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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2013年12月16日(月曜日)
概況:
12月第2週は冷え込み、最低気温は氷点下7.8℃。最高気温は2、3℃程度でそれほど低くはないが、強風や突風が続き屋外の体感気温はとても低い。パウダースノーも舞った。小鳥の水飲み場は日中も厚い氷が張り、氷をとかそうと新たに水を入れると次々と小鳥たちが嬉しそうにやってくる。昼はまぶしいほど明るいが早々と日が暮れ5時前には夜になる。軽井沢の街並みもクリスマスモードになり、暖かい家の光とモミの木の飾り付けが視覚的な暖かさを演出する。
樹木:
ソフィアート・ガーデン100種500本の木を紹介していく。今回はウラジロモミとサワラについて。
ウラジロモミはマツ科モミ属、サワラはヒノキ科ヒノキ属。ウラジロモミもサワラも、ともに軽井沢の辺りに多い常緑針葉樹である。ソフィアート・ガーデンには、
10メートル級のウラジロモミが10本ほどあり、自宅の庭にもまもなく10メートルに届きそうなものが2本ある。サワラは数メートルのものがガーデンに複数ある。いずれも自生ではない。木材としては、サワラは水に強いため風呂周りに用いられる。ウラジロモミは棺桶などに用いられるようである。ウラジロモミかどうかは不明だがモミ材はかまぼこ板に使われるという記述もインターネットのサイトで読んだ。樹肌はサワラはヒノキ同様、皮が縦に剥がれる繊維状の樹皮が見られる。ウラジロモミはかさかさと乾いたウロコのような樹肌である。葉にも特徴があり、サワラはヒノキとよく似ているが、葉の裏を見ればその区別は一目瞭然である。気孔線という白い班があり、ヒノキは「Y」に見え、サワラは「X」に見える。スタッフMは発音をかけて「ひのきィー(Y)」「サ(XA)わら」とこじつけて覚えた(だいぶ無理があるが・・・)。肌に当たっても柔らかくやさしい葉である。一方でウラジロモミは、かなりちくちくする。ドイツトウヒの葉は、さらに針のようである。ウラジロという名の通り、葉の裏側が白っぽい。冷涼で空気の良い場所を好む。標高1000メートルの軽井沢のモミの多くはウラジロモミであろう。クリスマスツリーの木として日本ではモミとともに用いられる。軽井沢の山林を持っていた人が、以前はクリスマス用にこのウラジロモミを育てて出荷したと話していた。
ウラジロモミは旧軽井沢などで巨木が並木になっていて、濃い常緑は深い陰影を伴い少々暗い印象もある。2004年の台風では、大きなモミの倒木も多く見られたため、モミを厄介視して切ってしまう人もいる。住宅に被害のないように樹木を適切に手入れすることは大切であるが、だからといってモミやカラマツを悪役に仕立てる論調には賛成できない。ウラジロモミは美しい大気の中でしか生きることができない繊細な木であり、立派なモミの大木があることは、汚れなき大気がこの地に満ちていることの証明であることを忘れないでほしい。ウラジロモミは私の最も好きな木の一つである。堂々として、冬枯れの中、生き生きとした緑を保ち、雪の重みに耐えてじっと佇む姿は、見上げると心が落ち着く。モミは香りが薄いと言う人もいるが、スタッフMにとってはウラジロモミの香りは心を静め、心身を浄化する芳香であり、この地に導いてくれた清涼な香りである。(>>ソフィアート・ガーデン物語 第3話「木の香り」)
山野草、山菜、園芸種の草花:
ソフィアート・ガーデンの山野草や山菜を紹介していく。今回はヨモギについて。
ヨモギほど日本人に親しみのある野草はないのではないか。モグサ(お灸)は乾燥したヨモギの葉の毛を集めて作る。春、ガーデンに生えてくるヨモギの新芽を摘んで天ぷらで食べると、これほどおいしいものはないと思う。天ぷらの食べ頃を過ぎたら、こんどは干して野草茶にして飲む。ヨモギは草餅としても有名である。ウオッカに浸してヨモギチンキを作り虫除けや肌の手入れに使うと甘い香りも楽しめる。日本全国に自生し、古くから良く利用された優れた薬草である。スタッフMの故郷(沖縄県)では、山羊(ヒージャー)料理にはヨモギは欠かせず、クセのある味が臭みを消す(私は子供の頃1,2度食べた程度だが、ヨモギがおいしかった記憶がある)。またヨモギ(フーチバー)の入ったフーチバージュウシー(炊き込みご飯)もおいしい。
食用にする場合の参考サイト:独立行政法人国立健康・栄養研究所「健康食品の安全性・有効性」ヨモギ
野鳥:
