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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2014年2月25日(火曜日)
概況:
大雪から10日以上経過。国道は除雪の終盤戦を迎え、別荘などの細い道にも除雪車が入る。毎日最低気温が氷点下10℃前後、最高気温が零℃前後でなかなか雪が溶けず、まだ60cm弱の積雪。積み上げられた所は大人の身長ほどの雪の壁が残る。毎日晴天続きで雪焼け、雪目に注意が必要。毎日、20羽ほどの元気な小鳥たちが庭を飛び回るため心なしか雪解けが促進される。ガビチョウがやけに元気に歌う。青空と白銀の高原に、コガラやヒガラの美しいさえずりが響く。
樹木:
ソフィアート・ガーデン100種500本の木を紹介していく。今回はクロモジ(黒文字)について。
クロモジはクスノキ科クロモジ属 。高級な楊枝の材として有名。枝葉は黒文字油という香料の材料になる。スタッフMの大好きな木で、自宅の庭にもソフィアート・ガーデンにも植えている。クロモジは日当たりが柔らかい方がよく育ち、高木の下で木漏れ日の差すような林の中が適地である。春には黄色い花が咲き、秋の黄葉は透明感のある美しい黄色である。早春に黄色い花が咲く樹木といえば、クロモジの他にマンサク、アブラチャン、ダンコウバイ、サンシュユがある。ソフィアート・ガーデンや自宅庭には、マンサク以外すべてある。これらの花の色を比較すると、アブラチャンは薄緑がかった黄色、クロモジは透明感のある黄色、ダンコウバイは濃い艶のある黄色(黄金色)、サンシュユは明るい黄色、という印象がある。秋にはサンシュユを除いて、いずれも花の色と同じように黄色く黄葉する。ニシキギやカエデ、ドウダンツツジなど赤い紅葉の樹木とうまく組み合わせれば、秋の庭の彩りが豊かになる。常緑ともよく合い、ほの暗い緑を背景にクロモジの淡く優しい光のような黄色い花が引き立つ。
枝は薄い緑がかった色をしており、枯れた部分は茶色くなる。スタッフMは、その茶色く枯れた部分を剪定しても捨てずに後生大事に保存している。なぜかといえば、この枝の香りがすばらしいからである。折って香りを味わうと、こんな上品でさわやかな香りがするものはないと思う。上手に削れば天然自家製の高級「黒文字」になるだろう。
山野草、山菜、園芸種の草花:
ソフィアート・ガーデンの山野草や山菜を紹介していく。今回はアサツキについて。
アサツキはネギ科ネギ属。野菜として販売されているが、ソフィアート・ガーデンには日当たりの良いところに自生(?)している。アサツキは多年草で球根をもっているが、ソフィアート・ガーデンに生えているものは球根らしき根はない。もしかしたらチャイブか、アサツキとチャイブの自然交雑種かもしれない(その昔、外国人の宣教師一家がこの土地に住んでいた頃に栽培したものがそのまま野生化して増えたのかもしれない)。掘り起こして植え付ければ、場所が気に入れば増えていく。いずれにしても味わいはネギそのものであるので毎日適当に摘んで汁物や冷や奴などの薬味として用いることができる。 早春に芽を出し、春にぐんぐん伸びて20cmほどになり夏には黄色く枯れて地上部はなくなってしまう。そこで適当な長さに育ったところで根を残して刈り取り、洗って冷凍庫に入れておけば、一年中、必要なときに薬味として使える便利な山菜である。
食用にする際の参考サイト:独立行政法人国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性」アサツキ
野鳥:
毎日、たくさんの小鳥たちが庭を飛び回る。これだけの大雪ではさぞかし食べ物に困るだろう。普段の雪のない冬より、遙かに多い数の小鳥たちである。スズメは、いつもは近所の自家菜園の地面で何かをついばんでいるが、今や大地は雪に閉ざされている。我が家の庭は、スズメにも人気のスポットになっている。中型のヒヨドリも、ツグミも、ガビチョウも、皆が賑やかに(うるさいほど)鳴いて、木々を飛び回り、歌い、何かをついばみ、そして排泄する。排泄物は温度が高いのか、そこだけ雪が溶けている。またたくさんの鳥たちが歩き回った足跡も、雪解けを促進するかのように溶けている。鳥は火の化身のような存在であり、体温も高く声も大きく元気で、「陰陽」の「陽」そのものである。雪に閉ざされる時は、たくさんの火の化身たちが空から降りてきて、こうして賑やかに応援してくれると、とても心強い。
