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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2014年2月11日(火曜日)
概況:
立春後の2月は大雪に見舞われた。関東地方は記録的な大雪で、東京は45年ぶりに積雪27センチ超。軽井沢も30センチを越える雪になり、久々の雪かき。幹線道路はすぐに除雪車が出動した。ソフィアート・ガーデンへ向かう小道も雪に埋まり、仕方なく膝まで埋まる雪の中を徒歩で往復した。青空に純白の雪景色が太陽の光を反射して明るい。冬の低い日差しは、庇に遮られることなく家の中まで透る。太陽光の力で昼間の室内は暖房の余熱だけで十分暖かい。
樹木:
ソフィアート・ガーデン100種500本の木を紹介していく。今回はニワトコについて。
ニワトコは、スイカズラ科ニワトコ属。接骨木(セッコツボク)ともいう。骨折の治療に用いたと言われる。軽井沢や碓氷峠など、山の各所で自生しているのをよく見かける。ソフィアート・ガーデンでもあちこちから生えてくる、雑草のような灌木である。余談であるが、軽井沢は寒冷地として氷や雪の競技やレジャー(スキーやスケート)が盛んであり、また冬期は凍結で転倒も多いため、町の病院は骨折などの治療に長けていると噂話程度に聞いたことがある。また町内のリハビリテーションクリニックも、いつも賑わっている。ニワトコ(接骨木)が山にたくさん自生するのは、険しい山に囲まれて平野に比べワイルドな起伏があり、さらに冬は凍結するなど、怪我をしやすい土地故の自然の恵みなのかもしれない。とはいえ、いまどき、民間薬として利用する人もいないだろうが・・・。
また小鳥が健康になる木、とも言われる。これは、枝の形状からの連想ではないか。ニワトコの枝は、小鳥の留まり木として利用しやすい、ちょうど良い太さの素直な枝であり、横に枝が張る樹形である。しかし実際に私はニワトコに小鳥が留まっているのを見かけたことはない。ソフィアート・ガーデンのニワトコは灌木で背が低いため、中高木が好きな野鳥たちは利用しにくいのだろうか。そもそもガーデンには小鳥たちが大好きな木がたくさんあるため、特にニワトコを贔屓にする理由もなかろう。
5月の中頃にクリームがかった白い花房が集まって咲き、森の中で目立つ。花の香りは淡い。一方で西洋ニワトコ(エルダーフラワ−)は甘い香りを放つと言われる。ワーグナーの「ニュルンベルグのマイスタージンガー」ではハンス・ザックスがニワトコの花の香りを歌う。どんな芳香か、となんとなく気になっていたが、ヨーロッパのエルダーフラワーの蜂蜜で作った飲み物を、去年の夏に偶然見つけた。毎年お盆の頃、木村硝子さんの軽井沢の別荘でガーデンアウトレットが開かれる。そこでヨーロッパの雑貨や食べ物などを扱うお店も出店しており、その品を扱っていたのである。ニワトコが軽井沢にも自生していることを話すと、お店の方は驚いていた。試飲を勧められたので一口味わったところ、とても優しい味と香りの蜂蜜ドリンクであった。こんなにおいしいなら、ガーデンのニワトコも試してみたいものだが、軽井沢のニワトコは西洋ニワトコとはちょっと味も香りも違うのではないか。ソフィアート・ガーデンのニワトコはヒメアカハナカミキリという小型の赤いカミキリの虫のたまり場になっている。新芽は食べられるそうだが、いまひとつ食欲がわかないので試したことはない。
参考: 『ソフィアート・ガーデン物語』 第32話 「一流の庭師」
食用にする際の参考サイト:独立行政法人国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性」ニワトコ
山野草、山菜、園芸種の草花:
ソフィアート・ガーデンの山野草や山菜を紹介していく。今回はナギナタコウジュ(薙刀香ジュ)について。