軽やかに飛翔する小鳥たちにとって羽毛の手入れは欠かせない。そのためには水浴び場が必要である。ソフィアート・ガーデンでも、自宅の庭でも、小鳥たちがいつでも水浴びできるように、そしておいしい水を飲んでもらえるように水飲み場を複数用意している。氷点下8℃近くまで下がると、小鳥の水飲み場は一日中、厚い氷が張るようになる。氷をとかすために新たに水を入れると、次々と小鳥たちが嬉しそうにやってくる。最高気温でさえ氷点下、という「真冬日」が続く厳冬期になると、新たに水を入れるそばから凍るようになる。軽井沢の冬は雪が少なく、乾燥しているため、冬は小鳥たちにとって水が不足する季節である。
流れのゆるやかな浅い小川があれば、そこは小鳥たちにとって楽園である。しかし深くて流れの速い農業用水路であっても、小鳥たちは上手に利用する。以前、見かけたエナガの水浴び風景はちょっとした驚きであった。ガーデンの近くに水流が速く深い農業用水路があり、その水面でエナガが水浴びをしていたのである。エナガはおちょぼ口の可愛い小さな小鳥で、体重は7グラムほどしかない。用水路の土手に生える草が水面に垂れ下がっていたが、エナガはそれに片足でつかまり、草を命綱にしてアクロバティックに行水していた。
虫:
ソフィアート・ガーデンの仕事場に行くたびに、カマドウマ数匹を捕らえて外に出す。まだ寒さが本番ではない証拠である。厳冬期には、何日か出張して久しぶりにガーデンの小屋に入ると、室温が零度以下になり、水抜きしたはずの屋内の水道蛇口からツララが伸び、流し台の排水溝も凍ってしばらく水が流れない状態になる。そのときには、ついにカマドウマの姿も見かけなくなる。
その他:
先週は、風があまり強くない軽井沢にはめずらしく最大瞬間風速が10メートル(今日は17メートル!)を超える強風や突風が続いた。冬の強風は西北西や西南西など西寄りの風が多いのが特徴である。軽井沢での倒木は、夏から秋の台風や大雨などで地盤が緩んで強い風などで倒れるケースばかり注目されるが、冬期の倒木についてはあまり注目されていないように思える。しかしスタッフMとパートナーの観察によれば、じつは冬こそ倒木があるように見受ける。特に、シラカバや背の高い根の弱った木が根こそぎ、あっさり倒れているのを目にする。本来、落葉樹は秋に落葉して幹と枝だけになるため風圧を受けにくくなるが、それ以上に地面の凍結が根を浮かせるのではないか。おそらく大地の凍結によって浅い根が浮いて、さらに秋冬の突風によって弱った根元を支える力もなく倒れてしまうのだろう。軽井沢の建築物は寒冷地仕様で、凍結深度を深く(最低70cm以上)想定しなければならない。それほどに深く凍ってしまう土地なのである。凍った大地は、ツルハシでしか掘れないほど、すなわちコンクリートのように固くなる。根が浅い上に、込み入った環境で育つことで、光を求めて上へ上へと伸びる、もやしのような樹形になれば、冬の大地の凍結と強風であっさり倒れやすくなるのではないか。
ところで雪が降るようになると、すぐ雪が溶ける土地と、なかなか溶けずいつまでも真っ白く残る土地があることに気づく。もちろん日当たりの良い場所か、建物の陰などかにもよるが、雪が早く溶けるのは、下草が豊かに生えていたり、落ち葉が深く積もっている土地である。ソフィアート・ガーデンでも、冬に一面に雪が積もっていても落ち葉を残してある場所はすぐに雪解けする。落ち葉のふとんには虫が冬眠で潜っていることもあるので、ツグミなどがそのような場所でポイポイと落ち葉をかき分け餌探しをする光景が見られる。一方で雪が溶けないのは、草も落ち葉もないむき出しの土地や、ゴルフ場のような土地である。そのような土地は、土が固く空気を含まないため凍結しやすいのだろう。樹木の立場になって考えれば、落ち葉は樹木自身を守るためにも、そのまま残しておいた方がよいのではないか。落ち葉は朽ちて大地を肥やし、春になれば発酵して暖かくなる。そのまま残して土に毛布をかけるように保護しておけば、凍結も少々緩和されて冬の倒木の防止の一助になるかもしれない。軽井沢のような寒冷地の落ち葉かきは春になって山野草が芽吹く前にすればよいと思う。
軽井沢町が発行するクマ情報メールで「クマが冬眠をしはじめました。今年は山の実りも良かったこともあり食べ続けているようで、冬眠が少し遅くなっています。
まだ活動しているクマもいますので、朝晩散歩をするときは、鈴など音の鳴るものを携帯し、見通しの悪いやぶ付近を通行する際には十分注意してください。」というメッセージが届いた。確かに今年はドングリの実なりがとても多かった。クマにはお腹いっぱい食べてもらって、早く寝てほしいものである。
樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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