最近は自宅周辺では見かけないヒガラの美声がよく響く。ヒガラは高原のトップ歌手である。コガラやヤマガラも、少しさえずりモードになっている。目の前の大雪という現象よりも、日差しの変化のほうから小鳥たちは春の兆しを感じ取っているのだろう。
虫:
大雪に濡れないように薪を家の中にストックした(普段は薪ストーブ近くのデッキに10束ほど薪を保管して、そこから取り出してストーブにくべる)。薪の中で冬眠していた小さなカメムシが起き出して飛び回ったので捕獲して外に出した。虫は木等に潜って冬眠し、暖かくなるとすぐに冬眠から覚めて飛び始める。
その他:
軽井沢観測史上最大の積雪から10日以上が経過した。幸いその後は天候も崩れず、晴天の下で雪かきを続けて雪焼けや軽い雪目状態になった。雪かきに日焼け止めとサングラスは必需品である。10日以上ほとんど毎日、仕事の合間に雪かきしている。疲れるが、毎日かなりの運動をしているのと同じように体力が増強される。また、パートナーが近隣の年配のご夫婦の家の除雪を手伝ったお礼にと、おいしい食事やお酒の差し入れをいただいたり、普段食べないようなものも含めて、おいしいものをたくさん食べている。毎日体を動かしているので、お腹が空いて、よく食べ、よく寝るため、心身は健康そのものである。
前回の観察記録で「おそらく当面(一、二週間ほど)車を使うことが無理であろうと予測される」と書いた。一週間目に、町の観察も兼ねて当面の食料品や灯油などの買い出しのため車を使ったが、国道18号は町役場や軽井沢病院などの公共機関の集まる中軽井沢周辺はおおかた除雪が進んでいるものの、実質一車線の部分も多く、さらに歩行者も同じ車道内を歩く。踏み固められた雪が凍って滑り、でこぼこの轍にハンドルをとられ、事故になりかねない状態であった。皆が慎重に譲り合うため、辛うじて事故にならない、という状態である。一方で大型車の交通量の多い18号バイパスはほぼ完璧に除雪されて通常どおりの使用が可能であった。スーパーツルヤに中軽井沢方面から向かう通り(農協通り)も、一日封鎖して除雪をした後にもかかわらず、氷と轍で恐ろしい状態であった。やはり二週間程度は車を使うのは控えたいと思った。スーパーツルヤは駐車場の除雪もしっかりとされており、普段どおり、新鮮な食品が豊富な品揃えで並んでおり、有り難いことである。 仕事や日常生活では、東京方面への出張などの移動は新幹線で問題なかった。郵便や宅配便は大幅な遅延などもあるが大雪から数日で動くようになり、特に問題を感じない範囲であった(宅急便の荷受け停止は大雪後9日間ほど続いた)。軽井沢ICの閉鎖は1週間以上続いたが、こちらは二次災害や事故防止のため仕方がない。
国道や生活道路のメイン部分でも除雪はまだまだの状態で、脇道はほとんど地域住民による対応だけの状態が続いた。しかし、先日「広報かるいざわ」という有線放送で、別荘地などの道も除雪対応するので連絡してほしいと放送された。それではソフィアート・ガーデンに向かう小道もお願いしようと役場に赴いて窓口に相談したところ、順番が空き次第行うということで快く受け付けてもらえた。行政での除雪は無理であろうと諦めていたが、きめ細かい対応に感心した。ただし軽井沢に無数に広がる多くの別荘地は、やはり住宅地より後回しになるので、別荘地に常住している人や滞在していた人は除雪にとても困ったのではないか。twitterやブログなどの情報では別荘地で孤立状態におかれた世帯もあったようで、1週間ほどは、人が歩くだけの細いけもの道のような除雪を自分たちで努力したり、老齢者の独居に対してはボランティアが除雪をしたり、孤立世帯には灯油などの物資を届けたりしたようである。私の住む場所は昔からの住人が多く、15日には大通りまで歩けるように除雪を地域の方がしてくださったので、買い出しなどで困ることはなかった。有り難いことである。
田舎ゆえ、各家庭で1週間ほどの食料備蓄は当たり前のようで、その点はよかった。また今回は停電がなかったのがとても幸いなことであった。もし停電が起こると仕事に支障をきたすし、厳冬期の寒冷地では生死に関わる事態になる。私どもはプロパンガスで調理するし、電気を使わない灯油ストーブや薪ストーブがあるので、停電でも煮炊きや暖を取ることはできるが、風呂は灯油式給湯器とはいえ電気制御だし、水道管の凍結防止ヒーターも電気利用なので、停電の場合は水(湯)利用が困難になる恐れがある。また、情報面でもインターネットが使えなければ仕事の連絡に支障があるし、今回の大雪対応の情報収集もインターネットが頼りであった。もともとテレビはないので見られなくても困らないが、インターネットだけは使えないと仕事でも生活でも支障をきたす。実際、この時期は弊社の決算関係の業務が立て込んでいる時期であったが、メールで大部分は進めることが出来た。
