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軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの観察記録− >>前の記録へ >>次の記録へ
■2014年11月8日(土曜日)
概況:
軽井沢は徐々に秋が深まり、紅葉はカエデ類やカラマツ、ミズナラやコナラなどを残すのみで、落葉樹の多くは葉を落とした。風が吹くとカラマツの黄金の雨がサラサラと音を立てて降り注ぐ。落ち葉の積もる森の香りがすばらしい。木々が葉を落とすこの時期は足元で紅葉する小さな木の存在(コナラなどの実生苗)に気づく。雨や曇天のせいか気温は高めで、最低気温は氷点下を少し下回った程度。ヤマガラはエゴの実にぶら下がってキャッチするのに忙しい。
樹木: いつもは春咲きのバラ(バレリーナ)が返り咲きしている。秋バラは色が冴えて長持ちする。 ソフィアート・ガーデンのイチョウは木に囲まれて奥まったところにあるため、普段はその存在を忘れているが、この時期周りが落葉するとイチョウの黄葉が見えて存在を思い出す。 ガーデンではこの時期、雨でもないのに傘を差して散歩している。というのはカラマツの黄金色の葉がパラパラと絶えず上空から降り注ぐためである。カラマツの落葉は細かくて、服や頭につくと払うのが面倒なので、透明なビニール傘で落葉を避けて庭を眺めながら歩く。カラマツの葉だけでなく各種の木々もほとんど葉を落とし、残るあざやかな彩りはヤマモミジ、ダンコウバイである。これらはガーデンの錦秋の最後を締めくくる紅黄コンビである。またコナラやミズナラ、クリなども渋くていい色に染まっている。 キブシは早春にきらめく光のような黄色い花穂を賑やかに垂らす。そのためスタッフMはキブシを「森のシャンデリア」と名づけている。早春の花の時期だけ輝き、あとはひたすら地味な木であるが、そのキブシの葉が今年は渋いオレンジ系に染まっている。枝先には来春の花のつぼみがすでにたくさん垂れており楽しみである。 紅葉(黄葉)して初めて、その存在に気づくこともある。ガーデンに実生のエノキが2本ほど生えていた。また自宅の庭にもコナラが生えていた。よく来るカケスが植えた(隠して忘れた)のだろう。
山野草、山菜、園芸種の草花:
落ち葉の積もるソフィアート・ガーデンはいい香りが漂う。ジンジャーや月桃のような、お香のような、シナモンのようなスパイシーでほのかに甘く暖かみのある香りと、ヒノキの樹脂のようなスーッとする冷涼な香りが溶け合う。軽井沢のふかふかの落ち葉の香りは、心身が浄化されて頭がクリアになる妙薬である。この香りに満たされた空気を胸一杯に深呼吸すれば、たいていの病は癒やされるのではないか。軽井沢に保養所が多いのも頷ける。
野鳥:
毎朝、玄関や庭の掃き掃除をすると、遠くから小鳥たちがこちらの姿を見つけて楽しそうに飛翔してくる。こちらが小鳥の水浴び場を新鮮な水で満たすと、すぐに嬉しそうに水浴びをしたり水を飲む姿で応えてくれる。秋も深まり、フィーダーにヒマワリの種を入れる回数が少し増えてきた。それに比例して、庭を訪れるシジュウカラの数も増えてきた。ヤマガラが庭でニーニーと鳴くので空になったフィーダーにヒマワリの種を少し入れる。すると当のヤマガラは食べずにどこかに飛んで行ってしまい、かわりにちゃっかりシジュウカラたちが食べている。ヤマガラは、まるでカラ類のお世話係のようである。ヤマガラはヒマワリの種も食べるがエゴの実のほうが大好物である。庭のエゴノキにヤマガラのつがいが2羽そろってぶら下がり、器用に実をキャッチするのに忙しい姿が見られる。
虫:
出張が重なりソフィアート・ガーデンの小屋に何日かぶりに行くと、必ずキッチンや洗面所などの水場には複数のカマドウマがじっとしている。透明のカップで虫の体を傷めないように捕まえて外に出すも、夏場のような跳躍力はなく動きがのろく、すでに寒さで息絶えているものも多い。
その他:
信州リンゴは秋映が終わり、シナノゴールド、シナノスイートがおいしい。もうすぐ真打ちサンふじの季節である。
ところで、上記の「山野草、山菜、園芸種の草花」の項目で書いた「森の香り」に関連しての余談である。「香り」に注目して環境を整えている(と思われる)のが、東京や大阪などの大手百貨店や商業施設などである。古来、日本には香を焚くというおもてなしの文化があった。現代においても香りでもてなすという精神は生きている。そして都心の洗練された商業空間と軽井沢の保養空間の意外な共通点は「空気の香り」かもしれない。先日、東京滞在の折、新丸ビル内のショップを散歩していて、森を意識したような香りが全フロアに漂っているのに気づいた。明らかに秋の森の香りを意識した空調をしている。同様に、新宿伊勢丹や日本橋三越でも香りを感じた。季節は違うが、男性向け商品のフロア全体に、ベチバーのような、土や大地、草を感じさせる森の香りが感じられた。香りは人をリラックスさせたり気分を高揚させたり、そして前向きでクリエイティブな感性を引き出すための見えざる舞台装置である。訪れる人が無意識のうちに癒やされ、何度でも訪れたいと思ってしまうようなリラックス空間を目指しているのだろう。高価な商品を買ってもらうには人を心地よい幸福感に浸らせ、何度でも行きたいと思ってもらえる場、つまり「リゾートresort」の発想が不可欠である。
軽井沢 樹木と野鳥の庭 −100種の樹木と生きもの− 有限会社ソフィアート 長野県軽井沢町長倉 2082-4 文章と写真:スタッフM
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