥たちが避難するかのように集まってくる。「あそこは安全で楽しい」と、周辺の小鳥たちの間で良い評判を得ているのかもしれない。そうならば嬉しいことである。
このような視点で庭造りをすれば、小鳥たちに愛される庭として、人間も大いに幸せな気持ちになると思う。冬から春先にかけてのソフィアート・ガーデンに訪れる方は、小鳥たちの幸せそうな様子を間近に眺めて驚いた様子で目が釘付けになり、「小鳥がとても楽しそう」とか「小鳥たちが本当に可愛い!」と、嬉しそうな笑顔で話してくださる。そういう時スタッフMもとても嬉しい。小鳥たちも木も草も、虫も人も生き生きと幸せな庭、それが私どもの目指すガーデンの姿である。
(参考: ソフィアート・ガーデン物語 第1話 「安心できる木」  )

虫:
家の中にワラジムシが歩いていたので捕まえて外に出した。先日、朽ちた薪を動かしたら無数のワラジムシが出てきたが、その際に一匹だけ家に入ったのか?ちなみにダンゴムシとワラジムシは似ている。つつくなどの刺激を受けて丸くなるのがダンゴムシで、ワラジムシは丸くならない。軽井沢ではダンゴムシは見たことがなく、生息しているのはワラジムシだけと思われる。地面に朽ち木や落ち葉などがあれば、このワラジムシがどこからともなく集まってきて、食べて土にしている。特に人間や植物に害はなく、ミミズ同様に腐葉土をつくるために不可欠な、森の構成員である。

軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの−
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
文章と写真:スタッフM

エナガの飛翔1 エナガの飛翔2 エナガの飛翔3
まだ雪景色 アマドコロ


 
 
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Sophiart Garden Diary - KARUIZAWA forest garden, wildflower, wild birds and other creatures