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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2013年10月9日(水曜日)超番外編 東日本〜東北 工場見学 その2
概況:
前回に引き続き今回も、日本屈指の品質の高さを誇る縫製工場(岩手)の訪問記である。福島から仙台までの道中、車窓から東北自動車道沿いに見える田のほとんどは収穫を終え、稲穂を天日干しする風景が広がる。仙台市内は大都市と街路樹の並木が調和しており、さすがに杜の都である。気温は13度前後と肌寒く、一部では紅葉も始まっていた。岩手県花巻市東和町の高級紳士服縫製工場(東和プラム)と手紡ぎ手織りの織物工場(日本ホームパン)を訪ねた。
樹木:
仙台から花巻に向かう東北自動車道沿いはスギやヒノキなどの常緑針葉樹の他、アカマツもよく見かけたが、他の地域同様、松枯れ病なのか酸性雨の影響なのか、立ち枯れのマツも少なからず見られた。仙台市内は街路樹が手入れ良く立派に育っており、車窓から見ただけでも堂々としたイチョウ並木やトウカエデ並木、ユリノキ並木などさまざまであった。所々に鬱蒼と大木の茂る高台があり鎮守の森のような場所が見られる。発展した都市と樹木の景観が良く調和した美しい杜の都である。ユリノキやイチョウは一部紅葉が始まっていた。
山野草、山菜、園芸種の草花:
福島から仙台までの道中、車窓から東北自動車道沿いに見える田のほとんどは収穫を終え、稲穂を小山のように並べて天日干しする風景が見られた。東和町の工場に向かう道では、信州で見かけるような棚田が見られた。
野鳥:
工場見学だけであったので、あまり鳥はみかけなかった。
虫:
工場見学だけであったので、あまり虫もみかけなかった。 夜、仙台市内を散歩中に、わずかに鈴虫の音を聴いた。
工場訪問記(1): 株式会社東和プラム ( http://www.h6.dion.ne.jp/~t-plum/01.htm)
本工場は1972年にプラムイワテ株式会社(当時、名古屋に本社があった株式会社天神山の自家工場)として創業し、世界に冠たるイタリアンクラシカル派のオーダーメードの服づくりを忠実に工場工程に置き換え得ることを目標に、イタリアに技術研修に出向き、イタリア人技術者オーベルダン・コスタンツォ氏を技術マネジャーとして招聘。2002年からは東和プラムとして再出発し、現在に至る。
縫製クオリティの高さゆえ、他の工場よりも高い工賃で一流のブランドの紳士服を製作している。
今年はIACDE(国際デザイナー・エグゼクティブ協会)日本支部による「日本の紳士服工場格付」企画において最高ランクの3ツ星認定を受ける(日本全国で全3社のみ)。
対応していただいたのは、取締役工場長。ブログで積極的に自社の縫製技術の高さや立体的構築感、デザイン、機能へのこだわりなどを発信されている。30半ばでこの工場に来てはや10年、紳士服の製造に関わる人々が高齢化する中で、とても若い印象を受けた。後継者育成に力を入れておられるとのこと。繁忙期に入り、工場長は多忙のところ、時間を割いて頂き、さまざまなお話を伺うことができた。
工場の実力を実感したいと思い、当社でも弊社Jがスーツをオーダーした。ゲージをもとにフィッティングを行う、いわゆるパターンオーダーだが、品質に対する責任と自覚からか、とても慎重な姿勢が伝わってきた。体型がいかり肩で反身(胸が張った威張った姿勢)かつ前肩であるため、途中で工場長とともにフィッティング経験の豊かな技術者も交えて補正してもらった。身頃の補正だけでなく、袖付けの角度を何度か前に傾けて肩のフィット感と着心地にこだわるなど、これまで作ってきた中では経験したことのないきめ細かな補正方法がなされ、興味深かった。
工場訪問記(2): 株式会社日本ホームスパン ( http://www.homespun.co.jp/)
東和プラムと同じ敷地内にある株式会社日本ホームスパンは1961年設立。 当社のパンフレットにはこう記されている。「ホームスパンとはツィードの始まり。羊毛を家(HOME)で手紡ぎ(SPUN)した、産業革命以前の毛織物の名称でした。・・・(中略)・・・当社は現在でも産業革命以前の手紡ぎ、手織りの技術を受け継ぐ世界で唯一の企業です。高い希少性に加えデザインにも力を入れ、現在でも国内外の有名ブランドのコレクションにも使われております。」
工場を見せていただいた。織機に向かって女性が一本一本手作業で丁寧に経糸(たていと)を張っていた [製経] 。そのとき織っていた生地は縦糸が1800本とのこと(織物によって異なる)。シャトル(ションヘル)織機を使用し、速度を落としてゆっくり織っている [織り] 。そのためか風合いがふっくらと空気を含んで暖かくやさしい。メーメーと鳴くかわいい羊そのもののようである。
染色は人工染料が中心。釜で煮て染める。水が透明になるぐらい。染色後、専用の洗濯機で洗って、外で干して乾かしている。まるで工場と言うより、一般家庭の洗濯物干し風景のようなのどかさである。
原毛を梳いてふっくらした原料にして、そこから紡いでいく [紡糸] 。手紡ぎという大変手のかかるが味のある織物も、こうして生み出される。
優しげな年配の女性が、大きな音を立てて動く梳毛 [カーディング] の機械を前に、忙しく作業しながらも少し手を休めて、梳いてふっくらとした羊毛をニコニコ笑顔で触らせてくださった。
梳かれたばかりの羊毛は、その人の人柄のようにふんわりと優しく、暖かかった。
当社の生地は、誰もが知る国際的なプレタポルテブランドで使われ、シャネルのパリコレクションにも採用されるなど、世界的にも高く評価されている。アパレルなどで注文を受けて織る生産が中心であり 小売りのためのバンチブックのようなものは反物の量も少ないため特に作っていない。
電話で色やイメージを教えてもらえば、少し切れを送って検討してもらうこともできるらしいが、一般の人が直接この会社の名を目にすることは少ないかもしれない。しかしファッション業界では知らない人のいない有名な会社である。見せていただいた生地は1メートル辺り3万円前後(価格帯はさまざま)、手紡ぎは4〜5万円以上である。やはり、風合いの格別さで手紡ぎが人気がある。
本部には工場のほか、ちいさな事務所の前に、うっかり見過ごしてしまいそうな売店スペースがある。
また、その隣には社長室を兼ねた応接スペースがあり、ここには何百種もの生地見本が展示されており、お客様も頻繁に出入りしている。
訪問中にも何組も来客があり、有名ブランドのアパレル関係者の一行や外国からの訪問客も見かけた。
スタッフMも、玉虫色の美しいストールと、同じ織りで作られた財布を訪問の記念に(そして工場見学の案内をしていただいたお礼の気持ちを込めて)購入した。
樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
※工場内の写真は全て了解を得た上で撮影。
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