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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録−    >>前の記録へ >>次の記録へ

■2013年10月8日(火曜日)超番外編 東日本〜東北 工場見学 その1

概況:
今回は日本屈指の品質の高さを誇る縫製工場(福島、岩手)の訪問記である(弊社研究活動の一環)。軽井沢から福島まで330km(車で3時間半)、福島から仙台まで80km(車で1時間強)、翌日は仙台から岩手(花巻市の旧東和町)まで170km(車で2時間半)、岩手から東京まで520km(車で6時間)。2日間でのべ12時間は車での移動で、工場以外の場所はほとんど立ち寄れなかったが、福島や仙台、岩手、その間の東北道の道中で観察した自然の様子も織り交ぜて記録する。

樹木:
東北自動車道の車窓から見える景色では、カシと思われる常緑広葉樹の他、スギやヒノキが多く見られた。紅葉はまだ始まっていない。
福島市内では、秋の香りキンモクセイの花の芳香が漂っていた。

山野草、山菜、園芸種の草花:
軽井沢から福島に向かう東北道では、軽井沢ではほとんど見られないセイタカアワダチソウと、軽井沢では日当たりの良い場所ならどこにでもあるススキが拮抗していた。セイタカアワダチソウの勢力よりススキの勢力が回復しているようにも見えるが、経年で定点観察しているわけではないので、実際のところはわからない。
道中の栃木、茨城、福島など東日本では、稲刈り後に稲を天日干しする風景が見られた。標高の低い平野部では、まだ稲刈り前の所もある。弊社の周辺(長野県の東信地域)では、横棒(ハザ木)に稲穂をかける干し方がよく見られるが、東北道で見かけた道中の田では小さな小山をたくさん並べたような干し方を見かけた。各地で干し方が異なるのは興味深い風景である。福島市内の田でも収穫後の稲穂が小山の形で干されていた。

野鳥:
福島市内の田では、干したお米の周りでスズメが群れをなしてついばんでいた。この時期、田ではどこでも見かける風景である。

虫:
東北道では、サービスエリアで車を停車すると、それほど数は多くないが、飛び回っているトンボが車の上に止まった。秋のトンボは各地で見られた。

工場訪問記: 株式会社ジェンツ ( http://www.gents.co.jp/)
株式会社ジェンツは昭和44年(1969年)創業の日本を代表する紳士服縫製工場である。柴山登光氏などの有名なモデリストなどを輩出している。
当社ホームページには「国内有力メーカー・百貨店・専門店からの受注が中心。市場の幅広いニーズに対応できる機能・技術を有する。イタリアの技術を随所に導入。 業務・生産管理コンピューターシステムは自社開発により、徹底した納期管理を行っております。」と紹介されている。

案内していただいたのはフィッターのH氏。 創業時からのメンバーで残っているのは、現在ではH氏お一人のようで、まさに当社の生き字引のような方である。
工場の見学だけではなく、実際に弊社Jが自分自身のスーツを注文した。間近のアポイントであったが快く受け入れてもらえ、大ベテランのH氏に大変丁寧にフィッティングしていただいた。パートナーはこれまで、いわゆるフルオーダーや仕立て職人による丸縫いを含め、いくつかのテーラーで何度も注文してきたが、今回のH氏によるフィッティングの丁寧、的確さにとても感動していた。
工場の滞在時間は3時間におよび、フィッティングの後はH氏の案内により工場の各ラインを見学させてもらった。 すでに5時半ちかくであったが工場は多くのラインがまだ忙しく動いていた。

工場内は、建物は創業当時のままで年数は建っているものの、受注先からの高い要求水準に応えるための機械や設備が充実しており、さまざまな縫製資材が所狭しと、しかし整理整頓されて並んでいた。働く人は女性が多く見られ、ベテランと思われる男性(紳士服の肝であるアイロンワークをなさっていた)や若い男性も見られた。
その日の目標数と実績数が常に変動値で表示されて、厳しい生産管理のもと常に高い品質を生み出している様子が見られた。
8-9月は閑散期であり工場の終了時間も早いが、これから年末にかけて繁忙期が始まる。
「(注文がないときは稼働が少ないから)出来るときにできるだけたくさんやっておかないといけない」と、紳士服縫製業界の厳しい現状を踏まえた言葉があった。

「震災、原発事故の後、3日間停止したが、そのあとは工場は動かしている。女性や子供を中心に、米沢や山形などへ引っ越した人も少なくない。震災では建物の一部が少々痛んだが設備は大丈夫だった。本来、福島は天災の少ない地域で、台風も避けて通るし地震もほとんどなく、自然は豊かで良いところである。」とお話しされる中で、言外には、言葉は少ないながらも、原発事故の被害の影響の大きさは察することが出来る。しかし丁寧でセンスの良い縫製と徹底した納期管理、圧倒的な品質の高さなどからか、北は北海道から、東京など各地から来訪して注文する個人からの依頼もけっこうあるそうだ。

本来は、大手百貨店やだれもが知る有名ブランドを擁するアパレル専門店からの注文が大半である。とある有名店もこちらで縫製している。ただし直接この工場でつくってもらうのとその高級店では額が一桁違うようだが・・・。
飯坂(現在は福島市)で上衣を製作し、春日部工場で下衣を製作している。昨今の苦しい環境の中、一言では言い表せない複雑な事情もあるだろうが、H氏の始終穏やかで、にこやかな口調の中には日本の高級紳士服の歴史を第一線で築いてきた誇りと自負が感じられる。メイドインジャパンのプライドは日本の誇りでもある。これを絶やしてはいけないとスタッフMは思う。そのためにはすばらしい仕事をしている人々の仕事に敬意を払って、客になり続けるのが一番の近道である。

樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの−
有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4
文章と写真:スタッフM

※工場内の写真は全て了解を得た上で撮影。

東北道のセイタカアワダチソウ 稲刈り後の天日干し(福島市内) 工場内で説明を受ける
工場内の様子 工場内の様子 工場内の様子
工場内の様子 自動裁断のライン 仕上がりを待つ紳士服


 
 
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Sophiart Garden Diary - KARUIZAWA forest garden, wildflower, wild birds and other creatures