ナギナタコウジュはシソ科ナギナタコウジュ属。薙刀(ナギナタ)のような半月状の紫色の花、そして独特な強い香り(臭気)が特徴である。ソフィアート・ガーデンにも自宅の庭にも生えている。パートナーは、この臭いが苦手なようで、見つけるとすぐに切ってしまう。私は、花自体は良い香りだと思うが、秋に枯れたナギナタコウジュが雨に濡れた臭いは、獣臭のような独特の臭気を感じ、好きな臭いとは言いがたい。それでも紫の花の風情や、今回のような大雪でもへっちゃらの、たくましい枯れ茎が群生する姿を見ると、やはりソフィアート・ガーデンの野草として紹介しないわけにはいかない。自生種として尊重しつつも、あまり増えずに、ほどほどにがんばってほしい野草である。
野鳥:
我が家のウッドデッキにはフィーダーを設置している。普段は、シジュウカラ、ヤマガラなどカラ類が、それぞれ一つがいずつ利用している程度であるが、今回の大雪のような非常事態には、どこからともなく集合してくるため、シジュウカラたちの避難所のようになる。過密状態になると、たまにフィーダーを巡って取っ組み合いをすることもある。ゴールキーパーがゴールを守るように、羽を広げて体を大きく見せて、相手を威嚇する。シジュウカラの場合は、胸のネクタイ状の黒い模様が太くて美しい方が強いようで、それを誇示するかのごとく、両手(両羽)を広げる。鳥の世界も競争は過酷であり、強くて美しい者が有利である。
ソフィアート・ガーデンの小鳥たちも、雪の中でも美しく元気いっぱいである。こちらでは、体の大きなゴジュウカラが優位で、(ガーデンでは数は圧倒的に多いが)体の小さいコガラを蹴散らす。シジュウカラは、どちらかと言えば落ちているヒマワリの種を地面で拾ったり、少し場所を変えてゴジュウカラとバッティングしないようにうまく立ち回っている。またヤマガラは機敏さと、食べ物を隠して蓄える貯食という頭脳プレーで、独特の存在感を示している。
虫:
特に見かけなかった。
その他:
今年は雪が少なくて楽だなあ、と思いつつ、あまりそれを強調すると、いやと言うほどの大雪に見舞われるような気がしていたが、やはりついにまとまった雪が来てしまった。
軽井沢町の幹線道路や町道は、すぐさま除雪車等が活躍して雪による交通渋滞などはないが、別荘の細い道は使う人が自分で除雪することになる。ソフィアート・ガーデンに至る小道は除雪車が入る年もあったが、最近は定住者も居ないため除雪は基本的には行われない。今まで雪で車が通れなくなったことは5年間に一度もなかった(自分の敷地内で雪でスタックして車が2、3日雪に埋もれていたことはある)が、今回のまとまった降雪ではさすがに車は無理だと感じた。そこで、パートナーがせっせと雪かきして道を空けている間に、スタッフMは徒歩でガーデンに向かった。小鳥たちの様子を見に行くのが目的である。膝まで雪に埋もれながら、誰も歩いた跡のない深い新雪を、ひとり延々400メートルほど行くと、歩くのが好きなスタッフMもさすがに息が切れた。雪に埋もれずに歩くための秘密兵器?カンジキを作ってみたくなった。
パートナーは雪が多い日本海側(鳥取県)で生まれ育ったので、雪かきは結構上手である。パートナーが雪かきすると、見た目は雪を散らかしているだけのように見えるが、雪を積まずに薄く撒く(あるいは踏む)ことによって雪が早く溶ける。一方で、雪に慣れない、あるいは几帳面な人が雪かきをすると、雪をしっかりと積み上げてしまうので、いつまで経っても雪が溶けずに残る。軽井沢に住むようになって最初の年は大雪が多く、パートナーは出張で不在のため、もっぱらスタッフMが几帳面に雪かきをしていたが、最近は私も見た目のきれいさより、早く溶ければすべて良し、をモットーに、適当に蹴飛ばして(あるいは箒で掃いて)さっさと雪かきを終えるようにしている。雪かきすると、氷点下でも汗をかくほど暑くなるので、冬場の結構な運動にはなる。
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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