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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2015年5月12日(火曜日)一部、東京
概況:
5月の中旬から梅雨までの間、軽井沢の緑が最も美しい季節がやってきた。ヤマツツジが開花し、新緑の繊細な色のグラデーションが五月晴れの陽を受けて透き通るように輝き万華鏡を思わせる。ヒガラやウグイスやイカル、夏鳥のキビタキやオオルリなど野鳥のさえずりが澄んだ空に響く。大地もすっかり緑で覆われ、柔らかな葉先がそよそよと薫風になびく。初夏の光と風が心地よく、植物のエネルギーに満ちた自然の美しさは瞬きするのも惜しいほどである。
樹木:
軽井沢は各種のツツジが開花。ソフィアート・ガーデンでも自宅でも、ヤマツツジの朱色が美しい。ガーデンには、、ホンギリシマ(真っ赤)やヤマツツジ(朱色)の他に、ヒノデ(紫赤)ツツジを列植しているが、特にヒノデとホンギリが今年は花つきが良い。南東に面していが高木の多い森の中で、それほど日当たりは良くないが、ちょっと目立つ赤い花が、緑の中でぱっと明るく感じられる。また、オウゴンシモツケの新緑もまさに黄金色で輝かしい。新緑は淡い緑を中心に紫や黄色、オレンジや赤などの春紅葉を少し残して緑の無数のグラデーションを重ねる。まだ雑木林は明るいが、日一日と緑が濃く、葉が大きくなるにつれて、緑陰で暗くなる。
山野草、山菜、園芸種の草花:
自宅庭はシバザクラが満開。今年はテンナンショウが多い。新たに数本、紫色のテンナンショウがニョキッと生えてきた。ソフィアート・ガーデンのテンナンショウは薄い緑色だが、こちらは今年は曲がってひ弱な感じに生えている。自生するイグサの仲間のヒメイも尖った蕾をつけている。サクラソウやエンレイソウは満開。
野鳥・生きもの:
キビタキやオオルリの声が響くようになった。今年のソフィアート・ガーデンのキビタキは、個体が変わったのか、鳴き方が変化した。ヒガラやウグイスやイカルの声もよく響く。名前が分からない鳥の声も響く。知らない鳥の種類を調べるためには、少しでも姿を観察できれば同定のてがかりになるが、姿が全く見えない森の中で鳴き声だけを頼りに調べるのは、結構難しいものである。
虫:
ストーカー虫と呼んでいる、顔の周りをしつこく飛ぶ、黒い小さな虫が出だした。藪蚊も出だした。写真を撮ろうとすると、光る物に群がる性質があるのか、レンズの前にストーカ虫が飛んできて、虫のドアップ写真になってしまう。困ったものである。カメラと顔に、ハッカスプレーでもすればよいだろうか。
その他:
東京で所用の後、新宿の伊勢丹百貨店で店舗ウオッチしていたら、グローバル・グリーン キャンペーンなるものを開催していた。自然環境を壊さない、すばらしいものづくりを行うメーカーの出店ブースがあった。そこで展示されていた美しい薄衣をスタッフMが手にとって何の気なしに眺めていると、出店主の方が声を掛けてこられた。たいへん熱心で話し好きなパワフルな方であり、こちらも話が面白いのでいろいろと話を伺った。そのうち待ち合わせしていたパートナーも合流し、私どもが紡績や織物などに関心が高いこともあって、延々1時間ほども貴重なお話をしてくださった。その方(近藤健一氏)は大正紡績というオーガニックコットンにおける日本の代表的な工場の役員の方で、世界200ヶ国近くのオーガニック綿花農家を直接訪問して開拓してこられたという。生産者の顔が見え(トレーサビリティ)、過酷な労働や児童労働をさせない、消費者だけでなく生産者や工場で働く人々すべての健康と幸せを守り、貧困から救い豊かにするための繊維を開発、生産するという思想で活動していらっしゃる。もともと世界28ヵ所で綿花畑と大きな紡績工場をいくつも立ち上げてきた倉敷紡績のエンジニアであり、考古学博士ということだが、20年前にアメリカのカリフォルニアのサリー・フォックス博士という昆虫学者でありオーガニックコットン、カラードコットンの研究者に出会って人生観が変わり、爾来、自然環境を破壊する農薬等を一切用いないオーガニック繊維を追求してこられたそうだ。その日、近藤氏が着ておられたスーツも、生産者から譲り受けたオーガニックのタスマニアウールということで、美しい生地であった。私スタッフMはお気に入りのヴィンテージのモヘア高混率の生地(John Pepper という今はなき?織元)で仕立てたスーツ、パートナーは三星毛糸(三星毛織)のキッドモヘア100%生地で仕立てたトラウザーズを着用していたので、モヘアにもお詳しい近藤氏とモヘアのすばらしさについてもひとしきりお話ができて楽しかった(私どもはモヘア好きで、往年のモヘア生地のちょっとしたコレクターである)。さらに、貴重な話を聴くことができただけでなく、自社でつくっているオーガニックコットンのタオルまでお土産にいただいてしまった。有り難いことである。
今回、偶然にお会いして話を伺った近藤健一氏は、世界規模で環境問題を考える高い視点から人類全体の健康と安全という世界を見つめて仕事をしておられ、70代半ばである今も世界中をまわる多忙な方である。震災後の東北復興のために、塩水に浸かってしまった田畑で綿花を栽培するプロジェクトを興しておられる話も伺った。綿花は塩分に強く、その上、綿花を栽培すると植物が塩を吸い取って田畑を3年(?年数はスタッフMの記憶があいまいである)ほどで再生させる働きがあるそうだ。帰宅後、調べると、オーガニックコットンの開発と普及のための近藤氏の活動は、NHKでも報道されていた。参考までにサイトをリンクしておく。 NHKオンライン「新・ルソンの壷 世界にない糸を紡ぐ〜オーガニックコットンにかける紡績会社〜 」(クリックするとリンク表示)
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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