今回は史上まれに見る大雪で混乱は仕方のないこと、と片付けずに、軽井沢の今後の除雪対応に生かすべきである。今後は、大雪が予想される場合は、国道などの幹線道路は降雪が一段落してから本格除雪、というやり方より、降雪途中から本格的な除雪車を稼働させるなど、北越などの雪国のような初動対応をすべきではないか。(なおスタッフMは町の除雪対応を正確に把握しているわけではない。14日の18時頃、私どもが車で軽井沢の国道18号バイパスを通過した際にはすでに積雪30cmほどで、降雪がますます激しくなってきていたが、まだ除雪が始まっていなかったという事実と、周囲で耳にする普段の町の除雪対応から推測しているわけであり、事実とは異なるかもしれないことをお断りしておく。)今回のように一晩で1mの積雪があったら、初期に除雪を開始しても交通は麻痺するかもしれない。しかし北軽井沢方面は軽井沢よりもっと積雪量が多いのに幹線道路の混乱は少なかった様子である。もっとも両者の違いとして、物流の大型車両がひっきりなしに往来する18号バイパスを抱える軽井沢と、冬の北軽井沢方面という交通量の違いもあるだろうが。10年前の2004年12月、今回ほどではなかったが記録的な大雪の最中に、無謀にも軽井沢から草津温泉に日帰り入浴に行った経験があるが、群馬県の管轄道路は雪の最中に除雪車が稼働してちゃんと整備されており、長野県(軽井沢)の管轄になったとたんに除雪がなく雪道で難儀したことを思い出す。大雪が予想される場合の初動対応をどうするか。もちろん自分自身の反省と次への確実な備えも欠かせないが、今回の教訓を軽井沢町の行政は是非検証してもらいたい。
参考:『ソフィアート・ガーデン物語』 第117話 「道を往けば 2」
追記(2/26):大雪から10日以上経て、ようやく仕事も一段落したので、覚悟を決めて(?)まだ除雪されていないソフィアート・ガーデンに向かった。60cmの深さに積もった雪をかき分けて、どうにか、たどり着いた。すると私どもが雪をかき分ける道沿いに、今まで聴いたことのないぐらい、たくさんの明るい野鳥の声が響き、ついには小鳥たちが近くの木に止まってこちらをのぞき込んでいるのが見えた。さらに、私どもの姿を見つけた小鳥たちが、四方の明るい林から一斉に集まって周囲を飛び交い、雪に埋もれて行進する私どもを応援してくれるかのようなそぶりである。「ビービー!」「ツツピ!」「ニーニー!」「ススス!」「ツツツ!」などの様々な声は、私どもは、どの声がどの小鳥だかすぐに分かる。私どもを歓迎してくれる小鳥たちの友情のエールとして聴くうちに、なんだか、心の底から幸せな感謝の気持ちが止めどもなく沸き起こった。「みんな、元気でいてくれてありがとう!」と、小鳥たちに手を振って、息を切らして雪をかき分け、ヨタヨタと歩んでやっとの思いでフィーダーにヒマワリの種のプレゼントを置くと、皆、矢のように(しかし秩序だって)プレゼントを受け取ってくれた。ふっくらツヤツヤと美しい小鳥たちの輝かしい様子。一面の雪と青空と明るい冬の林、そして小鳥たち。ソフィアート・ガーデンは私どもにとっての「聖域」である。光であり、愛であり、喜びであり、調和である。小鳥たちは自然そのものであり、人から食べ物を得られなくても自ら生きている。それを知りながら、私どもはただ感謝の気持ちを捧げたくて、プレゼントをする。大自然への畏怖と見えない力に祈る気持ちである。
小屋の屋根の雪は日の長く当たる南と西側はほぼ落ちており、日の当たりにくい北東側は残っている状態である。屋根には雪止めをしていないため、今日のように気温が上がれば(最高気温8.4℃)雪崩のように一気に落ちるだろう。当面は行政による道の除雪を気長に待ちつつ、小鳥たちに会いにソフィアート・ガーデンへ雪の中をせっせと歩くことにする。
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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