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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2014年1月30日(木曜日)一部、番外編 東京
概況:
1月最終週。軽井沢ではここ10日間ほど真冬日がない。最低気温は氷点下10.6℃。日中の最高気温は9.5℃まで上がる日もあり、日中に溶けた雪が夜間に再凍結するため、地面の氷はアイスリンク状態。気をつけてゆっくり歩いても滑る。澄んだ青空の下、野鳥たちからは春のさえずりが聞こえる。心なしかオオヤマザクラやコブシの膨らんだ蕾に目が行く。このまま春かと思わせるような陽気の背後には、軽井沢の毎年の最低気温を記録する2月3月が待ち構えている。
樹木:
ソフィアート・ガーデン100種500本の木を紹介していく。今回はカシワについて。
カシワは、ブナ目ブナ科の落葉中高木。柏餅に用いられる独特の形の葉は、日本人になじみの深いものであろう。寒冷地でもよく生育し、軽井沢やその周辺でも、庭木としてよく見かける。端午の節句には、カシワの苗木が園芸店などで販売される。男の子が生まれた家では、縁起の良い木として植えることもあるという。
ソフィアート・ガーデンにもカシワを植えている。カシワの木は不思議な木で、若いのに年寄りのように見える。それというのも、秋に枯れた葉を春の芽吹きまで落とさず、くしゃくしゃの茶色い枯葉を一身に纏ったまま冬を越すのである。樹肌も粗く枝振りも荒いため、極めて地味で渋い木姿であるが、スタッフMはカシワの木が好きである。
カシワが多く自生しているところが信州にある。以前、夏に関西へ車で出張する折に、白樺湖や車山高原や霧ヶ峰あたりをよく通った。その当たりで高木のない草原だけの土地に、カシワの小さな木がいくつも生えている様子を見た。植えている感じではなかったので、実生で自生していると思う。見渡す限り草原で、日当たりがとても良さそうな場所であった。標高が高く、霧が出て夏は涼しい(冬は寒い)土地、という意味では、自生地(と思われる所)と軽井沢はよく似ている。本来、軽井沢はカシワの生育適地であろう。しかし別荘やリゾートの地として、森のように木を植えて緑陰が深い植生になったため、日当たりを好むであろうカシワにとっては、現在の軽井沢は少し居心地が悪いかもしれない。
離山通りには、以前はカシワを街路樹としていた場所があると、軽井沢町の資料にあった。(軽井沢図書館所蔵の、軽井沢で保存が指定されている老木、大木などをマッピング、解説した資料。タイトルは失念)今も少しその名残もあるが、街路樹としては見られなくなった。渋いカシワより、シラカバやカエデ類のほうが高原リゾート的な雰囲気があって、街路樹としては一般受けするのだろうか。
山野草、山菜、園芸種の草花:
ソフィアート・ガーデンの山野草や山菜を紹介していく。今回はレンゲショウマについて。
レンゲショウマはキンポウゲ科レンゲショウマ属。日本の固有種である。「標高1000m前後の亜高山帯で落葉樹林内に自生する」と紹介しているサイトもある。御嶽山はレンゲショウマの自生地として有名である。標高や植生では、軽井沢は栽培最適地に入るだろう。しかし軽井沢で自生しているという話は聞かない。上品な姿や栽培の容易さからか人気が高く、軽井沢では庭に植えている愛好家も多いのではないか。 自宅の庭もソフィアート・ガーデンでも、レンゲショウマをいくつか植えている。宿根草であり、特別な手入れはしなくても年々株が大きくなって花数も増える。施肥などしたことがなく、種を蒔くこともしないで全く放任しているためか、実生でどんどん増える、ということはない。薄桃(薄紫)色の蓮の花のような清楚な花がうつむき加減で咲き、美しい。乙女が、少し悲しげにうなじを傾け、静かに佇む風情である。私は大木の下の日陰に植えてあるが、日当たりの良い場所で育つかどうかは分からない。いかにも日陰で楚々と咲く姿が似合う山野草である。
種の入った鞘は独特な形をしている。下記の写真に載せておく。
野鳥:
またもや出張続き。暖かい陽気に、小鳥たちから心なしかさえずりが聞こえる。自宅のフィーダーには、不在の間にカワラヒワが入り込んでいるようで、シジュウカラの分を残さずヒマワリの種を食べてしまう。カワラヒワは地味なスズメ色だが、羽の内側が黄色くて、飛び立つときにそれがちらりと見えて美しい。春は、「求愛給餌(結婚相手の雌へ雄が食べ物を口移しで与えること)」が大好きで、雄と雌とが互いに羽を震わせてプレゼントを何度も何度も飽きずに交換している。「結婚しよう!」「結婚しよう!」と、こちらが見ていて飽きるほど、一日中繰り返す。幸せな性格の鳥である。
しかし、フィーダーにおける行為はスズメと似ており、フィーダーに集団で居座る傾向がある。シジュウカラやヤマガラ、コガラなどのカラ類は、ヒマワリの種を一粒とったら、すぐに飛び去ってお気に入りの枝に持ち帰って食べる。しかも、フィーダーの利用は一度に一羽ずつである。そのため複数の鳥がフィーダーを利用する秩序(マナー)が保たれる。カワラヒワは集団居座りさえなければフィーダーに歓迎したい鳥ではあるが、スタッフMの財政上、乏しいヒマワリの種のプレゼントを根こそぎ食べるのはご遠慮いただくことになる。
虫:
ワラジムシが家の中を歩いていたので捕獲して外に出した。薪ストーブにくべようと手にした薪に、テントウムシが潜んでいた。火にくべてしまわないように外で払い落としたら、羽を広げて飛んでいった。薪の中で虫たちは冬眠しているようだ。その虫を目当てに、薪をキツツキが「コンコン」と叩く音がよく聞こえる。寒さが緩むと、虫が生き返って、どこからともなく家に侵入する。
その他:
先日、東京のNHKホールへ久々に行った。 N響の定期演奏会で、曲目はオルフの「カトゥリ・カルミナ」と「カルミナ・ブラーナ」。「カルミナ・ブラーナ」は移動の車の眠気覚ましでよく聴くが、「カトゥリ・カルミナ」は初めて聴いた。まあ・・・、ぶっとんだ曲である。合唱(男声)が端正すぎて、芸術性を保ちつつも理性のタガをもう少し緩めて歌うほうが曲のダイナミックさが、より際立つと思った。観客はN響定演にしては若い人が多く、拍手喝采で盛り上がっていた。「カルミナ・ブラーナ」は、指揮者(ファビオ・ルイージ)もソリストたちも若々しくパワーがあって、久々にいい演奏会だった。
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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