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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2015年2月17日(火曜日)一部、東京
概況:
軽井沢は13日から15日は3日連続で最低気温が氷点下10℃以下、最高気温も1℃前後、という寒さである。しかし、晴天の日中はソフィアート・ガーデンのゴジュウカラや自宅庭のコガラが春のさえずりを披露するなど、野鳥たちは明るい日差しに春を感じ取っている。所用で訪れた東京都心では最高気温は10℃前後。風が寒く真冬のコートが必要。以前、東京在住の頃は2月中旬には梅の香りから早春の兆しを感じたものだが、さて今年の梅の開花は如何であろう。
樹木: ソフィアート・ガーデン100種500本の木のエピソードを紹介していく。今回はアブラチャン
について。スタッフMが好きな木のベスト3に入る。アブラチャン
はクスノキ科クロモジ属の落葉低木。クスノキ科クロモジ属だけあって、枝の香りが良い。枝を剪定するときに、クロモジのような芳香が微かに漂う。黄緑がかった黄色い花をいっぱいつける。春の明るい雑木林にうっすら黄緑の煙るような花が咲くと、軽井沢の厳しく長い冬も終わりである。アブラチャンの咲く雑木林は、ぽかぽかと日だまりが暖かく、春霞の柔らかい風にのって小鳥たちのさえずりがこだまする。大地はまだ茶色い地面であるが、もうすぐ緑色に埋め尽くされる。木々はこれからの芽吹きに備えて、裸樹の枝の内側で雪融けの水を盛んに吸い上げ、ほのかに木の芽の色を帯びる。生きものたちは長い冬の眠りから目覚めて、まだ少しまどろんでいるが、内面からわき出る生命の力が、冬の眠りを破ろうとしている。そんな陰と陽の動きの中で咲くのが、アブラチャンである。同じ時期、早春に咲く花は黄色が多い。キブシ、マンサク、ダンコウバイ、クロモジ、サンシュユなど。茶色の多い早春の森では、光のような黄色が最も目立つ。反対に濃い葉が茂る夏の花は白が多く、実際に緑陰の中で白は目立つ。自然の仕組みの妙である。
山野草、山菜、園芸種の草花:
追って記載。
野鳥:
自宅の庭における冬のカラ類の常連客は、数の多い順にシジュウカラ、ヤマガラ、たまにヒガラ、コガラである。他にはカヤクグリ、スズメ軍団、カワラヒワ軍団、ヒヨドリ、ガビチョウ、たまにメジロ、カケス、アカゲラ、コゲラ、シメ等。住み始めて最初の年(2004年)に庭を訪れた野鳥は40種類を超え、軽井沢の離山裾野における生態系の豊かさ、野鳥の豊富さに驚いたものである。今は以前より種類が減ったと思う。 毎年不思議なのが、普段はこの当たりでは見かけないはずのコガラが、2月頃になるとどこからともなく庭にやってくることである。庭のカラ類の中では新入りなので遠慮気味ではあるが、慣れた様子で格子で覆われたデッキ内に入り、フィーダーから上手にヒマワリの種を取る。以前から私どもの庭をよく知っている様子である。 ところで自宅の庭から4キロほど離れたソフィアート・ガーデンでは、コガラは優勢で数も多い。そのため生態をよく観察することが出来る。コガラの住処はガーデンの近くのコクサギやミツバウツギが茂る東南および南傾斜の日当たりのほどよい肥沃でワイルドな灌木林である。行動範囲はあまり広くないようで(ヤマガラより狭く、シジュウカラと同じ程度か?)、いつも同じような場所で見かける。ところで自宅周辺には、その灌木林に似たような環境の場所はない。しかし自宅から直線距離にして数百メートルほど北側の離山別荘地の南斜面には、ソフィアート・ガーデンによく似たコクサギ林がある。コガラは、普段はその灌木林で活動していて、2月に自然界の食料が乏しくなると、縄張りからは少々離れた我が家の庭まで遠征するのではないかと、私スタッフMは推測する。カラ類のゆるやかな混群の一員として、他のカラ類の動きから私どもの庭のありかを知り、それ以来毎年、子々孫々への申し送り事項として伝達しているのかもしれないと思うと、なんだか興味深い。
虫:
零度前後の日中、目に見えないほどの小さな虫が一匹、大気中を漂っていた。
その他:
冬はアウトドアの話題がないので、インドアの活動のことに触れる。今回はパンづくり。20年ほど、コツコツと私スタッフMは自家製パンを焼いている。パンが好きで、研究のために他のパン屋さんのパンも食べるが、食事としては自分で焼いたパン以外はほとんど食べない。昔はいろいろな種類を試みたり、酵母も自作(ミルク酵母や果物酵母など)したが、今はもっぱらホシノ天然酵母と信州地粉(中力粉)と強力粉のブレンド、水、塩、少々の(酵母のための)砂糖というシンプルな材料である。シナノグルミが入手できるときはクルミパンにする。手ごねして、一晩かけて一次発酵させ、型をつくって二次発酵したのちガス式のコンベクションオーブンで焼く。焼くときに庫内で300℃に熱した石に水をかけ、余熱と蒸気で皮をパリッと薄く仕上げるフランスパンのような焼き方である。上手く焼き上がると、フランスパン状の皮が亀の甲羅のようにヒビ割れする。そのときにパチパチとパンが音を立てて「拍手」する。
焼き上がったらリネンの布で包んで一晩置き、余分な水分を飛ばしてから食べる。一度に2斤焼いて数日で食べきるので、月に数回焼くことになる。計算すると20年ほどで優に1000回以上はパンを焼き続けていることになる。ほとんど失敗はないが、パン作りは生きものと対話するようなもので毎回が真剣勝負であり、新たな発見がある。飽きずにコツコツと続けているのは、自作のパンは腹持ちが良くて、安全で、なによりおいしいからである。
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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